小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

武田百合子 「富士日記」昭和44年11月6日

2006-11-06 22:35:28 | 日記文学
この日は、下田の土地を見に行った帰り道、町の灯りと満点の星が一つながりになった景色の中を、夢のように車で走ったとのこと。
(しっかり、有料道路の料金も書いてあります。)

山の家に戻って、灯りを全部つけ、「谷底に浮かんだ盆灯籠のような家」に向かって、庭を駆け下りる、というところに、著者の子供のような無邪気さが見えて微笑ましいです。

「食べながら、今日見てきたことや、あったことをしゃべくった。帰って来る家があって嬉しい。その家の中に、話をきいてくれる男がいて嬉しい。」
と、幸せな生活を述べています。


中公文庫「富士日記」(下)でどうぞ。
富士日記〈下〉

中央公論社

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CROSS

2006-11-05 22:10:57 | 写真
十字、そして、内と外の交差。


BESSA-R2M ・ COLOR-SKOPAR 35mm/F2.5 ・ PROVIA100F
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井伏鱒二 「寒山拾得」

2006-11-03 22:54:34 | 小説
旅先で偶然に再会した学生時代の級友の佐竹は、あやしげな旅絵師となっていた。
ある町に泊まり、部屋の掛け軸や襖の絵を模写しては、次の町でその絵を売り歩いて旅を続けているというのである。
夜になって絵を売りに出かけた佐竹から、「私」は電話で呼び出され、絵の代金で酒を飲み、酔っぱらった二人は、町をさまよう。
そして、売れ残った寒山拾得の絵をポストに貼り付けて、拾得先生の笑いに近づくべく、競って「げらげらげら、げらげらッ」と、笑い合います。

可笑しさの中にたんだんと寂しさが滲んでくる、秋の夜が舞台の短篇です。

新潮文庫『山椒魚』で、9ページ。
山椒魚

新潮社

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