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今日は馬籠から妻籠まで歩く。妻籠までは9km。まっすぐ向かえば午前中には歩き終えてしまうだろうから、まずは反対方向・中津川方面に2km歩き、木曽路と美濃路の境に位置する、島崎藤村の「是より北 木曽路」の碑からスタートしようと思う。
8:26 馬籠宿を抜けると、農村の里が広がる。陽射しが厳しい。
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そこが登校の待ち合わせ場所になっているのだろうか、四辻の東屋に中学生が集い、揃ったので出て行く。
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杉並木の日陰がありがたい。それは古の旅人も同じ思いだったはずだ。諏訪神社。
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道端の畑に、肥えたカボチャがごろんと。
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なんとも優美な田んぼの景色。急過ぎず・のっぺりし過ぎずの傾斜、高過ぎず・低過ぎずの遠景の里山が、なんとも絶妙。田舎暮らしをするなら、こういう景観のところでしたいと思う。
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中津川の町を遠望。
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9:04 「これより北 木曽路」の碑。木曽路の入口。ここからあらためて馬籠・妻籠へ向けて歩き出す。
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一里塚。土を盛った塚が道の両側に。塚の上には榎または松を植えて、旅の行程や駄賃・運賃の目安としたという。一里=3.92km。
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この旅では随所で見かけた。軒先に整然と詰まれた薪。「どうせいずれ燃やしてなくなるものだし、テキトーな大きさに伐って、テキトーに積んでおけばいいじゃん」とはならないのだ。「物の用」が作り出した美、とでも言うのかな。機械の動作ではなく人の所作が、狙ったわけではなくおのずと、作り上げる美。
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置いたり吊ったり懸けたり、和のガーデニングは派手ではないのに変化に富んでいる。
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前方の山の中腹に馬籠宿が。戻ってきた。
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宿場の入口の農協の売店で買った「ひがしみの茶」。
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9:46 宿場の坂の下にある水車。てっきり観光用のわざとらしいしつらえかと思っていたので昨日から素通りしていたけど、なんと、これでちゃんと発電もしているのだという。お飾りではないのだ。
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石畳の坂道を登っていく。平日の昼、訪れる観光客は少なく、宿場の宿泊客もすでに旅立っている時間帯、静かだ。
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道端に色鮮やかなキキョウが。
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宿場のはずれ、恵那山を望む展望台。山頂は夏の雲に隠れている。ところで、今歩いているのは木曽路。木曽地方と言えば長野県のはずなのに、ここは岐阜県中津川市。何か違うな…と思っていたら、ここに建つ「越県合併記念碑」でその理由がわかった。2005年、いわゆる「平成の大合併」で、ここ馬籠を擁していた長野県山口村は、県を越えて岐阜県中津川市と合併したのだという。つまり元々は長野県だったのだ。しかし、さらに遡った古代は、このあたりは美濃国であったそうだから、今は「本来の所属先に戻った」というところなのかも知れない。
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十返舎一九の碑。ここ、峠の集落は栗こわめしが名物だったというが、「渋皮の むけし女は見えねども 栗のこはめし ここの名物」と、ずいぶん失礼な内容。
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碑のそばに東屋があり、腰かけて休む。馬籠宿を過ぎてから頻繁に休んでいる。距離も、傾斜も、昨日の恵那山登山ほどではないのに、強烈な陽射しが効くようだ。ふと後ろを振り返ると、腰の曲がったおばあさんが畑の畝に鍬を入れていた。少しずつ土を耕しては、地面に刺したままの鍬にもたれかかって休む。畑の脇には背負い籠とともに杖が置かれていて、あの杖をついてここまで来たのかなと思う。田舎のお年寄りはよく体を動かしているよなあ。東京の僕の地元のバスでは、特に体が不自由そうに見えなくとも、停留所2つ3つ、わずか数百メートルの区間でバスを使う年寄りがいる。同じ年寄りでも「人種」はずいぶん違う。体を動かすことではなくデスクに向かうことが「仕事」と思っていて、かつ、サービスが身の回りに溢れていてそれを存分に享受するのは当然のこと、と思っていると、後者の老人になってしまうだろう。
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峠の集落を行く。神社の境内の草を刈っていたり、ガレージの中で収穫した芋の仕分けをしていたり、暑さにめげず、本当にお年寄りがよく働いている。
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10:58 馬籠峠。標高801m。木曽路の入口から高低差306mを登ってきた。ここを越えると長野県。妻籠宿(標高430m)には371m下っていく。
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山道を下る。
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樹齢300年のサワラ(椹)の大樹。サワラ材は耐水性が高いため、風呂桶に使われるという。胴回り5.5m、樹高41mのこの木からは、「風呂桶が300個作れます」と説明書きに。カッコーン。
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男滝。木陰と水辺の涼しさが嬉しい。
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そのすぐそばの女滝。滝を落ちる水を眺めていると、水滴がストップモーションになる瞬間があり、でもそれはすぐに割れて砕けて消えてゆき、見ているうちに釣り込まれそうになる。
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大妻籠の集落が見え出す。
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急な坂道の途中に建つ牛頭観音。重い荷物を運んで街道を行き来した黒牛の供養塔。
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12:38 妻籠宿へ入ってきた。
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階段で道がジグザグに。枡形。
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石垣と白壁が印象的な光徳寺。
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その門前から宿場を見下ろす。
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かつては役場だったという観光案内所でパンフレットを眺めていると、雨が降ってきた。結構な降り方で、30分ほど足止め。雨がしのげる場所にいてよかった。
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雨がやんだので再び歩き出す。
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問屋場(人馬会所)。公用の旅客に人馬を提供するための施設。人足の指示や荷物の割り振りを行い、宿場の中で最も賑やかな場所だったという。
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13:38 この茶店の店先の縁台で休憩。
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白玉あんみつ。
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宿場を眺めながら。町並みを守り続ける志は本当に素晴らしいと思うけど、欲を言えば、路面はアスファルトじゃないほうがいいなあ…。
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歩き出したと思ったら、5分もしないうちにまた別の店に入る。
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これ目当てに。五平餅。この店の自家製というゴマダレが美味しい。タレだけでも舐めたくなるくらい。
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タレはボトルに詰められお土産として売っている。店内の貼り紙のこのレシピの豊富さが決め手となり(料理をしない僕でも手軽にいろいろ使えそうだ)、1つ購入。
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歩き出すと、再び篠突く雨が。この熊谷家住宅で雨宿り。
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家の前には大岩「鯉岩」が。緑に覆われて輪郭はわかりにくいが、鯉が身を捻って水面を跳ね上がるさまのようにも見える。雨の降り方に負けず蝉時雨が一帯に広がっている。人の気配はない。この辺りで妻籠宿は終わり。まだ時間はあるので、ここからさらに4km先の南木曽まで歩こうと思っている。それでも余裕がありそうなので、のんびり休んでいる。
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座敷の席順。座敷側に主人と長男、奥に妻と長男の嫁、手前に長男以外の子ども。
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奥の緑が見通せる。…雨はやみそうにないので、ほどなくして歩き出す。
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街道をいったん逸れ、妻籠城址へ続く山道を登る。
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14:39 妻籠城址。妻籠宿を見下ろす。今回の旅は、3日間毎日、城跡(どれも山城)を訪ね、宿場を歩いた旅だった。
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途中、枝分かれする道を歩いて民家の庭先に出てしまい、戸を開け放った座敷で新聞を広げて読んでいたおばあさんと目が合ったりしながら(会釈して切り抜けた。そのまま歩き続けると再び元の道に合流した)、街道を行く。馬籠から妻籠までは外国人も含め何組かの人とすれ違ったが、もう歩く人とは出会わない。雨はやんだ。
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木曽川畔の南木曽の町が見えてきた。
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かつて中央本線を走ったというD51が展示されていた。置かれている線路は中央本線の旧線だという。
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中央本線。山を貫く堂々たる複線。「幹線」の風格。この後、線路沿いを伝って南木曽駅前に出るが、まだ時間があるので歩き続ける。
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ダンプやトレーラーが疾走する国道19号と川幅のある木曽川を跨いで、立派な吊り橋が。
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15:33 木曽川の水力発電開発に力を注いだ電力王・福沢桃介が、大正11年に発電所建設の資材トロッコ運搬路として架けた「桃介橋」。床部分には栗と松が、トラス部分には杉と檜が使われていたという(平成の復元時は別の木材を使用)。全長247m。木製の補剛トラスを持った吊橋としては、日本有数の長大橋だという。
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橋の真ん中、木曽川の流れ。
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南木曽駅へ。今日歩いたのはおよそ18km。ここから東京への帰途となる。旅ももう終わるという淋しさと、無事に行程を終えられた安堵感と。
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ホームの隣には木材の集積場が。
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南木曽駅。
【南木曽16:00―(ワイドビューしなの17号)→16:53塩尻】
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塩尻駅。
【塩尻17:07―(スーパーあずさ28号)→19:11立川】
小仏トンネルをくぐり東京都に入ると、雨が降り出した。
<旅の会計> 47882
■1日目 31023
JR 東京都区内~名古屋~吉祥寺 乗車券 10190
※行き・帰りで分けて買うより、ほぼ1周のこの片道切符の方が割安になる。
恵那~南木曽の未乗車区間を入れても、1200円ほど安い。
本当は「東京都区内~東京都区内」で買いたかったが、それはできないそうなので、
都区外最初の駅、吉祥寺までの切符とした。
JR 東京~名古屋 新幹線特急券 3980
明知鉄道 恵那~岩村 470
レモンスカッシュ 120
菓子パン 116
明知鉄道 岩村~明智 360
烏龍茶 38
明知鉄道 明智~恵那 670
レンタカー 6825
ミルクティー、烏龍茶、マンゴープリン、アイス、菓子パン 563
夕食(ビビンバと冷麺) 1491
ホテル 6200
■2日目 10419
おにぎり 315
ガソリン 639
北恵那交通バス 中津川駅~馬籠 540
旅館 8925
■3日目 6440
お茶 100
白玉あんみつ 600
五平餅 250
駅弁(とりめし) 820
JR 南木曽~塩尻~立川 特急券 4670