トジハジ日記

日記代わり、家族への発信用として利用させていただいてます。内容はいろいろですが登山が趣味で、公開は山行記録がメイン。

2018.7.25 - 26 日高 カムエク(カムイエクウチカウシ山) 

2018-08-06 11:48:46 | ブログ

稜線に上がったところからカムエクのピークをのぞむ

日高の最高峰、幌尻岳を遠望

稜線から歩いてきた八の沢を見下ろす

稜線直下まで去っていってくれた羆さん(雪渓の左)

札幌に住んでいる娘と娘家族に会う旅の始めに日高のカムエクを登りにいった。ネットで記録を見るとどの記録も札内川増水に注意、滑落事故多い、ヒグマに注意、三股からのルートで迷いやすいなど、いろいろと不安になるような事が書かれている。しかし八の沢カールのすばらしさは特別らしいということで行ってみることにした。今回も一人の気楽な山登りだ。
結果は、灯りの全くない暗闇の不気味なテント場での一夜、崩壊が始まった雪渓歩きの恐怖、三股から八の沢カールまでの油断のならない急な登り、期待を裏切らなかった別天地の八の沢カール、胸を痛める福岡大ワンゲルのヒグマ遭難レリーフ、ヒグマとの出逢い、天に突き上げるカムエク頂上への最後の登高、独り占めだった頂上からの大展望などなど、7X才過ぎた自分にとっては体力的に厳しかったが久しぶりに達成感で満足できた一日だった。

7月25日

11時頃に札内のキャンプ場から数キロの所にある札内ダム付近に車を駐車し車止めのゲートをくぐって車道を歩き始める。荷物は17kg程度。途中パトカー2台と道路公団数台の2台の車を含む車列とすれ違う。登山者が事故でも起こしたのだろうか。当方は単独なので事故を起こしても連絡してくれる人がいないので注意しなければと気が引き締まる。札内ヒュッテには45分程度で到着。中を覗くこともなく通過して登山口の七の沢出会いに13時半頃に到着。どこかに登山口の標識があるはずだが見当たらない。しばらくうろうろしていたらピッケルがついている標識があった。ここまでは運動靴で来たがサイズが小さくて爪を早くも痛めてしまって先が思いやられる。ここで沢靴に履き替える。アタック時の軽量化を図るため登山靴の持参は止め、ラバーソール(Five Ten)の沢靴一つで全行程を歩き通すことににした。ほとんどの人はフェルトの沢靴と登山口を持参するようだが、数年前、甲斐駒ヶ岳の黄連谷を登攀した時、頂上から長い黒戸尾根をこのラバーソールで下って全く問題なかったので自信があった。セオリーより自分の経験優先だ。(但し雪渓ではとても滑りやすいので下りの時は軽アイゼンを装着した)七の沢から八の沢までは余り巻き道をこだわらず、ジャブジャブと積極的に川中、川岸を進んだ。躊躇して考えてばかりいると時間が無駄に過ぎるので直観第一で立ち止まることはしないことにしている。特に戸惑うような渡渉も無く、今日の宿泊予定の八の沢出合いには15時20分頃に到着。ちょっぴり期待していた人影はない。早速テントを張る。油断大敵。足首を露出しながらテントを張つていたら、両足首は真っ黒になるほどブヨが貼り付いている。気がついた時は既に遅し。両足で100か所以上(大袈裟ではありません)はブヨに噛まれ、赤斑点だらけになってしまった。ブヨは蚊のように刺すのではなく皮膚を噛んで破る。その痒さは蚊などの3倍以上と言われていて、この後、1週間ほど痒さに悩まされた(日高の山では薬をもっていくのが常識らしい)。テントを張り終え、川原へ下りてのんびりしていると17時頃、かなり下の方にテントが張ってあった1パーティー4名が下ってきた。八の沢カールでヒグマが登山道の少し上にいたので登頂は断念し明日は下山するとのことだ。朝、5時にスタートしたとのことなので八の沢カールまでの往復で12時間かかっていてスピードが遅すぎるので熊以前の問題かもしれない。疲労した顔と中の一人が’凄い山ですね”という言葉とヒグマが頭から離れず、ほとんど眠れない一夜になった(いつものことですが)。

7月27日
朝3:30に起床。ちからラーメンを食べて4時頃にテント場をスタート。少し沢を進むと朝陽に照らされたカムエクが姿を表し、おもわず”オーー”と声をあげる。そして不安が登高意欲が変わる。大きな流木などで歩き難い沢をどんどん詰めていく。左右には見事な滝がところどころかかっている。この時期はまだかなり雪渓が残っている。特に三股近くは大規模な雪渓が残っていて、崩壊も始まっているのでルート取りには神経を使った(以前に、中央アルプスの片桐松川本谷を詰めていた時、目の前の雪渓が崩壊した時の恐怖がトラウマになっている)。2つの大きな雪渓を処理し三股に5時40分頃に到着。ここまで、遡行してみたいような滝がいくつもあった。日高が地元なら登りまくりたいようなフィールドだ。三股からは滑落注意の油断のならない登りが続く。滝はほとんど巻き道がついているが、巻き道ゆえにスリップしたら大事故必須なので慎重にならざるを得ない。ましてや単独なのだから。更に足元ばかり気にして登っていると簡単にルートを外れてしまう箇所が八の沢カール到着までに数か所あるので注意が必要だ。危険そうなところには所々、ロープが張ってあるが当てにはできそうもない代物ばかり。沢登りや岩登りの経験が乏しいと厳しいかもしれない(昨日登頂をあきらめた人は200名山を目指しているとのことだった)。まだかまだかと思いながら水量の少なくなった源流をつめると広々とした八の沢カールに飛び出した。期待を裏切らない美しいところだ。自然と”オーー”と声がでる。ここで羆チェツク。すぐに昨日の4人パーティーが話していた場所でヒグマが採食しているのがわかった。4人の話もあるので撤退するかどうか迷ったが、ここまで来ては簡単にはあきらめがつかない。少し様子をみることにする。気は進まなかったがこちらの存在を知らせる為にホイッスルを吹いた。ヒグマがこちらを向いた。少しドキとする。じっとこちらを見ている。少し進んでみる。まだじっと見ている。更に進む。これでこちらに少しでも進んできたら即撤退だ。ヒグマ遭難リリーフ近くまで進むと、うれしいことにヒグマが山の上に向かって後退しはじめた。ヒグマの進む方向には最後の頂上に向かう登路があるので、途中で鉢合わせするのではないかをいう不安があったが、何とかなるだろうと信じてヒグマのいた下の登山道をハラハラドキドキしながらトラバースした。あまりヒグマに気を取られていたのでカールの湧き水を補給することをすっかり忘れてしまい、ここからの2時間程度は水不足に苦しめられた。待望の頂上とピラミッドピークの間の稜線コルに7時45分頃に到着。少し休んだ後、熊との突然の出会いに注意しながら頂上に向かう。ハイマツを分けての歩き難い道を進みコイボクカールが左下に見えたころ、ようやく頂上が間近になり嬉しさがこみあげてくる。最後の歩き易い道を登り切ると、待望のカムエクの頂上に着いた。快晴の空の下(暑くて仕方がない)、独り占めの頂上からはどこまでも続く日高の山並に圧倒される。北方向には数年前に妻との登った幌尻岳、トッタ別岳が確認できる。反対側には去年に登ったペテガリ方面の山々、そして1839峰やイドンナップ岳など、登ってみたい山が目白押しだ(もう少し早く日高の山々の存在に気がつきたかった)どれだけ滞在しても飽きないが長居をしている余裕はない。10分程度の滞在で名残惜しい頂上を後に下山にかかる。喉の渇きに苦しみながら一気に八の沢カールへ。カールの冷たい湧き水は美味しかった。フィルターをセットするのももどかしく、それを通さずにたらふく飲んでしまった。一息ついて辺りを見渡したが幸い熊の姿はなかった。見えないだけでその辺で休んでいるのだろう。ゆっくりしたいところだがやはり落ち着かないので先を急ぐ。慰霊碑からしばらくトラバースしなければならないのだが ここで間違って一つ手前の沢を下ってしまい途中でおかしいと気づいて登り直すというアクシデントがあった。確かにここは間違え易い。下りは慎重の上にも慎重さが要求される。何とか特別な苦労もミスも無く三股に到着。本来ならここで緊張感から解放されるはずだが、温度の上昇した今の時間帯ではスノーブリッジの崩壊が怖い。ルートを慎重に見極めながら雪渓群をクリヤ―してようやく緊張感から解放された。あとは時間の問題だけだ。12時半頃に八の沢出会いに到着。自分の予定より2時間早いので明るい内に日高山脈センターのある札内公園に戻れる余裕がでてきた。テント撤収などで30分ほど大休止した後、テント場をあとにする。巻き道はおおむね左岸についていてこれを使えば早い。いい加減に川歩きに飽きてきた頃に七の沢出会いに到着。この辺りも熊の糞が多。その後、長い林道と車道を歩き駐車場に17時過ぎにスタート地点の札内ダム駐車場に到着、13時間少々のカムエク登山が終わった。

25日(休憩を含む行動時間 4時間16分)
ゲートをスタート 11:05 札内ヒュッテ 11:49 七の沢登山口 13:27
八の沢出会い(テント泊) 15:21
26日(休憩を含む行動時間: 13時間38分)
テント場発 3:55 三股 5:39 八の沢カール 7:00頃  稜線 7:44
頂上 8:35 下山開始 8:45 テント場 12:31 七の沢登山口 14:44
ゲート 17:33

コメント

1.登山靴を持参しなくても沢靴だけで歩き通せる。軽量化できる。
2.ラバーソールの場合は雪渓が多く残っている時は下りでアイゼンが欲しい(自分は4本爪使用)
3.虫よけや薬が無いとブヨに噛まれてひどい目にあう。
4.迷いやすいポイントが3つある。下ばかり見て進むと知らぬ間に誤ったルンゼなどに入りやすいので常に全体の地形を見ながら進むこと。
5.滑落は許されない。疲れている下りは十分に注意。
6.八の沢カールではヒグマのチェックをすること。
7.八の沢カールまで水は持参しなくてよい。八の沢カールでは水の補給を忘れずに。
8.自転車を活用すれば健脚者なら日帰りは充分に可能であろう。


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