しばらくぶりの更新で、こんな暗い作品というのも何ですが・・・
主人公の圭一郎は、故郷に妻子を残し、千登世と駆け落ちして、東京に出てきています。
冒頭、風邪で熱を出して勤め先の業界新聞社を休んでいる圭一郎が、主人からの呼び出しの電報で、やむなく出社する場面で始まります。
その際の二人の様子からして、ちょっと大げさです。
千登世:「ほんたうに苦労させるわね。すまない…」
(蒼白い瓜実顔を圭一郎の胸に押し当ててしゃくりあげながら)
圭一郎:「泣いちや駄目。これ位の苦労が何んです!」
また、いつも停留所まで送り迎えしているほどの熱々ぶりです。
辛いことは重なるもので、出社してみると、妹から、父や妻子の様子を知らせる手紙が来ていて、圭一郎の心を苛みます。
そして、妻の過去が圭一郎にとって深い傷になっていることが語られるのですが、そのことへの執着があまりにも強いことに、大抵の読者は引いてしまうのではないでしょうか。
最後は、圭一郎の罪悪感と生活の苦労から来る千登世の衰えぶりを描いて、今後の生活への不安を感じさせるものとなっています。
この不安は、第二作で代表作でもある「崖の下」へつながっていくわけです。
嘉村磯多の作品は、師の葛西善蔵に感じられるユーモアや、近松秋江の徹底したダメ男ぶりのおかしさといったものがなく、倫理的(というのも妙ですが)、観念的な感じがします。
講談社文芸文庫『業苦・崖の下』などで読めます。
主人公の圭一郎は、故郷に妻子を残し、千登世と駆け落ちして、東京に出てきています。
冒頭、風邪で熱を出して勤め先の業界新聞社を休んでいる圭一郎が、主人からの呼び出しの電報で、やむなく出社する場面で始まります。
その際の二人の様子からして、ちょっと大げさです。
千登世:「ほんたうに苦労させるわね。すまない…」
(蒼白い瓜実顔を圭一郎の胸に押し当ててしゃくりあげながら)
圭一郎:「泣いちや駄目。これ位の苦労が何んです!」
また、いつも停留所まで送り迎えしているほどの熱々ぶりです。
辛いことは重なるもので、出社してみると、妹から、父や妻子の様子を知らせる手紙が来ていて、圭一郎の心を苛みます。
そして、妻の過去が圭一郎にとって深い傷になっていることが語られるのですが、そのことへの執着があまりにも強いことに、大抵の読者は引いてしまうのではないでしょうか。
最後は、圭一郎の罪悪感と生活の苦労から来る千登世の衰えぶりを描いて、今後の生活への不安を感じさせるものとなっています。
この不安は、第二作で代表作でもある「崖の下」へつながっていくわけです。
嘉村磯多の作品は、師の葛西善蔵に感じられるユーモアや、近松秋江の徹底したダメ男ぶりのおかしさといったものがなく、倫理的(というのも妙ですが)、観念的な感じがします。
講談社文芸文庫『業苦・崖の下』などで読めます。
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