発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜

2017年03月14日 | 映画

◆ひるね姫〜知らないワタシの物語〜試写会 Tジョイ博多

  試写会会場に行くと、女性のデイドリーム・ビリーバーの歌声。忌野清志郎の日本語カバー(セブンイレブンの歌)と同じ歌詞。歌ってるのは本編主役の森川ココネ=高畑充希である。この歌、原語では相手の女性は寝坊をしているが、日本語カバーでは、デイドリーム・ビリーバーは相手とは別れている。写真が飾ってあるということは、亡くなっているかも知れない。元歌はモンキーズ。モンキーズ・ショーは子ども時代テレビで見てた。デイビー・ジョーンズの名前くらいは覚えてるし、モンキーズのテーマ、D.W.ウォッシュバーン、素敵なバレリ、知ってるメロディーもいくつか。

  監督と声優の舞台挨拶ののち、As Time Goes Byが流れワーナーのロゴが映し出されいきなり本編となった。

  舞台は2020年倉敷である。瀬戸大橋の架かる鷲羽山(わしゅうざん。わしゅうやまと言う力士が昔いたよね)の海側の岸。電車はすでに全線廃線となった下津井電鉄のバス。本四架橋児島坂出ルート、児島瀬戸大橋近く。田舎っぽい描かれ方をしているが、町に出れば、中国地方3番目の都会(広島→岡山→倉敷→福山)だ。倉敷駅から観光地のいわゆる倉敷美観地区に歩く道は記憶している。海のほうには行く機会がなかった。

  主人公の高校三年女子ココネは、居眠り常習犯、母と死別し小さな自動車修理工場を営む父親と二人暮らし、という、ありがちな設定であるが、その平凡な日々をどうやってぶっとんだ非日常に持って行くのか。

 夏休みになろうという日に、父親がなんと逮捕される。モモタロー(お父さんの名前)、ココネ、父娘の危機。

 夢の世界と現実がシンクロしているのに気づいたココネは、眠って夢の中で問題解決しようとするのである。夢の中では彼女は魔法が使える王女エンシェン。いきなりファンタジー満開である。

 何しろモモタローは、近所の爺さんの軽トラを完全自動運転にして、ステアリングを持たずとも目的地に安全に行けるように改造しているのである。十分ぶっとんでいる。だが道交法違反で逮捕されたのではない。この自動運転制御プログラムのオリジナルコードをなぜモモタローが所有しているのか。そのあたりが問題となる。

 あとは本編をご覧くださいませ。

 完全自動運転といえば2005年の映画「アイ,ロボット」の、2035年ウィル・スミス刑事の乗るBMWだが、この車は、自動運転だけでなく、ひょいと立ち上がり、駐車場に縦型収納される(トムとジェリーの枠で放送されていた1950年代に考えられた未来の車の話「ステキな自動車」というアニメを思い出す)すぐれものである。

◆懐かしい仕掛け

 登場する「ジョイ」という柴犬の縫いぐるみ、夢の中では話せるし動けるのだが、これは、林明子・福音館書店の、小さな女の子がキツネの縫いぐるみと旅する絵本『こんとあき』の「こん」を彷彿とさせる。色はドラえもんだし。月夜の空飛ぶ側車を観てE.T.を思い出したのは私だけではないだろう。懐かしさを引っ張りだす仕掛けがあちこちに隠されている。エンドロールで流れるデイドリーム・ビリーバーが誰かは、映し出されるアニメーションでわかる。

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で、今年も春が来た

2017年03月11日 | 日記

◆メリケン粉投げ

 ここ30年ほどの沖縄の卒業式の風習らしい。食べ物を祖末にする、というのもあるが、粉塵爆発も心配するなあ。危険だ。いちど通りかかったことがある博多駅の中学生卒業記念特攻服集会は今年もあったのだろうか。

◆今年も来てしまった3月11日

 単なる損得勘定の話をする。原発再稼働はあちこちで進んでいるが、稼働する原発を存在させることは、原発を廃炉にするよりも覚悟がいることだとわかっているのだろうか。

 原発は安全ではない。原発のメルトダウン事故は起こりうる。原発がメルトダウンしてから廃炉すると、いつ作業が終わるかわからない。すでに莫大な費用がかかっていて、これから幾らかかるかわからない。原発事故の後始末は、とてつもなく費用を食う。原発事故は周辺の環境と産業を台無しにする。原子力発電は安くつくと言われているが、「普通」の廃炉費用と「使用済み燃料」の処理費用を計算に入れてのことだろうか。

 考えるのもいやになるが、今度2011年と同じようなメルトダウン事故が起きたら、損害を受けた人は損しっ放しとなるのではないかと恐れている。福島の人々が原発事故による損害を十分担保されているかどうかは今ここでは語らないが、今後事故が起きても、福島後の「想定の範囲内」すなわち「事故のリスクやデメリットも承知の上での選択の結果」なので、それだけ補償から相殺、つまり「想定外」だった福島ほど損害が担保されないのではないか。そもそも日本経済が次の事故の後始末を支えられるのか疑問である。財源はどうする。危険な廃炉の人員はどうする。福島ではロボットすら入れず廃炉が進まないのだ。あらたに別の場所でそのリスクを引き受けるということは、よほどの覚悟がいると思う。それでも原発はお得なのだろうか。

 これまで人類に恩恵を与えてきた文明が、戦争以外で、ここまで強烈なオウンゴールを人類に食らわす。そんなことがこれまでの歴史であっただろうか。規模も影響も公害問題の比にならない大きさに思える。人類の勝率はどのくらいか。危険な賭けか。私の心配が後日「放射脳の杞憂」と嗤われるならば最良の結果だと思う。

 とりあえず、廃炉はメルトダウンの前に、さよならはダンスの後に(わかる人は古い)ということで。

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ひなまつりにまつわるエトセトラ

2017年03月08日 | 日記

◆航空自衛隊西部航空音楽隊定期演奏会

 3月3日は、ひなまつりとはまったく関係なく、福岡シンフォニーホール。今回のゲストは読響のテューバ奏者で、協奏曲を。柔らかく広い音域。過去の定期演奏会は、いかにものクラシックアワー的な曲が多かったが、今回は、20世紀後半以降の知らない曲ばかりだった。知っているのは作曲者のひとりジョン・ウィリアムスの名前くらいで。相変わらず端整な演奏。至福なり。

 楽章の間で拍手をしないきまりがある。福岡の演奏会では、福岡古楽音楽祭など、音楽大好きなマニアさんばかり来るようなところでは、誰ひとりとして楽章間で拍手するような人はいない。あとは観客のクラシック慣れにもよる。間口の広い自衛隊音楽隊コンサートだと、やはり楽章間拍手は出る。私は拍手はしないけれども、拍手する人に目くじらを立てたり、拍手する連れを恥ずかしがったりする必要はない。楽章間で拍手しないことになった歴史は結構浅いのだから。

 

◆しでかしちまった悲しみに

 同じ時間、博多駅JR九州ホールではベッキーのトークショーが行われていたらしい。去年は天中殺と大殺界と厄年が一緒にやってきたようなベッキーである。恋人と仕事と人気とおそらくはお金を失った。不倫の相手が突っ込みどころ満載のまさにゲスな野郎だったから比較的復活はしやすいと思う。再出発する人を応援、というような広告文で、博多駅ビルのこの春のイメージキャラクターになることもできたのである。

 私としては結構好感度高いのだが、採用には賛否両論あったらしい。妻子(夫子)持ちと恋愛するメリットって何よ? せいぜい相手と結婚「しなくて済む」くらいしか思いつかない。世間バレしたら非難が待っている。

 損得勘定がぶっ飛ぶのが恋なのであろう。恋してそのあとから妻帯者と知らされてそれでもやめられなかったのだ。明らかに損なことをしでかしちまった。

 

◆ままならないのも人生の味わい

 Charの「気絶するほど悩ましい」という歌に、うまくいく恋は恋ではないみたいなフレーズがあって(小心者の私は、歌詞を引用しない)なんじゃそりゃ?意味わからんと、少女MTJは思ったのであるが、今ならわかる年の功である。

 計算通り(はい、ここで、思いっきり怖い顔で笑ってね、夜神月)戦略通りの人生は、どのように楽しいだろうかということである。ままならぬこともまた人生の味わい、と思うのである。これもまた人生の味わい、と、言っていられる程度の辛酸しか味わっていないので、言えるのかも知れない。

 とはいえ、配偶者に同時進行恋愛をやられたことのある人のなかには、いまだにベッキーを見るのも嫌だと思う人もいるだろうね。

 

◆西鉄電車「水都」

 西鉄8000系電車、柳川観光仕様にした「水都」が運行されているが、今は、中吊りに「さげもん」が飾ってある。オーナメントの実物である。「さげもん」とは女の子の成長を願って、小さな縫いぐるみをつないで竹の輪にぶら下げた飾り物である。雛人形を買えない家庭で手作りされ、裕福な家庭では段飾りをさらに豪華に飾るために作られたらしい。この時期は、柳川では商店街の店先にも飾られている。オーナメントには、ひとつひとついわれがあって、元気に、美しく、賢く、と、願いを込めて手作りされている。もちろん市販もされている。ケース入りのミニチュアから、結構なお値段で、どかどかっとしたものまである。

 段飾りは、置き場所や、段を組み立てるとか、片付けるとかが大変だから、見栄えもよく、結構簡単に片づけられそうな「さげもん」は、これから全国的に普及するのではないか、と思ったりする。

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昭和は遠い

2017年03月03日 | 物見遊山

◆堀北真希引退

 朝ドラヒロイン「梅ちゃん先生」が代表作になるのかも知れないが、例によって見てない。映画「三丁目の夕日」の鈴木オート(町工場。社長は堤真一で、特撮を使って怒る)の東北出身住み込み自動車修理工の六ちゃん(原作漫画では少年)。特にシリーズ最終の「三丁目の夕日'64」の、恋する乙女が印象的である。昭和ノスタルジー映画ではあるが、堀北の可愛さを鑑賞するだけでも、この映画を見る価値はある。

 

◆ムッシュかまやつ氏死去

 昭和がどんどん遠くなる。 

 

◆「写真家 片山攝三 肖像写真の軌跡」展

 福岡県立美術館。

 会場は銀塩写真の匂いがする。暗室の匂い。写真を「焼いて」いた時代。

 芸術家の有名人の肖像写真多し。坂本繁二郎の筆を持つ手とか。まだ若い香月泰男とか。片岡球子は壁に大きな紙を貼り、幼い娘に書きたい放題クレヨンで落書きさせている。写真は人の魂を抜いたりはしないが、人の魂を写し取ることは可能である。タイミングをつかめば。

 3月20日まで。入場料は大人300円。

 白黒の銀塩写真(←デジカメ以前の普通の写真のことである)は、中学生の小遣いでもなんとか趣味にできる、あまりお金のかからないものだった。フィルムの現像は、ABS樹脂のタンクに入れて、調温した現像液停止液定着液と、時間を測って入れていく。よく水洗いして水滴防止剤をつけて乾かして、光に当たらなかった部分が素通しになったネガフィルムのできあがり。光の当たらなかった部分は暗室で、感光する薬剤が塗ってある印画紙上に引き伸ばし機で像を結ばせ、また現像液停止液定着液と水洗い乾燥。

 今は、銀塩写真は、見開きの印刷ページに使うことを目的として、 ほとんどカラーリバーサルしか使わなくなった。高画質が欲しければ使わざるを得ない。カラーリバーサルの現像所は少ないので、時間がかかる。

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