夕庵にて

スマホでパチリ・・・
ときどき写真と短歌を

『生きるぼくら』

2024年03月20日 | 
『生きる僕ら』 原田マホ著  徳間文庫

いじめからひきこもりとなった24歳の麻生人生。
八ヶ岳の自然、離婚、認知症まで
現代の世相を巧みに取り入れた小説。

残されていたのは年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。
「もう一度会えますように。私の命があるうちに」
マーサ婆ちゃんから?人生は4年ぶりに外へ。
祖母の居る蓼科へ向かうと予想を覆す状況が待っていた。
人の温もりに触れ、米作りから大きく人生が変わってゆく。 (解説より)

婆ちゃんが孫に見せたい風景があると連れ出したのが、
なんと御射鹿池だった。
新緑の溢れる緑を映す鏡のような湖面、
そこに現れた幻のような一頭の白馬。
東山魁夷の「緑響く」のスケッチの原点。
婆ちゃんと孫(人生)の夫々の思い。
二人の後ろ姿を靄が優しく包む。

この場面に心騒いだ!!
私も数年前にこの御射鹿池に惹かれて
蓼科を訪ねたのだった。
緑の季節では無く紅葉の時季ではあったが、
池は黄金の静かな静寂に包まれていた。
心の隅に白馬がす~と現れて消えてゆく。
その白馬についておいでと
道案内をしてくれるような錯覚を感じたものだった。

引きこもりの青年が蓼科に祖母を訪ね農業に携わり
自立してゆく課程をドラマチックに仕立ててあった。
最近には無い感動の物語。

◎ 録画を見た。山田太一のドラマ追悼番組
『今朝の秋』
余命3ヶ月の息子と蓼科に住む老いた父
ある日病院を抜け出して二人で父の住む蓼科へ
八ヶ岳の山並み、木々の緑、小鳥のさえずり
若い時代を過ごした自然を満喫する息子。
都会に住む母親と息子の家族も訪ね来てひとときの夏を楽しむ。

紅葉の美しい風景の中での息子の黄泉への旅立ち。
「家族はいいな~」と涙を流す息子の言葉が胸に響く。
残された人たちは夫々の道をまた歩き出すのだが、
新しい家族の構築が暗示されている。
ここでも蓼科という場面があり深夜まで見てしまった。
笠智衆の台詞の少ない言葉には、いつもながらの哀愁が満ちていた。

数年前、蓼科を訪ねたときは紅葉の季節だった。
泊まったホテルで買ったベージュのニットのジャンパーを
思い出して着てみる。
あのときの想い出が浮かんで懐かしい。

山田太一
小説家、脚本家
「ふぞろいの林檎たち」
「岸辺のアルバム」 「男たちの旅路」
名作を残して残念な旅立ちであった。

サンシュユの花


早くもユキヤナギ
   
ローズマリー
    

 
コメント (2)
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