内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

NHK受信料の義務化と放送枠の大幅自由化を支持 (その1)

2016-10-10 | Weblog

NHK受信料の義務化と放送枠の大幅自由化を支持          (その1)

 自民党情報通信戦略調査会の放送法改正に関する小委員会は、9月24日、NHKの受信料を契約の有無に拘わらず支払いを義務化する提言をまとめたようだ。NHKの受信料の世帯支払い率は全国値推計で75.6%(2014年度末現在)と低い上、家庭訪問などの徴収コストが735億円(2015年度予算、受信料収入の10.7%)にも達しており、徴収コストが膨大なことに加え、4分の1近くが未払いとなっていることが問題視されている。

 このようなことから、同小委は、不払い者に対する罰則(英国BBCの例)やテレビの有無に拘わらず世帯毎に徴収(ドイツ公共放送の例)などを参考にして、受信料義務化を検討するよう提言している。

 NHK受信料の徴収コストが巨額な上、世帯不払い率が全国で4分の1に達している状況は速やかに是正することが望ましいので、徴収コストが掛からない形での受信料支払いの義務化を支持したい。

 しかし義務化の前に、公共放送としてどのような番組を放送すべきかなどを精査することが不可欠ではないだろうか。

 1、「公共放送」として維持すべき放送事業とは

 視聴料を義務化して全国的な「公共放送」を維持するということであれば、事業の範囲を、そもそもの原点に立ち返りコマーシャル・ベースでは困難な文化・教育番組(幼児向けや老齢者向けやコミュニテイ活動を含む)と報道番組(日本語海外放送を含む)、国会中継や地方議会中継などを中心とすると共に、ドキュメンタリーや歴史的、地理的、社会的な取材番組、史実に則った長編ドラマや伝統的芸能文化・工芸など、芸術性の高い番組と放送技術に関する研究・開発など、製作コストや視聴率を余り気にせず、コマーシャル・ベースでは困難で、興味ある質の高い番組に特化して行くべきではなかろうか。

 このようにすれば、「公共放送」の事業費は例えば現在の2分の1から3分の1程度の規模でも十分であろう。それでも年間3,500億円~2,400億円程度の事業規模であり、TBS、日本テレビやテレビ東京以上の放送事業となる一方、視聴者負担を大幅に軽減出来る。

 その他の事業については全て止めるということでは決して無い。その他の分野については、緊急時や災害時については適切な形で割り込めることを条件として、時間帯を民放や地方放送局などに委託や売却するなどで自由化することが望ましい。チャンネルを1つに統合して行うことも選択肢となろう。

 そのような形で、全体として事業規模や事業内容の見直しが行われても良い時期ではなかろうか。放送事業に参入を希望する企業家は地方にも多く、放送枠の自由化により放送事業が活性化し、地方ベースの放送関連産業や芸能産業が発展することが期待されると共に、地方それぞれの工夫や特性を生かし易くなり、地方の発信力が高まり、若い世代にも活躍の場が提供出来るものと期待される。若い世代も引き付ける地方活性化のためにも、NHK放送権の分権化が必要なっているのではないだろうか。

 なお地震、台風その他の緊急な放送については、公共放送の大きな役割であり、自由化された時間帯においても放送出来るようにすべきであろう。しかし携帯電話やインターネットを通じる媒体が多様化している今日では、緊急時に多くの人がNHK以外の放送やインターネット・サイトを見聞きしている可能性が高いので、インターネット・携帯電話での配信がより重要になっていると言えよう。しかしそのような媒体は、児童、年少者も使う可能性が高いので、NHK「公共放送」の受信料を課すのは適当ではないのではなかろうか。

 NHKは、戦後のTV事業の発展や娯楽・情報の提供など、特に地方で果たして来た役割は大いに評価される。しかし今日では、民放も大きく発展し、TV以外の娯楽も豊富となり、外国衛星放送を含め番組選択の範囲も飛躍的に拡大するなど、放送事業発展への役割はほとんど果たされている。従って民放で頻繁に放送している芸能・娯楽番組に類似する番組や、視聴率が極めて低い番組などは、視聴者に負担を掛ける公共放送としては必要性がなくなっていると言えると共に、民放や地方テレビ局の発展を圧迫しているとも言えよう。

 2、英国の国営放送BBCも巨大化から事業規模縮小に転換

 英国の国営放送BBCは、2010年以降、1990年代よりの拡大路線から‘事業量削減、質の向上’路線に転換を図っている。具体的には、コメディー番組、バラエティー番組の削減、海外からの番組購入費の20%削減やスポーツ放送権の上限設定、ラジオ2波の削減、ウエッブ半減、一部出版事業からの撤退などを行う一方、ニュース、子供番組などを質量共に充実させている。

 その理由は、‘景気後退による家計収入の低下、不動産市場の崩壊’とそれに伴う‘民放放送の広告収入等の減少’であり、国民のBBC巨大化への反発であった。

 日本と英国では文化的土壌や放送分野での歴史、人口などが異なるので、一概に対比は出来ないが、BBCが巨大化路線を転換せざるを得なかった経済的、社会的背景は類似するところがあり、また民放や国際衛星放送が飛躍的に発展した今日、娯楽番組等を縮小し、報道や子供教育等の質の向上を図るという方向性も参考にすべきであろう。日本も時代の変化への対応が急務となっているようだ。

 3、受信料徴収の義務化と徴収コストの削減     (その2に掲載)

(2015.11.25.) (All Rights Reserved.)


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