(真昼の夢@夜間瀬~信濃竹原間)
青空に光る雲が一瞬太陽を遮った。山を降りて行くゆけむり号の上に、複雑な形の雲が湧いている。急に陰られちゃったのでアンダー気味になってしまったのだが、何だかその分幻想的な青さが出た。この日の長電、午前中は引退する鯨電車を中心に追い掛けたのですが、昼からは本来の目的であるゆけむり号こと1000系をゆっくりと撮影する事が出来ました。いまさらそう新しいアングルもないのだけど、特に気張る事もなく衒う事もなく、シンプルに被写体にカメラを向ける時間というのは無心になれるというか、心のデトックスですよなあ。
午後の日差し穏やかな信濃竹原は、朝方降ってホームを覆っていた雪もすっかり溶けていました。「特急ゆけむりのんびり号」で湯田中に上がったS2編成が、その任を解かれて湯田中から回送されて来ます。通常時はゆけむり×1編成、JR253系のスノーモンキー×1編成の2編成で特急列車の運用を回している長野電鉄ですが、「のんびり号」が運転される日はS1・S2の2編成が出て来ますので、それだけ撮影する機会が増えるのは嬉しい事です。
信濃竹原では回送される「のんびり号」が定期ゆけむりと交換するシーンを見る事が出来ます。最初はパルプ踏切から並びでも撮ろうかと思ったけど、時間的に完全に逆光になってしまうので手堅く竹原の駅ホームから狙ってみます。2編成の交換シーンが狙って見れるのも長電ならでは。小田急時代、4編成態勢の時はあまり写真なぞ撮ってなかったし、2編成時代も「どこで離合するか」とかは新宿から小田原までの区間の中では良く分かんなかったですからねえ。
定期列車の合間を縫って、ゆっくりと須坂に戻って行くS2編成。少し西に傾きかけた日差しが美しく車体を照らします。回送列車ですから、展望席の乗客の身バレ的な所を気にする必要もないので久し振りに都住のストレートでガッツリと手元に引き寄せてカマしてみました。最近の鉄道車両のデザインってなるべく角ばらずに流線型に寄せているし、ライトがあまり主張して来ないというか顔立ちがハッキリしないような感じがするのですが、個人的にはメカなんだからもう少しシャープさというかボックス感?があった方が好みなんですね。クルマで言えばベンコラのセドリックワゴンとかクラウンコンフォートとかさ。そういう意味で昭和末期から平成初期の鉄道車両に現れてくるような、表情のメリハリがハッキリあって、かつボックス的なシャープさがバランス良く配されたHiSEのデザインってのは、見ていて飽きが来ないんだよなあ。
HiSEがロールアウトした1987年、同期の車両が「パノラマエクスプレスアルプス(国鉄165系改造)」とか「スーパーエクスプレスレインボー」なんて言われりゃ、その時代の流行りというか共通性にポンと膝を打つ人多いかもしれません。世は華やかなりしジョイフルトレインの全盛期、翌年の1988年にはJR651系「スーパーひたち」とか、JR東海のワイドビュー特急車両キハ85、そして今は長野電鉄で同僚となった営団03系がデビューしておるのですが、そう思うとこの世代の車両って、日本が「ジャパンアズナンバーワン」として世界を謳歌していたバブル経済華やかなりし頃のカネと技術を全て叩き込んだ結晶なんですよね。あんまり経済性とかエコとか合理性みたいなの求めてない。ひたすらラグジュアリーでコンフォートで、そしてスタイリッシュで・・・だからこそ今の車両にないカッコ良さがあるんだろうなあ。あれから30年余、斜陽となったこの国の甘い記憶だけを懐かしみながら、今日もHiSEは善光寺平を駆けて行くのであります。
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