小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

内田百 「林檎」

2006-11-15 23:51:43 | 内田百
食べ物へのこだわりのある百先生、窮乏生活の中、停留所の前にある水菓子屋の果物を横目に通りすぎるばかりであったが、ある時、お金が入って林檎を買うことに。

ここで、百先生は、林檎の味と値段の関係がとっても気になり、様々な値段の林檎を買い集めて食べ比べてみたくなってしまいます。
林檎を買い進めていく様を見て怪訝そうな店員に、それぞれの値段を林檎に書き込みたいと言うと、血相を変えて、敵意をむき出しにされます。
まあ、いかにも同業者のスパイのような行動で、怪しい客と思われても仕方がないところもありますが・・・

腹の虫が納まらない百先生は、ご丁寧にも、店の主人に抗議の手紙を書いて送ったというのですから、相当の怒りです。
こんなコワイ先生ですが、その後、電車の乗り降りの度に、いつ迄も気づまりな思いをした、というところが、ちょぴり可愛いですね。

旺文社文庫『鶴』で、3ページ。
ちくま文庫『内田百集成12 爆撃調査団』に収録されています。

爆撃調査団―内田百〓集成〈12〉

筑摩書房

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