青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

生徒諸君の足として

2019年09月16日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(出区回送@稲荷町~電鉄富山間)

9月一杯で引退が予定されている10020形。増結用のクハ175をくっつけた3連で、朝の不二越・上滝線の輸送力列車を担います。現在の定期運用は平日のみ、電鉄富山6:38→(上滝線・南富山経由605レ)岩峅寺7:13/7:25→(上滝線・南富山経由608レ)電鉄富山8:03を1往復するだけ。6:20頃稲荷町の車庫を出て、電鉄富山駅までの送り込み回送。もう引退までのカウントダウンに入った編成ですから、動いているシーンを収めるだけでも貴重な機会です。

そんな貴重な貴重な平日朝の定期運用。その姿を、沿線に出てゲバ立てて撮影・・・と最初は思っていたのですけど、今のところ沿線に展開するほどの天気でもない。いずれにしろ9月で引退となる名車。寺田で「観光列車フリーきっぷ」を購入していたこともあり、折角なので惜別の意味を込めてのお名残り乗車をしてみる事に。通学の高校生と通勤客が並んでいる板張りホームの稲荷町の駅に、増結クハ175を先頭に605レが入線します。【←電鉄富山】[モハ10025+モハ10026]-[クハ175(増結)]【岩峅寺→】がデフォルトの編成運用なので10020形の顔が拝みにくいのだが、輸送力列車と言う本来の目的を考えれば、それは已む無きことでしょう。 

朝の輸送力列車は、御多分に漏れず乗客の8割が高校生。1.5割が通勤客、そして私を含め若干名のマニア(笑)。基本ワンマンの地鉄電車ですが、この3連は車掌常務のツーマン運行となっていて、無人駅の多い上滝線で車掌氏は忙しなく車内を動き回っては検札をしドア扱いを行っていた。天井に一列に並んだ蛍光灯、目の細かい頑丈そうな金網の網棚。小さく窓の桟の上には座席指定番号が割り振られて、この車両が紛れもなく優等車だった事が分かります。

車内の高校生は、途中の布市駅までであらかたが下車して行き、その後は岩峅寺乗換えで立山町の高校へ向かう生徒がぽつぽつと乗車するのみの車内となりました。すっかり空いた車内を見れば、2ドアの間を転換クロスシートがズラリと埋める風景は壮観。そして日車ロマンスカーの車両らしいビニルの座席カバー。車内広告に掲載された「金太郎温泉」は魚津随一の名湯ですが、やるせないほどの広告の焼けっぷりが気になる。よくよく広告を見てみると、北陸自動車道の朝日ICから上越ICまでの間が未開通となっていて、どうやら昭和63年以前の広告である事が分かります(笑)。「連日豪華演芸!」だもんな。煽り文句が匂い立つような昭和だ。ちなみに金太郎温泉は塩分と硫黄分が濃厚に含まれた温泉で、温泉好きなら一回入って損はないと思う。

月岡付近の田園地帯を眺めつつ、ガタコンガタコンと輸送力列車が往く。この辺りは保線が弱いのか車両の揺れっぷりはハンパなく、車掌さんもよろめきながら車内を行ったり来たり。そう言えば3年前にも夏の富山に家族で来たことがあるのだが、あの時は富山の地鉄ホテルに泊まって、朝練でこの上滝線の3連運用を月岡で狙ったのだった。何度も言うけど地鉄ホテルの朝食バイキングはとても良い。2Fのレストランフロアから電鉄富山の駅を眺めつつ、イカの黒作りだのホタルイカの沖漬け(イカばっか)だのでメシをかっ込むのは富山の幸せなひと時であります。まあ、今回は節約の一環でお安いビジネス旅館泊まりだったけど、また泊まってみたいものだ。

稲荷町から約30分、終点の岩峅寺(いわくらじ)に到着。ホームには富山市内の高校に通うであろう学生が大勢電車の到着を待っていた。この電車が折り返して電鉄富山に到着するのが8時頃だから、上滝線を使って富山市内の高校に通うにはこの電車がちょうどよい時間帯になる。多客がゆえの3連対応なので、10020が引退した後は誰がこの輸送力列車を担当するのだろうか。増結クハは引退しないだろうから、本家14760に増結クハを連結しての3連対応だろうか。

車内にドドドっとなだれ込んだ学生たちは、めいめいに自分の場所を確保。イヤホンをして勉強に集中している女子高生、仲間うちとのお喋りに夢中な男子学生、部活の朝練の道具を持って、アクビしながらドア口に立っている下級生。あまり毎朝の電車の事に関心がありそうには見えないけれど、毎日毎日生徒諸君の通勤の足となったこの車両が引退することを、どれほどの生徒が知っているのだろうか。知っていたところで特段の感慨もないのかもしれないが・・・この10020のスジの一本前にはやはり輸送力列車としてダブルデッカーエクスプレスも走るし、マニアのおっちゃん的には羨ましいことこの上ない通学環境にあったことを、ちょっとでもいいから覚えて置いて欲しいものである(笑)。

 


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