吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

おそろしい本

2015-10-14 23:31:14 | 日記
文春文庫から出ている、森下典子さんの『いとしいたべもの』は、非常におそろしい本です。

森下さんの、食べ物にまつわる思い出、思い出の食べ物が
色や味、匂いや噛み応えなど、実にいきいきと(いや、生々しくの方が正しい)表現されているのです。

絵本のように、読みやすく、懐かしい「昭和」の香りがする文章は、「巧み」としか言いようがありません。

更に、森下さん自身が描いた、挿し絵がすごい。
「上手」だけでは言い表せない。
食べ物への思い入れや愛情のなせる技なのでしょうか。

お母さんが作った醤油ラーメン、オムライス、塩鮭
海苔の佃煮、サッポロ一番みそラーメン、どん兵衛
メロンパン、たい焼き、カステラ、水羊羹...。

まるで、森下さんが直接語りかけているかのような気持ちになってきます、

そして、この本の恐ろしいところは
『読んだら食べたくなる』ところです。

実際に、我慢できずに、早速買ってきて食べてしま ったものもあるし。

今は、懐かしい「昭和」の時代と違って
今は、家を出て数分歩けばコンビニがあって
パンもお菓子もお弁当もどん兵衛も簡単に手に入ります。

でも、あまりにも簡単に手に入ってしまうので
食べ物に対する、強い思い入れもないかもしれません。

直ぐに手に入ってしまうから
食べたら、満足して忘れてしまうから。

もっと、食べ物に感謝しなくちゃ。

便利というのは、どこかつまらないものなのかもしれません。