LONDON TOWN(1978 Wings)
制作途中でジミーとジョーが脱退、リンダが産休。そのせいかあらぬか、前作『WINGS AT THE SPEED OF SOUND』のような暴挙もなく、『BAND ON THE RUN』や『VENUS AND MARS』みたいなメジャーヒットするタイプじゃないけど、落ち着いていてなんともいい感じ。
ある意味、ここまでのウイングスのアルバムでいちばんいい出来かもしれない。
エンジニアには再びジェフを起用。
タイトルナンバーや同時期のシングル『Mull of Kintyre』をはじめ、イギリス、スコットランドをテーマにした曲が多く、ポールの愛国者ぶりが伺える。
なのにリバプール空港は、イギリスを捨てた“ジョン・レノン”空港なんだよなあ(故人だから仕方ないけどね)。
01 London Town
デニーとの共作。ひたすら同じ音が続く不思議な歌だが、妙に心地いい。地味だけど味がある、ポップともロックともつかないポールならではの曲で、このアルバムのイメージを象徴しているかのようだ。プロモビデオのポールの帽子とチャチなセットは笑ってしまう。
http://www.youtube.com/watch?v=S65nKsTiQzM
02 Cafe on the Left Bank
ロンドンの次はパリ。英語を喋る人たちがドイツのビールを飲んだりと国際色豊か(?)。
03 I'm Carrying
ガットっぽい不思議な音のギターが印象的な、シンプルで可憐な曲。2分目のあたりで一旦曲が止まるが、そこで本当に終わっとけばもっと締まったのに。
04 Backwards Traveller
小気味よい小品ロック。あっという間加減がミソ。次の『Cuff Link』とメドレーだと思ってたらクレジットは別々だったが、この2曲についてはメドレーというより二つで1曲という認識でいいと思うけど。『なつかしの昔よ』という妙な邦題がついていたとは知らなかった。
05 Cuff Link
上記の通り、インストロメンタルだが『Backwards Traveller』の後半部分だと思えば、無理なく聴ける。
06 Children Children
デニ-との共作でボーカルもデニー。子ども讃歌とでもいうか、タイトル通りののどかな曲。バイオリンを弾いているのはポールなんだとか。何でも弾く人やな(これくらいならオレでも弾けんことはないような気がするが)。
07 Girlfriend
後の『So Bad』にも見られる、ポール得意のほぼ全編ファルセット。「ディルダリ~バ~、ストッスダフロ~イン…」のところだけ地声を張り上げて歌ってるのがかなり効果的。マイケル・ジャクソンのために作ったとされてるけど、収録時期から見て、既存曲からマイケルに合いそうなのを提供しただけじゃなかろうか。
08 I've Had Enough
オーソドックスなロックンロール。ヤクザなノリが小気味よく、終わり方も潔い。『別れの時』という変な邦題がついていたとは知らなかった。
09 With a Little Luck
なんちゃないけどなんかいい、しかしなんか長いポップソング。途中から絶叫スタイルになるボーカルはさすがだが。3分40秒あたり、間奏の前のトーンダウンするところで終わっとけばもっと締まったのに。
http://www.youtube.com/watch?v=9XViNAoCq-k
10 Famous Groupies
焚き火を囲んで酋長が語る伝説を聞いているような、不思議な雰囲気の曲。「デ、ワ~ザクラ~シッスト~リ~」のところから俄然張り切り出すベースが面白い。エンディングもカッコイイ。
11 Deliver Your Chirdren
デニーの子どもシリーズ第2弾。第1弾とはガラッと変わってマイナー調。「(ユベラ)ティン、ゴ~ズロ~ン」のところのコーラスが同じ歌詞ではなく「ア、ア、ア~」とやってるところが、ちょっと珍しい。
12 Name and Address
ポール十八番の隠し芸「プレスリーのものまね」。オールドタイプの小粋なロックンロールで、リバーブバリバリ。2番の「ミンホワイラムシティンヒ~ア」の“meanwhile”のところ、ポールは間違って(?)“And while”と歌ってると思うのだが、そのテキトーさ、中途半端な終わり方も良い。う~ん、サイコー!
13 Don't Let It Bring You Down
デニーとの共作で、トラディショナルというのか、これも不思議な曲。得意のオクターブ唱法だが、特にこの曲でのファルセットは冴えているなあ。『ピンチをぶっとばせ』という、ウケ狙いとしか思えない邦題がついていたとは知らなかった。
14 Morse Moose and the Grey Goose
『BAND ON THE RUN』の『Ninety Hundred and Eighty Five』っぽい雰囲気の曲。『Morse Moose』と『Grey Goose』の二つのパートの組合せ。怪しいけどダイナミックなアレンジが、同じアルバムのエンディングとして『1985』的な印象になってるんだろう。曲の最後に「バ~ド~ンダラ~ン」とやるんじゃないかと、ちょっとヒヤヒヤする。
***CD版ボーナストラック***
15 Girls' School
1977年リリースのシングル。イギリスでは次の『Mull of Kintyre』と両A面扱い、アメリカでは『Mull of Kintyre』がB面だったそうな。とってもポップなノリで、イカした曲。新聞のポルノ記事の見出しを歌詞に引用したとかで、邦題をつけるなら『女学園♥(←ハートマーク)』といったところかな。
16 Mull of Kintyre
ポールの故郷讃歌(生まれ故郷はもちろんリバプールだけど)で、デニーとの共作。ビートルズの『She Loves You』の売上記録を塗り替えたことは、大ヒットに気を良くしたポールがバグパイプ奏者にボーナスを支給したという逸話とともにあまりにも有名。日本人にも覚えやすいシンプルなメロディだが、原題が日本人には馴染みにくい発音(小林克也は「ウマノキンタマ」などと言っておった)なので、『夢の旅人』という邦題をつけたのは、珍しく正解(相変わらず意味は不明だが)。アメリカ人にはウケんだろうなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=GFRcMYjut4o
(つづく)
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