青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

猫の手が 客を呼び込む たま電車。

2022年05月15日 12時00分00秒 | 和歌山電鐵

(東西の和歌山を結ぶ@紀勢本線・和歌山市駅)

加太の街ブラを終えて、和歌山市駅へ戻って来ました。ここからは、南海電車からJR線にお乗り換え。和歌山市街の西側にある和歌山市駅と、東側にあるJRの和歌山駅を繋ぐのがJR紀勢本線の和歌山支線。加太線ホームの隣から出ています。使われている車両は227系の2連で、JR西日本の標準型というフェイス。いつも思うのだが、JR西のこの系統の車両って連結部の転落防止幌が競走馬のチークピーシズにしか見えない。

和歌山市からJRの和歌山駅までは、電車で10分弱。紀勢本線・阪和線・和歌山線が乗り入れる県都・和歌山の中心駅。南紀方面の特急くろしおやら、紀州路快速が忙しなく発着している光景を、一番駅の外れにあるホームから眺める。以前は、和歌山市駅に対してこの駅は東和歌山駅と言われていて、現在の紀和駅が和歌山駅と言われていた時代があったのだとか。

そんな和歌山駅の一番駅の外れのホームから出ているのが、和歌山電鐵貴志川線。鉄道ファンには「たま電車」でお馴染み、と言えばいいだろうか。JR和歌山駅に接続し、元々南海電鉄の支線・貴志川線として本線筋から離れ小島のような形の路線でしたが、収益悪化に伴う南海電鉄の撤退の意向を受け、平成17年に地元和歌山市と貴志川町が音頭を取る形で引受先の存続会社を公募。岡山県の両備グループ(岡山電気軌道)が支援に名乗りを上げ、「和歌山電鐵」の名称で生まれ変わりました。

和歌山市駅を拠点とする南海本線とは接続がなく、南海との合併以降も何となく傍流的な立場を抜け切れなかった貴志川線。架線電圧も長らく600Vから昇圧されなかったせいもあり、南海本線で使い古された骨董モノのツリカケ車両が行き交うだけの路線でした。貴志川線は元々「山東軽便鉄道」として大正初期に敷設された地方鉄道。戦後は和歌山電気軌道(和歌山市内線)と合併し「和歌山電鉄」を名乗って和歌山市街の域内交通を形成していたこともあり、「和歌山電鐵」を名乗るのは二回目という事になります。

車体に踊る猫のキャラクター。「たまでん」なんて言われると、私のような関東モノは「東急玉川線・世田谷線」の緑色の電車を思い出してしまうのですが、こちらの「たま」は猫のタマ。違う意味での「たまでん」です。南海から和歌山電鐵へ転換される際、終点の貴志駅で飼われていた駅猫を駅長に抜粋するという奇抜なアイデアと、水戸岡鋭治氏のデザインによる「たま電車」の導入は、地方再生のシンボルとしてのメディアミックスによって「ねこ駅長」ブームを巻き起こしました。この貴志川線のリブランディングと和歌山電鐵の運営手腕が高く評価され、両備グループの総帥である小嶋光信氏は「地方交通再生請負人」の称号を確立するに至ります。

改札口で初老の駅員氏から一日フリー乗車券を購入し、ホームに停車していた貴志行きの電車に乗車する。「たま電車」に一歩足を踏み入れると、そこには既に和歌山電鐵と水戸岡鋭治氏が作り出す独創的なファンタジスティック・ワールド。車内の本棚も、木のベンチも、連結部の暖簾も、普通に電車として走らせるには不必要なものばかりですが、そこかしこにあふれ出すギミックの数々が、この電車を特別な存在に押し上げています。鉄道ファン的にはメルヘンチックに寄せ過ぎているような感じも受けるのですけど、これこそが和歌山電鐵を再生に導いたメソッドの一つなのでしょう。


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