オパールの炎

2024年07月05日 10時53分28秒 | 社会・文化・政治・経済

桐野 夏生 (著)

一九九九年に日本でピルが承認される約三十年前に、ピル解禁と中絶の自由を訴える一人の女がいた。派手なパフォーマンスで一躍脚光を浴びるも、その激しいやり口から「はしたない」「ただのお騒がせ女」などと奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られてしまう―。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇!

 

榎美沙子 えのき-みさこ

昭和20年1月23日生まれ。47年「中絶禁止法に反対し,ピル解禁を要求する女性解放連合」(中ピ連)を,49年「女性を泣き寝入りさせない会」を結成ピンク色ヘルメット行動,話題をよんだ。52年参議院選挙での日本女性党敗北後,引退した。徳島県出身。京大薬学部卒。本名は木内公子。

時代に先駆けてピル解禁を訴えていた女は――突然、姿を消した。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇。

 

 

著者について

桐野夏生
 
1951年生まれ
1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、11年同作で読売文学賞、23年『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞、吉川英治文学賞を受賞。15年、紫綬褒章を受章。21年早稲田大学坪内逍遙大賞、24年日本芸術院賞を受賞。近著に『日没』『砂に埋もれる犬』『真珠とダイヤモンド』『もっと悪い妻』など。
 
 
2024年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
有吉佐和子の悪女についてのような構成で書かれた作品。主人公の女性について、関係者へのインタビューを通して、人となりや来歴を明かしていく作り。
桐野夏生さんの作品は、本作に限らず、随所にフェミニズム要素があり、女に生まれたことで被る理不尽について非常によく言語化されているのが気に入っている。本作は、ピルの解放を目指した活動家の話であることから、フェミニズム要素が散見されるというより、フェミニズム自体がテーマである。社会に出て、男性の世界でうまくやっていくために不本意ながらも社交上の工夫をした女性達であれば、誰しも共感できる一文が見つけられると思う。

■良かった点
・本の装丁がとても可愛い!
・こういう男性いるなあ、こういう考え方あるなあ、といった日常の違和感を拾ってもらい、自分だけで無いということで少しエンカレッジされる

■★3とした理由
・全体的にストーリーに起伏がない
・悪女についてと比べると、活動家である主人公が意外と大人しい性格である、といった点ぐらいしか人に見せる顔に差が無く、この構成を活かしきれていない気がする

■まとめ
本作は直接的にフェミニズムを取り扱っており、共感できるポイントも多いが、ストーリー自体はあって無いような感じで、ぼんやりしており、残念ながら続きが気になるようなものではない。
フェミニズムを絡めた物語でいけば、『真珠とダイヤモンド』のほうが面白く、おすすめ。
 
 
中ピ連、榎美沙子をモデルとしたフィクション小説。1972年にピル解禁同盟「ピ解同」の活動を始めた女性だが、本作で初めてその実情を知る。物語は塙玲衣子(榎美沙子)に関わった人達への取材形式で進んでいく。塙の活動を正しい事だと捉えた人もいれば、恨みを抱えたまま生涯を過ごす人もいる。美しい容姿を持ち、派手なパフォーマンスで時に脅迫めいた事もするが、根底に女性解放への強い想いが感じられた。SNSのない時代でやり方に難はあったと思うが、1999年、日本でピルが承認された事で、ようやく彼女の願いが届いた事に安堵する。
 
中ピ連かー。子供だったけど、ピンクヘルメットは覚えている。 桐野さんの怒りが伝わる。「国が女の身体と心を管理してきた」「今現在、少子化対策のために、またも母親となることを期待されている時代…」結局なぜ女が子供を産まないのか、政治も企業も男も、根本がわかってない。いくらお金出してもらっても、こんな国じゃ産みたくないし産めない。男性が読んだらどんな感想持つのかな。
 
 
中ピ連の榎美沙子さんをモデルにした小説。確か、私の中学生時代にテレビでピンクのヘルメットをかぶって登場していたような記憶がある。彼女の主張等についてはほとんど記憶がない。今、なぜ彼女なのかは作家さんに尋ねないとよく分からないが、多くの彼女を知る人たちの証言を掲載する形で展開される手法は非常に読み易く、何処までがフィクションか分からないが理解しやすい作品であった。
 
子供の頃テレビで見たピンクのヘルメット。
中ピ連、ウーマンリブという言葉。
意味は分からなかったけど新しい時代が始まるような、反対にただの流行で終わるような気もして見ていた。
あの時あの渦の真ん中にいた人をモデルにした小説。
新しい時代を恐れた男達に潰されたのか、1人先走りすぎたのか。
活動している間に自分も渦に巻き込まれ何をしているのか、どこに向かっているのか分からなくなったのだろうか。
でも、令和を生きる女性達は先輩達のこうした活動のお陰で随分良くなったと思う。

 

 

 
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