青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

緩やかに 午後の日射しの 差す駅で。

2021年12月18日 17時00分00秒 | 伊予鉄道

(味が染みた100年駅舎の壁@松前駅)

郡中線、市駅に戻りながらどこかで途中下車してみようという事で、線内でも一番歴史のある駅舎が残っているという松前(まさき)駅へ。松前だと「まつまえ」と読んでしまいそうですが、ここは「まさき」。前を「さき」と読む地名は国内にもいくつかありますが、ここ伊予郡松前町もその一つ。さりげなく難読ですよねえ。道後平野の西端に当たる松前町は、重信川の河口に港を持ち、古くから漁業で栄えた町です。

この駅舎がいつからここに建っているのか。ハッキリした事は分かりませんが、渋焦げ色の板塀に、南予鉄道時代からの鉄路の歴史を見る。駅舎の前に並べられた自転車やバイクが少し目障りのように思えるけれど、なに、この駅と郡中線がしっかりと地元住民の足として使われている事に他ならない何よりの証拠。駅舎は大きめの本屋と離れの宿舎?で構成されており、立派な瓦葺き。アルファベットで「MASAKI」と書かれた看板が車寄せに付けられていて、広々とした待合室のエントランスで乗客を待っています。

自動販売機で缶コーヒーを買い、コンクリートの土間が打たれた広い待合室で暫し松前駅の雰囲気に浸る。晩秋の午後、傾き始めた長い日差しが射し込んで来た。郡中線も日中は15分ごとの運転で、少し待っていればすぐ電車がやって来るのはありがたい。さほど無聊な時間を過ごす事もなく、電車を絡めたカットを撮る事に苦労はしない。

古レールできれいに組まれたホームの上屋。構内踏切で結ばれた2面2線のホーム。郡中港行きの電車が止まるホームの右側がかつての貨物側線で、以前は松前駅からも貨物輸送の取り扱いがあったと聞きます。松前の漁港から揚がった瀬戸内の海産物や農産品が、ここから松山の市街や郡中の街に運ばれていたのでしょう。漁師町だから、行商のおばちゃんも、トロ箱担いで松山や道後へ魚を売り歩いていたのかも。

ミカン色の電車が、午後の日射しと青空に素晴らしいコントラストを結んでくれます。パノラミックウインドウの大きな窓が、燦々と太陽を浴びて輝いている。古めかしい駅の雰囲気と電車に夢中になってカメラを向けていると、踏切を渡って来た中学生から「お疲れしゃーっす!」と突然声が掛かって、なんだか少し気恥ずかしかった松前の午後。みんなには分からんかもしれないけど、いつもの電車が走るとりとめもない普段の風景ってのが最高なんよ。

木造の窓の桟から眺めるホーム。「STATION MASTER」の看板の付いた駅長室に、いかにも古くからの主幹駅と言う風格もあり。郡中港で折り返した電車が、遅い午後の優しい空気の中を、ゆっくりとスプリングポイントを渡って松前駅に戻って来ました。郡中線で訪問出来たのはこの松前駅だけだったけど、なかなか雰囲気のいい駅でしたね。


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