米軍優位の労務協約「奴隷の職場か」反発
「奴隷的な職場になってしまう」―。
福岡高裁那覇支部の和解協議で、地裁判決で解雇無効が言い渡された基地従業員に対して、米軍が日米で交わされている労務協約をたてに復職を拒む姿勢を見せていることが明らかになった17日、関係者からは基地従業員と米軍の対等な労使関係を求める声が相次いだ。
全駐労沖縄地区本部の座間味寛書記長は「(協約内容が)米軍優位なことが往々にしてある。
不平等を是正してほしいが、米軍の合意がないとできない。
今後も対等な労使関係を求めていきたい」と話した。
社会保険労務士の吉田務さんは「ウチナーグチのウチクルスは、『打って殺す』という意味ではなく、せいぜい、『やっつけてやる』ぐらいの一時的、感情的な発言と取るのが一般的だ。
労働基準法でも会社の就業規則でも、解雇理由にはなり得ない」と指摘。
その上で「明らかに不当、不法解雇。
地裁判決が正しいにもかかわらず、米軍が従わず、解雇が認められれば、憲法が定める勤労権より米軍の管理権が優先されることになる。
基地従業員は悪口も何も言えない、奴隷的な仕事ということになってしまう」と強い危機感を示す。
米軍の実態に詳しいピースデポの梅林宏道代表は「米軍に権限があるとしても『安全上の理由』は軍事機密にかかわる問題などに限定される」と対応を批判。
日本政府の対応については、「自身が雇用者である日本人労働者よりも米軍の意向を優先している。
米軍が日本の裁判所の判断に従うのは当然のことだ」と強調した。
地位協定に詳しい本間浩法政大学名誉教授は、協約が日米間で合意されているため「内容をひっくり返すのは困難」とした上で、「安全上の理由」との判断基準について、「米側の判断が合理的に正当性があるか雇用主の日本政府が見直さないといけない。
正当性がなければ、米側の主張を撤回させるために積極的に意見を述べる姿勢が求められる」と指摘した。
防衛省は沖縄タイムスの取材に対して、「(高裁で)解雇無効の判決が出された場合、復職を求める方向性で、できるだけ早く米軍と協議することになる」と答えた。
基地従業員解雇訴訟 二審も解雇無効を認定
米国人上司のパワハラで不当に解雇されたとして、米海兵隊キャンプ瑞慶覧で自動車機械工として働いていた北中城村の安里治さん(49)が、処分を承認した国を相手に解雇無効と解雇後の賃金の支払いを求めた訴訟の控訴審は7日、福岡高裁那覇支部で判決があった。
橋本良成裁判長は「制裁解雇は無効」として、安里さんの主張を認めた一審・那覇地裁判決通り、あらためて解雇無効を認定した。
未払い賃金の支払い額は一部を減額した。
基地従業員の雇用関係については、日本の裁判で解雇無効の判決が確定した場合でも、日米間で定めた「諸機関労務協約」を根拠に米軍側が復職を拒むことができることが明らかになっており、今後の国の対応が注目される。
安里さんは2007年1月、米国人の上司を励ますために、別の米国人上司に対して言った悪口を、米軍側から「殺すと脅迫した」と判断されたことなどを理由に、同年12月に懲戒解雇された。
訴訟では、安里さんは「懲らしめてやる」との意味で「ウチクルス」と発言したと主張。
国側は「殺す」と発言したとして争われた。
今年4月の一審・那覇地裁判決は、発言について「上司に対する不満等を暴力的な言葉を使用した表現にとどまり、解雇事由に当たらない」とし、解雇無効とその間の賃金のほぼ全額の支払いを命じていた。
一審判決後、国側が控訴。
沖縄防衛局は「事実認定や判断を認めれば、駐留軍等労働者の円滑な労務管理や基地内職場の秩序維持に重大な影響があり容認できない」としていた。
控訴審は、初回の口頭弁論で即日結審し、高裁が和解を勧告。
国側が在沖米4軍に復職の受け入れを打診したが、「米軍側の受け入れ見込みは厳しい」として、和解協議は決裂していた。
「奴隷的な職場になってしまう」―。
福岡高裁那覇支部の和解協議で、地裁判決で解雇無効が言い渡された基地従業員に対して、米軍が日米で交わされている労務協約をたてに復職を拒む姿勢を見せていることが明らかになった17日、関係者からは基地従業員と米軍の対等な労使関係を求める声が相次いだ。
全駐労沖縄地区本部の座間味寛書記長は「(協約内容が)米軍優位なことが往々にしてある。
不平等を是正してほしいが、米軍の合意がないとできない。
今後も対等な労使関係を求めていきたい」と話した。
社会保険労務士の吉田務さんは「ウチナーグチのウチクルスは、『打って殺す』という意味ではなく、せいぜい、『やっつけてやる』ぐらいの一時的、感情的な発言と取るのが一般的だ。
労働基準法でも会社の就業規則でも、解雇理由にはなり得ない」と指摘。
その上で「明らかに不当、不法解雇。
地裁判決が正しいにもかかわらず、米軍が従わず、解雇が認められれば、憲法が定める勤労権より米軍の管理権が優先されることになる。
基地従業員は悪口も何も言えない、奴隷的な仕事ということになってしまう」と強い危機感を示す。
米軍の実態に詳しいピースデポの梅林宏道代表は「米軍に権限があるとしても『安全上の理由』は軍事機密にかかわる問題などに限定される」と対応を批判。
日本政府の対応については、「自身が雇用者である日本人労働者よりも米軍の意向を優先している。
米軍が日本の裁判所の判断に従うのは当然のことだ」と強調した。
地位協定に詳しい本間浩法政大学名誉教授は、協約が日米間で合意されているため「内容をひっくり返すのは困難」とした上で、「安全上の理由」との判断基準について、「米側の判断が合理的に正当性があるか雇用主の日本政府が見直さないといけない。
正当性がなければ、米側の主張を撤回させるために積極的に意見を述べる姿勢が求められる」と指摘した。
防衛省は沖縄タイムスの取材に対して、「(高裁で)解雇無効の判決が出された場合、復職を求める方向性で、できるだけ早く米軍と協議することになる」と答えた。
基地従業員解雇訴訟 二審も解雇無効を認定
米国人上司のパワハラで不当に解雇されたとして、米海兵隊キャンプ瑞慶覧で自動車機械工として働いていた北中城村の安里治さん(49)が、処分を承認した国を相手に解雇無効と解雇後の賃金の支払いを求めた訴訟の控訴審は7日、福岡高裁那覇支部で判決があった。
橋本良成裁判長は「制裁解雇は無効」として、安里さんの主張を認めた一審・那覇地裁判決通り、あらためて解雇無効を認定した。
未払い賃金の支払い額は一部を減額した。
基地従業員の雇用関係については、日本の裁判で解雇無効の判決が確定した場合でも、日米間で定めた「諸機関労務協約」を根拠に米軍側が復職を拒むことができることが明らかになっており、今後の国の対応が注目される。
安里さんは2007年1月、米国人の上司を励ますために、別の米国人上司に対して言った悪口を、米軍側から「殺すと脅迫した」と判断されたことなどを理由に、同年12月に懲戒解雇された。
訴訟では、安里さんは「懲らしめてやる」との意味で「ウチクルス」と発言したと主張。
国側は「殺す」と発言したとして争われた。
今年4月の一審・那覇地裁判決は、発言について「上司に対する不満等を暴力的な言葉を使用した表現にとどまり、解雇事由に当たらない」とし、解雇無効とその間の賃金のほぼ全額の支払いを命じていた。
一審判決後、国側が控訴。
沖縄防衛局は「事実認定や判断を認めれば、駐留軍等労働者の円滑な労務管理や基地内職場の秩序維持に重大な影響があり容認できない」としていた。
控訴審は、初回の口頭弁論で即日結審し、高裁が和解を勧告。
国側が在沖米4軍に復職の受け入れを打診したが、「米軍側の受け入れ見込みは厳しい」として、和解協議は決裂していた。