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枕が変わるとなかなか思うように寝付けない。今朝も6時過ぎに目覚めてしまった。6時半に朝食を取り、部屋で食休みがてら小1時間ほど新聞を読んでから出た。
8:08 昨晩も来た広瀬川そばの歩道橋。風はやや冷たく、手袋をはめる。赤城おろし、上州空っ風か。
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上毛電鉄・中央前橋駅。窓口で1日乗車券を購入。ホームページにもパンフレットにも「1300円」とあったが、1000円だった。昔の井の頭線の車両が2両で走る。線路のすぐ横をほぼ同じ高さで広瀬川が流れている。ここから西桐生までの25.4km、全23駅の旅。
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先頭部に座席があったら陣取りたいところだけど、運賃箱が置かれていて、無人駅に着くたびに運転士が運転席から出入りする構造になっているため、座席は鉄板で覆われ、立ち入り禁止の鎖が張られている。
8:17 発車。乗客は2両全体で5,6名といったところか。自転車を持ち込んでいる人もいる。自転車車内持ち込みは地方の私鉄では当たり前の光景になった。
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車窓には赤城山がくっきりと。
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8:35 大胡着。下車する。中央前橋駅で切符を買ったときに路線案内図をもらったが、駅から徒歩圏で訪ねられそうなめぼしいスポットは、途中のどの駅にもあまりなさそうだった。赤城山麓の観光施設(牧場とか、フラワーパークとか、ドイツ村とか)はどれも車でないと行けない。もっとも、観光施設に興味はないけど。大胡は沿線の主要な町の1つで、城跡があるようなので下りてみた。
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待合室。「○畳」という広さの表現がしっくりきそうな、まるで誰かの家の居間に迷い込んだかのような親密感がある。ガラガラと引き戸を開け閉めして出る。
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大胡には車庫がある。
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味わいある凸型の電気機関車と貨車が。黒光りしている。現役で働いているのだろうか。
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駅から北、つまり赤城山に向かって歩くと、高台に大胡城址が。
9:00 歩いてきた町並みを見下ろす。画像右手のビルは文化会館で、この集落には不釣り合いな大きさのハコモノに思える。
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豪族・大胡氏(オオゴという語感はいかにも豪族っぽい)によって戦国時代に築かれたという。崩れた石垣が歴史を感じさせる。町もそうだったが、ここにもひと気はまったくない。
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本丸の北側は急に落ち込んでいる。いかにも城郭っぽい地形。子どもの頃に近所にこんな場所を見つけたら、秘密基地を作りたくなったろう。
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城の丘を下り、駅へ戻る道。振り返ると赤城山に向かって緩やかに登り傾斜になっていて、「山麓」なんだなと思わせる。
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大胡駅に戻る。駅を出たときと同じように、客待ちのタクシー運転手たちが談笑している。都内ではタクシーは客をなかなか捕まえられず、競争が激化しているという風に聞くけど、地方のタクシーはこうしてのんびり客待ちしていても成り立つものなんだろうか。地方の駅前でこういう光景を見ると、いつもそう思う。
駅舎は昭和3年の上毛電鉄開業時からある、国の登録有形文化財だという。
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9:33発の電車に乗る。車内は桜で飾られていた。粕川、新里と、かつては独立した村だった土地の駅で降りようかと思うが、車窓から眺められる風景に「何かがありそう」な気配を感じられず、降りる勇気が出なかった。かつては前橋と桐生の間にいくつかの町や村があったが、市町村合併で束ねられ、今は前橋・みどり・桐生の3市のみ。
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10:07 結局、終点・西桐生まで乗り通す。
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改札口の様子。待合室のベンチにいくつも置かれたカラフルな座布団は、どなたかが手作りして寄付したものだそう。愛されている駅。
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昔の切符売場の窓口だろう。格子の造作が独特。今は隣の自動券売機で買うのだが。
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大胡駅と同様、昭和3年の開業以来の駅舎で、こちらも国の有形登録文化財。中央の柱に立つ看板には「猟銃によるイノシシ捕獲を行います。山林内に入らないでください」と。公衆トイレの脇には「白ポスト」が。いわゆる“有害図書”の回収ポストね。子どもの頃はうちの最寄り駅にもあったな。今はどこでもなかなか見かけなくなった。
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メインストリート「本町通り」を歩く。香ばしい匂いがしてきた…と思ったら鰻屋が。まだ「準備中」なのに盛大に煙がでている。
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有鄰館。酒・味噌・醤油を醸造していた蔵が残されている。
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10:59 通りの突き当たり、天満宮。お参りして引き返す。
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旧織物工場。古さを感じさせない。最近の建物と聞いても納得できるくらいスマート。背後の家では、内職でもしているのか(まさか機織り?)、ギーコ、ギーコと音がしてくる。ラジオの音とともに。
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薬局。この界隈で一番古い建物だという。中を覗くと、「○○丸」と凛々しい筆文字で書かれた木の看板もあり、サトちゃんもあり。その時代時代の薬のキャラクターが集まっている。
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桐生の市街地も、前橋同様、シャッターが下りた店、中が空っぽになった店が多かった。駅に戻り、11:46発の電車に乗る。
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昭和41(1966)年製。47歳の電車。
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11:58 赤城着。「赤城」といっても赤城山へ行くバスもなく、特に赤城山への玄関口として機能しているわけでもないようだ。東武桐生線との接続駅。駅舎の看板には「おおまま赤城駅」とある。かつては大間々町。今は他町村と合併して「みどり市」。ずいぶん安直な市名をつけたものだ。この「みどり市」は東西を桐生市に挟まれている。つまり、桐生市が飛び地になっている。いかにも合併時にトラブルがあったことを感じさせる。「みどり」という思考を放棄したような市名も、揉め事を回避するための妥協の産物なのだろう。
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12:17 またしても駅で自転車を借りた。高津戸峡。遊歩道の入口に自転車を置き、川沿いを歩く。
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この白い石が川の流れで回って岩を削り、穴を掘ったのだという。ポットホール(甌穴)。
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さらに上流にはダムがあった。駅前はのっぺりとした平地だったのに、ほんの10分自転車に乗っただけで、深い山あいに紛れ込んでしまったよう。
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高津戸峡のそばにはわたらせ渓谷鐵道の大間々駅があり、車庫もある。この向こうにはトロッコ列車の客車が停まっており、窓がないオープンな部分は白い布で覆われていた。
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駅に停車中の列車を踏切から望む。この駅では乗務員が交代したり、長いこと停車していた。わたらせ渓谷鐵道の本社もこの駅にある。
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赤城駅に戻る。
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赤城には東武の特急が乗り入れている。りょうもう26号、13:07発。
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赤城を出発したときの乗客はこの車両に3人くらいだったが、太田・足利市・館林と続々と客が乗ってきて、窓側の席が全部埋まるくらいの混み具合になった。鉄道オタクと思しき一行が乗り込んできて、周囲が見えないのだろう、あたり構わぬ大声で喋っている。オタクのお喋りというのはなぜか“言語明瞭”で(ドランクドラゴン塚地のオタク芝居はその特徴をよく捉えている)、しかも一番喧しい奴が座席を転換させてこちら向きに座っているので、余計に始末が悪い。窓から見えるものを即物的に声に発し(何しろ席に着くときから座席の番号を1つ1つカウントしながら探していた…)、頭の悪そうなトークを余すことなく周囲に聞かせている。
14:55 浅草着。到着直前、最徐行で桜満開の隅田川を渡る。
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スカイツリーと桜並木。人出は多く、遊覧船のデッキにも傾きそうなくらい人が乗っている。今日歩いてきた群馬の町がどこものんびりしていたので、この雑踏はなじめない。すぐに浅草を後にする。
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16:56 うちの近所の桜。桜の名所は数あれど、一番見事だと思う。毎年そう思う。
<旅の会計> 14345
■1日目 11185
JR (東京)~高崎 1890
上信電鉄 1日乗車券 2160
楽山園 300
唐揚げ定食 650
富岡製糸場 500
JR 高崎~前橋 190
弁当、味噌汁、菓子パン、飲み物、デザート 795
ホテル 4700(朝食付き)
■2日目 3160
上毛電鉄 1日乗車券 1000
東武 赤城~浅草 運賃1000 特急料金1160