創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

中国、インドでの起業についての考え方

2017年07月22日 | 経営

天津、北京訪問の際、現地の中国人、インド人と食事をしました。 北京で北京ダックを食べましたが、本場の料理は美味しかったです。 中国人の社長が、中国での起業の苦労を実感込めて話した後、私にどうやって起業したか尋ねてきました。 私が話すと、食卓のほぼ全員がとても興味深そうに話を聞いていました。

以前、勤めていた企業を辞めて、転職できる企業を探したけれど、当時は雇ってくれる企業がなかったことを話すと「自分たちもいつそうなるか分からないから..」と。 皆、今はそれぞれの会社の社員です。

こんな話は、日本で真面目に聞いてくれる人はいませんでした。  日本のような低成長率の国と毎年7%水準の成長を続ける国の活力の差かもしれません。 日本では独立の話自体が、所属する企業に対する謀反のようで、このテーマについては黙してしまう人が多かったように思います。

独立を志向するなら、起業は、現在の市場の不満や問題点を補完する活動ですから、現状維持ではできないものです。Rebel(反抗者)は米国では格好いいイメージですが、日本では秩序を乱す変わり者です。

Global Entrepreneurship Monitor (GEM)の調査によれば、日本の起業活動指数も起業家の社会的な地位に対する評価も調査65か国中の最低水準です。 起業活動の活発さはGDPの成長率と相関があります。

日本では起業後、過去12カ月以内の廃業率が非常に低い傾向があります。 勿論、起業率の低さがと関係がありますが、起業した会社の廃業は少ないと良い意味に解釈することもできると思います。


天津経済技術開発区 (TEDA) 訪問 (2)

2017年06月04日 | 経営
2017/5/1付 日本経済新聞 朝刊に以下のような記事がありました。
「1年間に開業した企業数を総企業数で割った開業率は21%に達する。開業率を国際比較すると、日本は5%前後、米国は10%程度で推移しており、中国の開業率の高さが際立つ」
 
 
今回、北京、天津を訪ねて街中に黄色やオレンジの自転車が多いのに気づきました。
これが「自転車シェアリング」だと気づきました。  歩道のあちこちに自転車があふれて、自転車につけられたバーコードをスマホのアプリでスキャンして、決済もスマホでできるという便利なものです。
日本にも同様のサービスがあれば便利だと思います。  今後の中国での自転車シェアリングのさらなる普及については予測できませんが、間違いなく民間企業による起業のダイナミズムは感じました。
 
5月にTEDA(天津経済技術開発区)の管理本部は、大企業の誘致のみならず、起業の振興にも積極的です。管理本部ではワンストップサービスでの開業手続きが可能で、建物の中には、主要銀行の殆ど店舗を開いていてました。  TEDAは、投資企業の社員に対する住環境や医療環境の整備にも注力しており、企業に対する行政サービスは、日本よりも中国の方が進んでいると思いました。
 
天津訪問の2日目、黄砂が発生しました。
 
 
翌日、北京でも朝から黄砂で視界が悪かったのですが、昼過ぎには青空が戻ってきました。
 
 
しかしながら、PM2.5の影響と思われる咳が止まりませでした。
 
規制が及ばない起業のダイナミズム、行政サービスの良さというメリットがある反面、空気の悪さは大きなデメリットだと実感しました。

遠者来

2016年01月07日 | 経営
環境や政策が魅力的なら、企業や人が集まってきます。 最近の中国では、環境汚染や労務コストの上昇で、海外企業は中国での投資を減らしつつあります。
 
インバウンド需要で海外から日本に訪問者が増えたのは魅力的なものがあるからでしょう。 沖縄・東北3県観光数次査証というものがあります。 最初の訪日の際、沖縄県・岩手県、宮城県、福島県のいずれかで1泊以上することが条件で、数次ビザが発行されるというものです。
 
このせいか2014年の沖縄県 石垣港経由の入国者は 国内第10位の78,934人でした。 1-5位は成田空港、関西空港、羽田空港、福岡空港、中部空港の順ですから10位というのは大変な数です。
 
今年の晩秋、新潟を訪ねると、稲刈りの終わった田圃でたくさんの白鳥がもみ殻をついばんでいました。
白鳥は、現生の空を飛ぶ鳥の中では最大級。 それでも遠くシベリアやオホーツク沿岸から日本に渡ってきます。
コメの生産地の新潟をはじめ日本は、白鳥には魅力的な越冬地なのでしょう。
 
 
 
国境は人が作ったものですが、企業や旅行者、白鳥にとっては境界は容易に超えられるもののようです。 遠きものがやってくる場所は、良いところなのだと思います。
企業経営の視点からすると、態々遠くから人がやって来たり、問い合わせをしてもらえるならば魅力的な商品やサービスがある企業なのでしょう。
 
その魅力を大切にしていくのは肝要です。
 
葉公問政、子曰、近者説、遠者来
(葉公、政を問う。子曰く、近き者説ぶときは遠き者来たらん)「論語より」

バングラデシュにおけるソーシャルビジネス

2015年10月10日 | 経営
2015年8月13日付の日経新聞 「戦後70年これからの世界」という記事に国際協力機構特別フェロー 緒方貞子氏のインタビューが掲載されていました。
 
緒方氏はインタビューの中で「以前私は、日本だけが「繁栄の孤島」となることはできないと言ったことがあるが、日本人だけが危ないところに行かず、自分たちだけの幸せを守っていけるような時代は、もう終わった」と述べています。
 
この発言は世界の紛争地での難民救済に取り組んできた緒方氏の経験に基づく国際外交和平仲介を意図したものですが、わたしたち一般人が関与するのは難しい領域です。
 
日本人が、自分たちの幸せを願うのと同様に世界の人の幸せを願ってできることがあるとしたら、それは何かと思っていた時、大学院で同窓だった井原さんからバングラデシュで、IT教育事業を立ち上げたという話を伺いました。 その経緯は以下のようなものです。

井原さんは、もとは銀行やベンチャファンドにいらして、昨年まで福岡にある会社の副社長をしていました。 退職を機に暫く起業のアイディアを考えていましたが、今年バングラデシュの方向けにOlive Code (http://www.olivecode.com/) という IT教育プログラムを始めました。

バングラデシュでは能力のある人でも教育のインフラがないために教育や仕事の機会が限られることを知り、ネットを使ったプログラミング教育の提供を思いついたそうです。 さらに現地の卒業した生徒には、プログラミングの仕事の機会も提供しようとしています。
 
この事業の画期的なところは、オンライン教育システムをフィリピンのIT企業と提携して開発、チューターもフィリピンの講師を採用しています。 これにより、バングラデシュの方にも受講可能な水準の受講料を設定することができたといいます。 
 
また、自宅で受講できるオンライン教育とはいえ、現地に教室があったほうがよいということでグラミン銀行からバングラデシュの首都ダッカで教室の提供を受けることができたそうです。

 
 
こうした活動の成果としてバングラデシュでは徐々に生徒さんが増えつつあるということです。
 
わたしもこの話を井原さんから伺って、周囲が支援すべき意味のあるプログラムだと思い、微力ながらこれまでの
経験を生かして企業からの仕事の機会が得られるよう支援を始めました。

しかしながら、個人でできることはわずかで、何らかの形でご協力をいただける方がいらしたら (twagoya@edoo.co.jp) にご連絡をいただきたいと思っています。
 
以下がこの事業を運営する Edoo, Inc. のサイトです。
http://www.edoo.co.jp/
 
 

上腸間膜動脈症候群 (2)

2015年08月11日 | 経営

飲食したものが身体の中で閊えてしまえば、普通は生きていられません。

開腹手術をすると治癒の過程で縫合部が癒着し易くなるそうです。傷がふさがるということは癒着することですから、治癒の過程で癒着は多少なりとも生じます。

十二指腸狭窄の治療法は、チューブを鼻から入れ、のどを経て腸にまで挿入する保存療法です。これにより、腸内の内容物を体外へと排出します。

当然、食事ができませんので、すべての栄養を太い静脈に入れた点滴から入れる静脈栄養という方法を取ります。 栄養素は1日2リットルほど投与されます。 腕の血管からは点滴できないので、腰か胸の近くの太い静脈にカテーテルを挿入します。 写真はチューブを胸に挿入した状態です。 胸部血管から約15cmチューブが挿入され、心臓の近くまで達していました。 向かって右の管は、腸まで挿入された鼻管です。

結局、左右に太い管が二本ぶら下がったまま点滴スタンドと一緒の生活が 20日間ほど続きました。 健康体の人から見たら相当不便を感じるでしょう。

鼻管は、直径6-7mmあり、のどに違和感があり夜になっても3時間以上続けて眠れませんでした。 毎日3度、同じ病室の他の患者さんには食事が運ばれてきますが、わたしは食事なし。 味噌汁を啜る音など、他の人が食事する音が聞こえますが、自分だけ食べれないというのも苦しいものです。

治療中はいつ良くなるか分かりません。 「何もかも思い通りにはいかない」とはこのことだと思いました。


なぜ働くか?知的生産手段を得る方法

2015年05月12日 | 経営

「これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」  ドラッカー「プロフェッショナルの条件」

大企業が破たん吸収され、名前は同じでも全く異なる事業体に変質してしまう姿を目の当たりにすると、知識労働者は組織の寿命を超えていく必要に迫られています。 

個人が組織の寿命や変化に捉われず働いていくにはどうしたらよいか?  私の経験に基づいた例を一つあげたいと思います。

現在行っている事業は、海外企業との提携によって成り立っています。米国、中国、韓国、インドの企業と提携して、サービスの提供を行っています。 仕事を行うには英文での契約締結が必要でした。

日本の電機メーカで働いていた時に海外企業との技術提携契約交渉に関わる機会がありました。当時、優秀な国際法務の担当の方が契約の骨子作成から契約を交渉締結するまでの過程を間近に見ることができました。   

その後、業務上、英文の守秘義務契約や購買契約の翻訳をする必要が生じ、慣れない翻訳に何日もかかりましたが、社内の法務担当の方に内容をチェックしてもらいました。

契約書のチェックを国際法務の企業に外注したら相当な費用を請求されると思います。  もちろん、この時は社内の法務部でしたのでお金はかかりません。  今から考えてみると、とても良い勉強になりました。 起業後、英文での契約交渉を自分で行うことができました。

企業に勤めるという経験はありがたいものです。給与をもらいながら知識生産のスキルを身に着けるための勉強ができるのですから。 

たとえ企業を辞めてもあるいは企業がなくなっても身に着けた法務の知識は廃れません。

知識生産の道具は企業の寿命を超えて携行することができます。


知的生産手段としての戦略 (2)

2015年04月24日 | 経営

先日、山口揚平著「本当の株のしくみ」(PHP文庫)を読んでいたら「企業の価値の源泉は、1つか2つしかない」という言葉がありました。 著者が、投資をするときする自分に対して次の質問をしてみるそうです。  

  その企業は「なに」で稼いでいるのか?

  「なぜ」稼げているのか?

魅力ある企業を見つける株式投資の目的は、企業経営と同じだと思います。企業を外から見ているか中から見ているかの観点の違いだけです。  「なに」で稼いでいるのか? 「なぜ」稼げているのか? それは、個人の企業の知的生産手段がなにかを決める戦略そのものです。

知的生産手段としての戦略などといっても、要は戦略とは「何をするか。何をしないか」決めておこうということです。たとえどんな企業でもその資源は有限ですから、選択と集中が必要になります。 勝負できる得意分野、事業領域を決めておこうということです。

自分の会社の例で恐縮ですが、私は事業領域を「B2B製造業のグローバル事業分野」にしようと決めました。

国内の市場は成熟し、競争が激しく、始めたばかりの企業が既存の企業とまともに競争したら勝ち目があるとは思えませんでした。そこで国内に限った仕事はしないという選択をすることで、差別化を図ったのです。

B2Bに絞ったのは ― これまでの私自身の経験が製造業の法人相手に限られていたからです。B2B取引は、取引条件や回収に一定のルールがあるので、それに即して取引をすれば勝手がわかっているという安心感があります。

もう一つの戦略は「Intangible」なものを商品にしようと決めたことです。 

Intangible は目に見えないあるいは触ることのできないという意味で、反対語は「Tangible (形のあるもの)」です。 Intangibleな商品とは、知識、ソフトウェア、データなどです。 TangibleとIntangibleの両方の商品を扱ってみるとIntangible な商品の管理が如何に楽かわかります。 在庫も倉庫も輸送もいらないのですから。

特に小さな企業がIntangible なものを商品にもつことは重要でした。

これは、資本が少なくて済むことに加えて、農工業社会から知識社会への移行という歴史的な背景があります。かつて農業をするには土地が必要で、土地に資本価値がありました。 工業社会では工場や生産財に価値がありました。 こうした資本は地主や資本家という人たちが保有していました。それがドラッカーの云う知識社会に移行すると、知的生産財を所有する知識労働者が最大の価値を持つようなります。

モノやお金に不自由しなくなった時、人が何を求めるか?それは目に見えないもの経験と知識ではないかと思います。


生産手段としての戦略 (1)

2015年04月11日 | 経営

ドラッカーの言う「知識労働者の生産手段」とは何か?について記しています。

先回、私の行っている事業のマーケティングミックス(4P)について書いてみたいと記しましたが、マーケティングミックスはある製品やサービスに対して設定されるもので、事業に対してはマーケティングの前に戦略の立案が必要になります。マーケティングは戦略に対する戦術であって、戦略に伴って決まるものです。 組織のトップが戦略を決める際は、戦略と戦術、計画と実践を行き来しつつ実行案が作られます。

戦略が完璧な会社があったとしても、それだけではその企業は成功しません。その会社の社員がひどい電話対応をしたり、製品の品質が悪ければ、その企業と取引したいと思う顧客はいなくなるでしょう。 一方、戦略が貧弱でもオペレーション(例えば顧客対応や現場の対応)が一流ならその企業は成功する可能性大です。

ある政府関連金融関係の企業の社内を歩いている時、電話対応をしていた若い社員が電話を切ると「なんで俺がこんな対応をしなきゃならないんだ!」と大声でいっているのが聞こえました。 周りの人は何も言わずに聞こえないふりでした。 

こういう企業は優秀なエリートしか入れませんから、面倒な対応など「俺のすることではない」のでしょう。時々、有名な外資企業でも要領を得ない対応をする社員はいます。 やはり、できれば、あまりこういう会社とは付き合いたくないなと思ってしまいます。 先方から見ればわたしのようなものと付き合う必要は全くないのでどうでもいいことでしょうが…

これから顧客や市場を得ていこうとする起業家は、実践が成果の8割を決めると思っていた方が良いと思います。 組織のトップは「実践(行動)は戦略(計画)に勝る」を心掛けなければなりません。


生産手段としてのマーケティング

2015年04月07日 | 経営

知的労働者の生産手段は、人によって様々ですが、起業する人にとって役に立つツールについて記してみます。わたしの最大の生産手段はマーケティングです。

マーケティングといって大抵の企業ではPR(販売促進)の仕事だと思われています。 PRはマーケティングの一部ですが全てではありません。マーケティングの目的は突き詰めれば、4Pと呼ばれる要素の最適化です

4PはProduct, Price, Promotion, Place(Distribution)です。 この4つを最適化できる権限を持つのは社長か事業責任者です。マーケティングは社長の仕事といわれるゆえんです。

起業家は、まさに4Pを決定する立場にいます。 それは起業家にとって最重要の仕事です。

この4つは単独ではなくミックスされていないと効果が得られません。 ある製品には、それに適した価格があり、適した販路があります。  いくら良い製品を持っていても、効果的な販売促進(顧客に製品を知らしめる活動)の方法がなければ、その存在自体が顧客に認知されません。価格が高すぎても売れないでしょうし、安すぎたら利益が得られないし、製品のもつ価値が疑われる。 製品やサービスを顧客に届ける方法はどのように構築するか? この4Pを維持するにはどれだけのコストと人員が必要かという制約のもと4Pを最適化していきます。

事業や組織の佇まいを決めるのはマーケティングといっても過言ではありません。わたしが起業したときはどのように4Pを設定したかについて次回書いてみたいと思います。

4Pといえばフィリップコトラーですが、わたしが今の仕事ができるのもコトラー先生のお蔭と常々思ったものです。

 


起業する人にとっての生産手段とは?

2015年04月05日 | 経営

ドラッカーは、「知識労働者は生産手段を所有する。しかもその手段は携行品である」と記しています。(プロフェッショナルの条件 ダイヤモンド社) 知識労働者の生産手段とは何でしょうか?

雇用者としての生産手段は、経理や、人事や営業などの専門知識による業務であると考えられます。では、起業する人の生産手段とは何でしょう。

通常、個人としての知識労働者の生産手段は、自分の強みを生かすことから得られます。人づきあいが上手であれば営業や接客を職業にしていくことが考えられます。 楽器を弾くのが好きなら専門の教育を受けて、教師になったり、語学を生かしたり、それは人によって様々です。

一つ、重要なことは身に着けた生産手段に対して需要があるということです。歌を歌うのが好きで歌手になりたいと思っても、その能力に対して需要がなければ生産手段とはなり得ません。 生産手段として成り立つには「売上―コスト」がプラスになっている必要があります。  生産に対して、対価を払う人がいて、対価はコストを上回っていること。  そうでなければ、継続性が維持できません。

 わたしが起業してから8月で5年になります。 お陰様で起業して以来、2つの前提を成り立たせることができたから事業を続けることができました。 ですから、当たり前のことですが、生産手段に対して需要があることと対価がコストを上回っていることは事業の前提といえます。

 それを成り立たせるにはどうすべきか?  私の経験や起業の経緯を記してみようと思います。