発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

万能鑑定士Q モナリザの瞳

2014年05月22日 | 映画
◆モナリザとわたくし
 子どものころ、母が定期購読していた月刊誌には、一枚ずつ、当時としては良いカラー印刷の複製画がついていた。
 黒田清輝の「湖畔」、モネの「睡蓮」、ラファエロの「ひわのマドンナ」などとともに、印象深く記憶に残っているのが、モナリザだ。「ジョコンダ婦人」という別名もあることもそのころから知ってた。タイガースの「モナリザの微笑」という歌の「モナリザ」とはこれのことか。眉ないし、怖いし。これが美人? と思ってた。

◆「万能鑑定士Q モナリザの瞳」試写会、都久志会館
 万能鑑定士Qという鑑定のお店の主人、本編のヒロイン凛田莉子(りんだ りこ)は、どうも、古美術商や質店みたいなところの鑑定も行っているようだが、信用調査というか、審査のような仕事もする万能鑑定人である。
 ミステリーなので、詳しくは書けないけど
 レストランから、貸し切りパーティーの依頼人の鑑定を依頼され、怪しいということでパーティーに出て、そのバンケットにしくまれた陰謀について鮮やかに解明してみせる。そのことで、ルーヴル美術館の臨時学芸員の採用試験に招ばれるのだが、こんなに経費をかけて臨時学芸員を養成してどうするんじゃ、とツッコミを入れたくなる。
 真贋を鑑定する訓練のあと、鑑定眼が狂いだした莉子。それがどんな陰謀であるのか、どんでん返しのあと、大団円となる。
 もうひとつツッコミを。高層ビルというからには、そこはあなた、スプリンクラーでしょう普通。消防法もあることだし。あ、切ってあったの? まあ誰かが真似をしようとしたら失敗する仕掛けなのかな。

◆おしゃれ鑑定士
 凜田莉子=綾瀬はるかの衣装が不思議だ。全体的にトラッドというかコンサバだけど、上品だが甘くない、媚びてない。でも男の子トラッドをスカートにしたってのとは違うし、若い娘のコンサバスタイルにありがちなおばさんっぽさもない。とてもかわいい服だよ。初音映莉子の令嬢スタイルもかわいいね。

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ASKAにまつわるエトセトラ

2014年05月19日 | 日記
◆ASKA逮捕
 ミュージシャンの双六ゲームをつくるときに、「デビュー」「紅白初出場」「武道館コンサート」「全国ドームツアー」「ワールドカップで君が代」「紅白で大トリ」などの他に、「薬物」のマスをつくることになりそうな。復活したミュージシャンもいることだし「何回休み」に設定すればいいのかな。それもサイコロで決めるのかな。

◆1979年
 デビュー曲はよく覚えている。チャゲ&飛鳥名義で、ニューミュージックとはいわれていたものの、内容は「ど演歌」なラブバラード「ひとり咲き」。最初聞いたとき「(当時人気があった世良公則のバンド)ツイストみたいね」と思った。一発屋さんかしら?と思ったらそうではなかった。
 流行音楽家として、勤続年数を長くしていくのは大変だけど、スタンダードナンバーといえる楽曲を出した音楽家は、他の無資格自由業に比べれば、はるかにその後の生活は安定する。
 音楽著作権は最強といえる。楽曲は日本音楽著作権協会=JASRACに管理されて、使用のたびに細かく課金される。本や雑誌やネット上で歌詞の引用をするにも、楽曲を有料のコンサートで演奏するにも、カラオケ客に歌わせるにも、商業施設や病院や銀行のBGMとして使うにも(この場合は有線放送会社が利用料をとって、代わって支払うんだと思うけど)、JASRACへの支払いが必要になる。作詞、作曲、歌、それぞれについて課金されたものは、著作権を持つ人に支払われる。そういうわけで自分で作って歌うシンガーソングライターには特に有利である。
 ASKAほどヒット曲を持っていれば、お金に困るようなことはないはず、というより、お金があったから高い薬物が買えたってことかな。誰かこれ(薬物)やればいい歌できるって誘ってくれたの? ダメですよ、である。
 

◆薬物の正しい断り方教室in USA
 80年代の終りころだったと思う。ラジオの「やさしいビジネス英語」のスキットのなかで、アメリカに駐在する日本人が、パーティーでコカインを勧められたときどう答えればいいか、という会話が出てきた。
 もちろん、お断りに決まってる。
 とはいうものの、断り方が難しいのが問題なのである。相手のバックグラウンドがわからない。「ウッソー、やらない、冗談じゃない、ダメダメダメダメ、ゼッタイ」と答えでもしようものなら、「こいつ通報するかもな」と思われて、あとで暗闇でズドンとしてくる組織……でないとは限らない。何せ飛び道具の普及率が我が国とは比べ物にならないのであるから。
 正解は、確か「それは私の薬物ではないので」と、何か別の種類の薬物を使っているかのようにも受け取れる表現でやんわり断る、ってのだったと思う。「薬物」というのは、チョコレートのことでも、ビタミン剤でも、おやすみ前のカモミールティーのことでもいいのだ。自分は嘘は言っていない。相手も、通報される疑いをかけてくることはないだろう。
 当時から、そのラジオでは、セクシャルハラスメントについての扱い(放置すれば、被害者から「会社が」訴えられてしまう)とか、いろいろタイムリーな問題についてのヒントがあった。英語が身につかなくても役立つ杉田敏先生のビジネス英語番組は、今も聴けるはず。

◆他人のお誘いは断りやすい
 上記の方法は、相手によっては、今や国内でも使える断り方ではないのか。
 ちなみに、東京都保健福祉局の断り方は、「何が入っているか分からないし危険だよ」「用事を思い出したので、もう帰るよ」「ドラッグには興味がないからいらないよ」である。
 まあ、他人から勧められても断るのは簡単に思える。問題は友だちや彼氏彼女(か、そう思ってる子)から勧められたときだろうな。仲間はずれにされても平気な子は、そもそもドラッグに手を出したりはしないと思う。いわゆる「ポツン上等」的な独立心を養うのが、一番の薬物対策であると思われるが、「ポツン上等」は協調性のなさに見えてしまうこともあるので、義務教育現場の先生方は好まないかもね。

◆有機溶剤とわたくし
 義務教育といえば、中学のころ、部活で、採集したサンプルの入ったシャーレに油性ペンで番号を入れていて、使用後は、キシレンで拭いてきれいにしていた。もちろん顧問の先生の指示である。使うときは窓を開けておくようにね、とも言われなかったが、普通に臭いので窓を開けての作業だった。
「何か新聞にシンナー遊びがどうのって載ってた」「シンナーって、トルエンとかキシレンとか」「まさにこれじゃん?」「何も来ませんが?」
 それでおしまい。学校が楽しい子どもたちには同じシンナーも単なる汚れ落としだったのだ(そのころに吸ってしまった有機溶剤の影響が現在のわたくしの脳の残念さの原因かどうかはさだかではない)。逆に、単なる町売りの鎮痛剤や咳止めも、大量に買って飲めばヤバい薬物となるのである。

◆不安な心が薬物に手を出させるということ。
 「ダメ、ゼッタイ」のポスターだけで、薬物依存が減らせるなら、警察は苦労はない。不安が薬物に人を向かわせる。世の中不安なことだらけではないか。小学校の校長でさえ、激務に耐えかね、ちゃんとお仕事がこなせないかも知れない不安にかられ、薬物に手を出してしまったらしいし。
 歌手の不安って? 歌が作れなくなること? 常にトップランナーでないと気が済まないってこと? 
 それで、自分の健康あるいは生命を害し、周囲の人を悲しませ、社会的に抹殺されることになるのに薬物に手を出したってこと?
 一時的に不安が消えるにしても、悪い結果が目に見えているのに手を出すのは、やはり病気だ。
 飲酒運転と同じで、そのひとは死にたかったということかもねと私は思う。死にたくないのなら、手を出してはいけない。
 人は時々、自分は死にたくはないのだということを確認した方がいいかも知れない。よくわからないなら、安全なところで死の恐怖が味わえる遊園地の絶叫マシンなどに乗ってみるのもいいのではないか、と呑気に結んでみる。
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WOOD JOB! (ウッジョブ!)~神去なあなあ日常~試写会

2014年05月08日 | 映画
WOOD JOB! (ウッジョブ!)~神去なあなあ日常~試写会イムズホール。

◆「海猿」伊藤英明の、新シリーズ「山猿」スタート!!!
↑嘘です。ごめんなさい。
 ですが、この映画では、伊藤英明が「海の男」から「山の男」に大変貌をとげています。しかも、ワイルド過ぎ。ちなみに主演は「永遠の0」で、大石さんを演じていた、染谷将太くん。

◆林業生活にご招待
 大学受験に失敗し、彼女にも逃げられた平野勇気(染谷将太)くんが主人公。傷心どん底のときに見かけた「緑の雇用制度」パンフレットの表紙の美女(長澤まさみ)めあてで山村に行く。紀伊半島(と発音して、野際陽子の歌声が脳内再生される私は古い)三重の奈良県寄り。鉄道は一両のレールバスが一日三往復やってくる。そんな場所で林業一ヵ月研修を修了し、さらに奥地、町まで車で二時間の、れいの美女の所属すると思われる中村林業の一年研修に行くことになるが、なんとそのステイ先から迎えに来たのは、研修のときに実演していた山仕事に卓越していてワイルドかつ凶暴な林業者、ヨキ(伊藤英明)だった。おまけに美女の仕事は林業ではなかった。
 というわけで、林業生活にご招待な映画である。

◆100年スパン産業
 まあ、ヨキや、たくさんの林業者たちと、植林、間伐、枝打ちを行う新人平野くん。逃げようとしたこともあったけど、ともかくがんばるのだ。
 材木市場で、中村林業の丸太が高値落札されるのをまのあたりにして、平野君は林業って儲かるんだぁとばかりに舞い上がるのだが、社長たちはまったく冷静である。
 農林水産業、あるいは農林業と括られて呼ばれているものの、林業収入「山林所得」は、その特異性から、課税方法に他の産業にない特徴がある。
 木を伐採もしくは立木を譲渡して得られる所得「山林所得」の税は、国税庁のホームページによると、他の所得とは離して、5分5乗と呼ばれる、かなりユルい累進で課税されることになる。
 日本の所得税は、中学の公民の時間で習うとおり累進課税で、500万円の所得にかかる税率は、100万円の所得にかかる税率より多い。山林所得の5分5乗とは、簡単に説明すると、500万円所得があったとき、100万円にかかる所得税率で税金を計算する方式、つまり5で割って5を掛ける5分5乗となるのである。要するに税率が通常の所得よりも低い。
 なぜなら、林業というのは、植えてすぐに利益が出るものではない。植林してから100年以上を経てやっと伐採となったりするからだ。その間には、こまめな間伐や枝打ちなどの丁寧なメンテナンスが必要なのである。
 投下した資本や労力は、ほかの産業と比べて際立ったロングスパンでの回収となる。高値で売れるからといってどんどん伐採するわけにはいかないし、売れたからと言って浮かれて浪費するわけにはいかない。アブク銭とは対極にある売り上げなのであるから。
 ちなみに取得後5年以内に伐採または譲渡して得られた所得や、山の土地を売った所得は、フツーに課税されますので念のため。

◆自然の一部、なんですよ
 まあそんなで木は自然が育ててるようなところもあるから、山で働く人々は、山の神様に対する畏敬の念が半端ではないのである。人の力がおよばないことがあること(じつはそれはあたりまえで、人間はすべて地球の間借り人に過ぎないんだけどね)を毎日自覚しながら生活してる。それで神隠しだとか、山に入ってはいけない日だとか、プリミティブに思えるお祭りもあるんだけど、それは映画の中で。恋のゆくえも。
 「銀の匙」が農業で、この映画は林業のお話。第一次産業の映画が続く。次は漁業映画かしら。
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天使すぎるアイドル/祭りのあと

2014年05月06日 | 日記
◆今話題の土岐麻子
コンサートに行ったことがあるのがちょっびり自慢な私である。

◆天使すぎるアイドル
 さて、連休が終った。といっても、世間様のような連休ではない。
 平日空いてるときに休める者は、土日祝しか休めない人々の邪魔をしてはいけないということである。
 とはいえ、休日の気分は少し味わいたい、ということで、今年は初めて「どんたく前夜祭」というのに行ってみた。5月2日福岡国際センター。前年の人気投票で上位になったどんたく隊は、このステージで演技する権利を得るのだ。
 4時の開場時間にあわせて向かうと、すでに長蛇の列。最後尾を探すのも大変だったが、なんとか席にすわる。
 警察音楽隊の演奏や、松囃子だの傘鉾だの稚児舞だの古式ゆかしい出し物のあと、ゲスト<どんたく隊>としてRev.fromDVLが出た。今話題の「天使すぎるアイドル」橋本環奈ちゃんのいるユニットですよ、「天使すぎる」んですってよ、あなた。
 最前列には追っかけとおぼしきヲタク風味のお兄さんたちがいた。たぶん長いこと並んでいたに違いない。
 と、ステージに12、3人の少女たちが走り出てきた。まあ、みんな元気に踊ること、声が出てること。舞台の真ん中あたりで、小柄な女の子がはりきって踊ってる。あれが話題の橋本環奈ちゃんかな、と思ったら、その通りだった。撮影禁止なので、画像はありません、悪しからず。
これまで雑誌でしか見てなかったもので、天使すぎるアイドルって?いや、ただ単に普通に可愛いって感じだし?15歳にしては、完璧にシンメトリーな笑顔ができる(好感度あるプロの笑顔。代表としてはベッキーを挙げたい)ところが大人っぽく見えるけど?くらいに思っていた私が甘かった。静止した二次元ではその魅力は伝わらない。「動く橋本環奈ちゃん」は、確かに目が離せない。見ていたい。オバハンでさえそう思うのだ、いわんや、青少年をや、である。アイドルの絶対条件は「見ていたい」である。
 前年度入賞どんたく隊の演技をいくつか見て、大博通りを歩いて博多駅へと向かった。夕暮れの海の匂いのする風が心地よかった。
 連休の間は寒かった。ウールのセーターやカーディガンを着ている人をよく見かけた。だが日差しは8月並みなのだ。
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女の子の気持ちのわからない○○には未来はないのよ

2014年05月01日 | 日記
◆その○○に言葉を入れなさい。
 ○○にはあらゆるものが入ると思う。女の子を対象にしないものさえほとんどあてはまる。ましてや女の子をターゲットとしたものはなおさらである。

◆老舗情報誌の破綻
 そんなことを考えていたら入ってきたのは『ガリヤ』破産のニュース。

 福岡の主にお勤めで働く女性を対象にしたフリー情報誌。○○したがり屋さんの『ガリヤ』。女の子の欲望をわずかカタカナ三文字であらわした絶妙なネーミングだと感心したものだった。
 女の子の気持ちや生活からどう離れてしまったのだろうか。
 たぶんバブルの頃に掘り当てた鉱脈が尽きたというとこだろうなと。
 この本は、おもに宴会グルメと美容外科とエステの広告で構成されていた。女の子がギラギラだった時代っぽいよね。あと、エッセイがいくつかと、歴史のページと。でも、有名な歴史研究家の連載ページの向かいになんでまた豊胸手術の写真つき広告があるのだ。豊胸手術は歴女がターゲットというわけでもあるまい。それに、この記事を材料に会社の男性同僚や上司と歴史を語ろうとするとセクハラになってしまうではないか、と、起きてもいないことにハラハラさせられる本だったなあ。印刷媒体のいいところは、情報をその場にリアルにいる人と共有しやすいところだ。そのための仕掛けは必要だろう。同僚男性を追い出してどうする。あまり男性に見せたくないページは、クリップで止めるなりする、なんてことができないのは困る。というところまで考えが及ばなかった、フツーの女の子感覚が薄れてたというのが敗因のひとつかもと思うのだ。

◆ゲージツとわたくし
 と書いたところでよみがえる思い出。私の仕事場が出版社として動き出したころ、とある鉄道系記事を、あるムック本から依頼された。そのムック本には、九州の代表的な写真家やライターがページを飾っていて、つまりその本に載るのは当時ステイタスだった。まあ、もっと昔の『太陽』とか『芸術新潮』に載るみたいな感じ。はりきって取材し、写真も撮り、記事も書いた。 
 そして無事掲載。    
 ところが掲載された数ページの続きには、すぐ、なんと芸術的な数ページのネイキッド男女の写真が。白黒ですが、もろネイキッド。私の覚えている限り、そのムック本にネイキッドが載ったのはそれっきりだったが、それがなんと私のページの次。うわあっ。本が出たら母校に寄贈したかったのに。高校生に、もろネイキッド男女写真をゲージツだからと言っても許してはもらえまい。中学はもっと無理だ。見せるにも相手を選ばなきゃならない。載せてくれてありがとうございます。過分なギャラもありがとうございます。でも……だった。ちなみにその本はいまだに書店で売られている。

◆バブルの頃とは違う鉱脈を探した例としては
 で、情報誌の話に戻るけど、同じような対象で、『ガリヤ』の副編集長だった人が独立してはじめたフリー情報誌は、いまだ健在で、こちらもグルメやエステもあるが、スクールやカルチャーの広告が多い。女の子の「自分探し」、言い換えれば「これからどうしたらいいの私?」的な市場に着目しているように思える。価値観は多様化し、平均的なところに乗っかろうにも、もうそんなものはない。こんなことしてる場合じゃないということだけはわかるが焦る。母親とは時代が違うので手本にはならない。そんな女の子たちに自分を変えましょう、と誘いかける。
 これはいい所に目をつけたと思う。自分探しのロングアンドワインディングロードに一度はまるとなかなか出られない。かなり持続性のあるマーケットたりうる。
 だが、答えはある日、目からウロコが落ちるように授けられるのだ。今ここにいる自分以外には自分はない。それに気がついて目的を果たしていちぬけるのか、気がつかないまま疲れていちぬけて、また戻ってくるのか。それも神のみぞ知ることである。
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