メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

11、月夜の散歩

2012年04月27日 | 月夜の散歩
若き日の僕は色々と考え事をしたかった。

しかし受験生で実家暮らしの僕が一人で開放的になる時間はそんなに無かった。

ジャムがやってきたことでその口実は簡単に出来た。

気持ちの良い夏の夜、僕はジャムを連れて良く外に出た。
ジャムは喜んで付いてきた。
親もジャムを連れて出て行く僕を引き止める事は無かった。
犬とはそういった意味でもすんなりと家族のあり方や生活スタイルを変えてくれる。

当時ジャムの散歩はちょっとした取り合いになっていた。

月がきれいな夜、
軽快に歩くジャムの足のリズムに見とれながら歩いた。
ジャムは時々、歩きながら僕を振り返る。
何かを確認するかのような目で。

ちょっと休憩しようと何処かに腰を下ろすと、
ジャムは足にしがみついてきた。

僕を見上げるまん丸なビー玉みたいな目は、
まるで宇宙みたいに深かった。

犬の散歩という行為も僕らにはとても新鮮な行為だったので、
ついつい色んな場所に連れて行ってしまった。
その場所場所でのジャムの反応や空気感を見たかった。

自分の母校の小学校や中学校にも連れていった。
川や海にも連れていった。
どんな場所でもジャムは変わらずに歩き、
まるでジャムが世界の真理の様にすら見えた。

あんな時間が今、恋しくてたまらない。

月明かりが地面にジャムの小さな影を映していた。
もうこの世界の何処にもその影は映らない。


僕は「ジャムを歩かせすぎだ!」と、
よく母に怒られた。

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