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雑感録

これがぽ~ちゃんだ その2『RAM』

 
RAM(1971 Paul and Linda McCartney)

出た~っっっ! ソロ2作目にしてポール節全開!とまではいかないが、あまりに趣味的すぎた1作目から比べたら、はるかにポップではるかにロック、はるかにマトモ。
今回はリンダとの連名でリリースしているが、一部、後のWINGSのメンバー、デニー・シーウェル(Dr)やセッションミュージシャン、オーケストラも起用し、サウンド的にちょっと荒削りな面も感じるが、しっかり作り込んで厚みもある。
しかし、全体を通して不思議な哀愁を帯びてるというか、明るい曲さえもどこかもの悲しく響き、聴き終わるとなぜか胸がキュンと締め付けられて、涙が出そうになるんだよなあ。
そのせいかあらぬか、発売当時は酷評されまくったらしいが、今ではこれをポールのベストに挙げるファン多し。
ポール自身も相当気に入っていたのか、'77年にパーシー“スリルズ”スリリントン名義でオーケストラアレンジ盤をリリース。
BGMで聴くにはけっこうおもしろい。

01 Too Many People
下降するギター・リフに『ディッソ~ケ~ヘ~エヘ~エヘ~ヘ~』。いや~、『RAM』的に最高のオープニング。力を入れたり抜いたりのボーカルも秀逸で、ギターもか~な~り印象的。詞は次の『3 Legs』とともにジョンを批判してるとかで、ジョンは『How Do You Sleep?』で応酬、ポールも次作でさらにお返しと子どものケンカ状態になるが、先に手を上げたのはポールだったんだ?(実はジョージも『ALL THINGS MUST PASS』で『Wah-Wah』というポールをあてこすった曲を作っていたりするのだが)

02 3 Legs
シンプルだけど、やっぱ『McCARTNEY』のときの感じとはぜんぜん違うよな。リンダの投げやりなコーラスもこの曲のムードにはぴったり。「ウェ、フェナイト~ッ、フェナイト~ッ、フェナイト~チュワズマイフレン」の部分はボーカルにリバーブがかかってるが(2番も)、前述のジョンへのあてつけとはこの辺のことかな? 声質を変えて「え~、ボクが言ったんじゃないよ~」とごまかそうとでも思ったのだろうか(んなことないない)。

03 Ram on
ここまでの3曲は『RAM』の印象を決定づける、独特の不思議な曲揃い。特にこの曲はポールお得意の小品で(『3 Legs』も小品だが、どっちかというと“珍品”?)、低音域の地声ボーカルとウクレレの響きがステキだ。ちなみに、3番の「サンバ~リ、ス~~ン」のところで、片チャンネル音が小さくなる。貸レコードから録音したテープで聞いてた頃はテープが悪いんだろうと思っていたが、CDでもおんなじだった。それってミスちゃいまんの?

04 Dear Boy
ここで前3曲からの流れを切って、フツーのポップソング登場。曲そのものものについてもホントにフツーで、あっという間に作ったんじゃないかと思える軽い曲だが、次の大作に行く前の箸休め的な意味では欠かせない。前曲から一転してキーが高いというか、全体的に高音域で歌ってるが、リバーブがかかったようなボーカルは、ひょっとしたら再生時の回転数を上げてるのかも。最後の「ハ~ウマッチ、ユ~ミスツ、ディア~」でじわじわしゃがんでいって、「ボーーーーイ」で飛び上がって終わる。複雑なコーラスがおもしろいが、リンダの声がおもしろさを当社比20%ダウンさせている。

05 Uncle Albert/Admiral Halsey
まず「ウィッソッソ~リ~」と謝って、「ハ~ンザクロスダウォラ~(ウォラ~)」「アドミラルハ~シ~、ノトファイミ~」「リルリルビ~アジプシ、ゲララ~ン(ゲララ~ン)」と続き、「ハ~ンザクロスダウォラ~(ウォラ~)」に戻って「ウウウ~ウ~」と去っていくという、クレジットは2曲のメドレーだが、実に複雑な構成の曲。しかし、つなぎは流れるようで無理がなく、ボーカルも地声からファルセットまで変幻自在。「く~っ、たまらん」「か~っ、いいねえ」の連続だ。アメリカでシングルカットされ、ビルボードで1位を獲得。1972年度のグラミー賞で最優秀編曲賞、最優秀歌唱賞を受賞した、ポール・マッカートニー面目躍如の名曲だっっっ!

06 Smile Away
レコードだったらA面を締めくくるノリのいい曲という位置づけなのだが、CDになったことでA面、B面の境がなくなって、意味合いが薄れている。レコードをCD化するときには、A面ラストとB面頭の曲間を他よりちょっと長めにとってくれればいいのにと思うのだが。この曲も「ゴーナハ~バグ~ラ」他のコーラスが面白いが、リンダの声で減点20ポイント。

07 Heart of the Country
レコードだったらB面に軽く滑り込む、しっとり味のあるフォーク調の小品。力を抜いた軽いボーカルがなんともいいし、「アネバネバミミオマー」のスキャット(?)もおもしろい。ちょっと無理のあった『MCCARTNEY』の頃を経て、本当の意味で田舎暮らしを楽しめるようになったのかなってのはゲスの勘ぐりか?

08 Monkberry Moon Delight
ポール絶叫のドラッグソング。この不思議なノリは好きだな。イキっぱなしのポールのボーカルに、妙に冷静なリンダのコーラスが不気味にはまってる。『3 Legs』とこの曲に関しては、リンダの貢献度120%。特にその「パンパ~ンパンパ~ンパン」のコーラスのところなんだけど、もう記憶があやふやだけど、確かNHK『みんなのうた』で研ナオコが歌った『アスタ・ルエゴ~さよなら月の猫~』って曲に似てねえか?(てか、『アスタ・ルエゴ』の方が後発やけど、全体の曲調や“月”という言葉とか、盗作とまでは言わないにしても、かなり意識してると思うんですが)。

09 Eat at Home
サクサクっと書いて、サクサクっとレコーディングしたなって感じの1曲。歌い方はポールがよくやるプレスリーっぽいってやつ。日本ではシングルカットされたらしいけど、シングルにするほどの曲ではないと思うのですが…。『出ておいでよ、お嬢さん』って邦題もないやろ。

10 Long Haired Lady
2曲を1曲にした作りだそうで、けっこう手の込んだ曲だが、これで6分はちょっとくどいぞ。特に「なめとんのか」と言いたくなるようなリンダのコーラス。バックの大正琴みたいな響きの音はいい感じなんですが、アレ、なんだろう? ギターかなあ。

11 Ram on
ポール得意のリプライズ。別テイクではなく、03のフェードアウト後をフェードインで入れているだけなので、うまく繋ぐと1曲として聞くことができる(実験済み)。ラス前にもってきてアルバムのトータリティを出そうという意図は、ちょっと『SGT. PEPPERS~』的か。後に『Big Barn Bed』となる曲の一節が「ちょっといい曲」として披露されている。

12 the Back Seat of My Car
これも2曲を1曲にしたのかなって感じで、コーラスもいろいろパターンを変えて凝った作りにしてあるが、そこまで凝るほどの曲ではないような気が…。アルバムのエンディングを飾るためにスケール感のあるアレンジを施したが、曲そのものが弱かったってとこだろう、大袈裟すぎるよ。使い方を誤らなければ悪くない曲なんだけどねえ。「バ、リ~スントゥ~ハダーディソ~ン」他の超低音コーラスはポール自身? オクターバーでも使ったのかな。コーダ部分のギターはアルバム1曲目の『Too Many People』のイメージか。

***CD版ボーナストラック***
13 Another Day
アルバムに先立ってリリースされた、ポールのソロ初のシングル。さすがにシングルとなると気合いを入れたか、ポップで切なく美しい、ポールならではの作品じゃないですか(“ソロ初”のアルバムと違って、という意味ね)。歌、コーラスから楽器選び、SEまで細かいところにもかなりこだわっているが、この曲の場合はこだわりが生きている。「そうさ~、そうさ~」と本人も言っているではないか。2回目のサビに入る前のバックの喧噪やエンディングの高揚感なんか、聴いてて逆に涙が出てしまう(これって、『RAM』全体の印象と似てる)。ちなみに、ソングライターのクレジットがリンダとの連名になっていて(アルバム中の何曲かもそうだけど)、リンダの作曲能力に関してひと悶着あったという笑い話付き。

14 Oh Woman, Oh Why
これこれこれこれ! 出た出た出た、ポールの絶叫ロックンロール! ねえ、やっぱポールはロックでしょう? 前述のシングル『Another Day』のB面としてリリースされた曲だが、B面曲ということであまり日の目を見てないのが非常にモッタイナイ! ボーナストラックってのはアルバムのトータリティを台無しにするので好きではないのだが、こういう曲が拾われるのは助かります。できればビートルズの白盤・黒盤みたいに、アルバムから洩れた曲を集めた企画盤を出してくれればいいのになあ。

つづく
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