“六十数年前、私が小学校低学年だった頃、夏休みになると名古屋市千種区の実家近くの空き地で一夜限りの映画が無料で上映されました。現代とは違って娯楽が乏しかっただけに、私はいつも開催を心待ちにしていました。
日が暮れてくると家からござを持参して友達と一緒に場所取りをしました。空き地にあふれるほどの人が集い、後方しか空きスペースがないことがありました。やむなく映し出されるスクリーンのすぐ裏側に陣取ったこともありました。上映された作品は時代劇や戦争物が多かった気がします。中でも第二次世界大戦中の現ミャンマーを舞台にした「ビルマの竪琴」では主人公の日本兵が現地で僧侶の格好をして肩にインコを乗せた場面が印象的でした。
今でも野外での映画鑑賞会がどこかであると聞くと妙にワクワクして、あの夏の夜の楽しさがよみがえってきます。”(9月8日付け中日新聞)
愛知県稲沢市の自営業・車館さん(女・74)の投稿文です。また懐かしい話を話題にしました。名古屋市千種区は今は都会のど真ん中ですが、60年前はどうだったのでしょう。ボクのところと似たような田舎だったのでしょうか。こうした話など、こういう話を聞かなければ思い出すこともありません。車館さんは私と全く同年代、同じような思い出が語れるのは楽しいことです。
ボクのところでは中日新聞のサービスだったと思っています。神社の鳥居にスクリーンを取り付けます。多分ただの白い布だったと思います。そして暗くなると映画が始まります。境内は人の山です。鞍馬天狗や日清日ロの戦争映画を覚えています。映画館など行く機会もなく、また普通の家庭にテレビはありません。夏休みばかりでなく、年数回あった気がします。大きな楽しみでした。
単に時代の違いと言ってしまえばそれまでですが、それを知って今更どうなるのだと言われると答えようもありませんが、人間は思い出の中に生きています。そして人の歴史は連綿と続いています。一朝一夕に今があるわけではありません。そうした時代の人に思いをはせられるのも、人間の心の広さ、優しさではないでしょうか。