発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

思い出のマーニー こんな不思議な夏があったっていいじゃない?

2014年07月08日 | 映画
思い出のマーニー 試写会 天神東宝

◆ひと夏の経験なのよ
 10代20代の頃には、毎年違う夏が来ていた。夏が終わって、同級生が全く別人になっていた、なんてことはないんだけど、ともかく、夏休みアニメのテンプレ、女の子のひと夏の経験というか冒険のお話。
 中学生女子、安奈は、札幌市在住。絵を描くことが好きだけど、学校では孤立してる。喘息持ちということと、母との関係から、ちょっと距離を置いた方がいいかも、ということもあってか、空気の良い、母親の親戚の家で夏を過ごすことになる。
 母親といっても、安奈は養女であるので「おばさん」と呼んでいる。「おばさん」の夫は出張が多く、不在がちだ。集合住宅に住む、ごく普通のサラリーマン家庭のように見えるが、自治体から安奈養育に関する補助金が出ているのを知った彼女は、お金目当てで自分を育てているんじゃないかと疑っている。愛されてない気分が、「私は、自分が嫌い」と言わせている。
 いやいやいや、いいお母さんじゃないか。何が不満? と思う。幸せは幸せを感じる力そのものだと思っているが、安奈ちゃんは、それに欠けている。この夏にそれを取り戻すお話なのだなたぶん。

◆マーニーが出なくても、それなりになんとかなりそうな
 で、転地療養先、これ、最高である。滞在先の大岩家のおかみさんと旦那さんは、気のいい夫婦で、トマトがたわわに実る家庭菜園つきのおうちの、その家の娘が独立して出て行って空きになっている部屋で安奈は過ごすのだが、その部屋もステキ。海が見えて、気持ちのいい風が入る。安奈が近所の中学生とトラブルを起こして、その母親が押し掛けてきても、まあ理想的な対処をしてくれるし、安奈のことをきちんと気にかけていてくれるが、あまり干渉しない。超居心地が良さそうっ!!と、思うのは私だけではあるまい。 こんなとこで、自転車の距離に図書館なんかあれば最高だね、自分がここでひと夏過ごせる中学生だったら、宿題やって、本読んで、写真撮って、紙工作作って、昆虫採集して過ごすだろうなっ、と思った。
「ここでひと夏過ごした安奈は、すっかり元気になって札幌に帰りましたとさ、めでたし、めでたし」。
 違ーう。それでは「思い出の大岩家」になってしまうではないか。マーニーを登場させないと。

◆だって、ジブリだからね
 ここで、非現実的なファンタジーが展開されるのだ。
 地元中学生とトラブルになって海辺に逃げてった安奈は、置いてあった誰かの手漕ぎボートに乗り、入江の向こうの湿っ地屋敷と呼ばれる空き家に行くと、マーニーという金髪の少女が待っている。安奈はなぜかこの洋館を見たことがあるような気がしている、彼女はなぜ安奈が来ることを知っていたのか。ふたりはすぐ仲良くなる。ピクニック、レトロな夜会、雷雨のサイロ。マーニーが異界の住人であることはすぐにわかる。現実世界では、洋館には新しい住人が入ってしまうが、マーニーの部屋だったところに住むことになった少女は、なぜかマーニーのことを知っている。マーニーは、実は安奈の空想の中の住人、というわけではないのだ。そのうちにマーニーはまた出現する。
 マーニーは何者? 謎を解きながら鑑賞しましょう。

 こんな不思議な夏があったっていいじゃない?

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