吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

良い例、悪い例

2013-01-29 23:04:25 | インポート
私の勤め先のお店は、何故かせっかちさんが多い。

ちゃんと並べない、順番が待てないなんていうのは序の口で
何故だか分からないけど、とにかく「早く」お会計を済ませたい人が多い。
こっちも、のろのろダラダラやっている気はないけれど
その時の混み具合や、その人が購入した品物の個数によっては
やはり、時間がかかってしまう場合もあります。
もちろん、そういうときは
「少々お待ちくださいませ」とか
「申し訳ありません、大変お待たせしております」とか
お客さまにお断りをするようにしています。

そんな状況を見て「これは、仕方がないよね」と、理解してもらうか
待つのが嫌なら、購入しないという判断をするのもアリ。

しかし、せっかちなお客様は、せっかちなのに、待つ。
そして、怒る。

その頭の中に、混んでいるんだから仕方がないよねとか
忙しいときはお互い様だよねという気持ちは、微塵もありません。

今日、裏で作業をしていたら、販売を担当していたスタッフが
「レジをお願いします!」
と、やや焦り気味で、私を呼ぶ声がしました。
急いで前へ出ると、レジの前に女性が1名。
その後ろに、中年の男性と年輩の男性が並んでいて
その向こうに、接客中の販売スタッフの姿がありました。
混んでいると言うほどの状況ではありませんが
販売スタッフは1名なので、レジが打てない状態です。

取り敢えず、一番最初に並んでいた女性のお会計を済ませ
商品をお渡ししている途中で、接客を終えたスタッフがフロントに戻り
さて、次のお客さまのお会計を…と
「大変お待たせ致しました」
と、次に並んでいた中年の男性に声を掛けると
「おいっ!」
いきなり、大きな怒鳴り声がしました。
声の主は、今お会計をしている男性の後ろにいる年輩の男性でした。
「一体、いつまで待たせるんだ!
 余計な事してないで、さっさと会計しろ!」

余計な事…?
あの、順番通りにお会計をしているんですが、なにか?
しかも、あなたの順番は次ですけど?

スタッフの性格上、一番先頭に立っている女性を待たせた段階で
私を呼んでいる筈です。
(中には、かなりお客さまが並んでも助けを呼ばない人もいます)
ですから、年輩の男性は、待ったとしても5分と経ってはいないと思うので
確かに、お待たせしてはいますが、なにも怒鳴るほどのことでは…。
と、思うのも、こちらの勝手な都合なのかもしれませんが。

「申し訳ありません、次のお会計になりますので」
スタッフが、笑顔で応対しました。
でも、年輩の男性の怒りは治まらず。
「なにやってるんだ!全く!」

なにって、仕事してますけど?

その時、先に並んでいた中年の男性が振り返り
年輩の男性に向かって、穏やかな口調で言いました。
「お急ぎでしたら、お先にどうぞ」

むっときた様でもなく、うんざりした様でもなく
静かな笑顔の、穏やかな口調。

「あっ!いや…
 先に待っておられたんですか!
 これは気が付かなくて」

えええええーーー!!
見えなかったんかーい!?

私たちは、唖然としました。
ぶっくりし過ぎて、一瞬なんと言って良いか分からなくなったほどです。

「いえ、僕は急ぎませんから、どうぞお先に」
「いやいや、私もそんなに急いではいませんから」
年輩の男性の態度の変わりように、私たちはまたぶっくり。
順番を譲り合うのも結構だけど、このまま放ってもおけません。
私は、先に並んでいた男性に声を掛けました。
「では、お会計をしても宜しいですか?」
すると、本人よりも先に、年輩の男性が言いました。
「はい、どうぞ、どうぞ」
しかも、気まずさを誤魔化そうとしているのか、満面の笑顔。
私も満面の笑顔を、年輩の男性に返しました。
が、本音は次の通りです。

どうぞ、どうぞ、じゃねーよ!
アンタの順番は最初から次って決まってんだよ!

こうして、無事に順番通りにお会計を終えることができました。

作業室に戻った私を、追い掛けるようにスタッフがやってきて
鼻息も荒く言いました。
「なんなの?あの人!」
「前見えて無かったんですかね?
 目の前に人が並んでいるのに、気が付きますよね?」
私も不愉快さ丸出し。
「絶対あの顔忘れないわ!」

私たちに顔を覚えられたからといって
年輩の男性は、なんの不利益もないとは思うのですが
それが分かっていても、言いたい時もあるのです。

短気は損気。
そもそも、下らないことで(しかも勘違いで)何を騒いでいるんだか。
滑稽で、みっともない。
恥ずかしくて、イタイ。

絶対にそうあってはならない、悪い例と
常に、こうありたいという、良い例を
今日は、目の前で同時に見てしまいました。

ところで、彼は本当に、目の前の中年の男性が見えなかったのだろうか…。