青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

大権現 見つめるバトル いまむかし

2020年02月17日 17時00分00秒 | 高松琴平電気鉄道

(表参道石畳@金刀比羅宮参道にて)

登り始めた金刀比羅宮の参道。最初のうちは、緩い石畳にたまーに石段が挟まるような道の横に土産物屋や喫茶店などが立ち並ぶ娯楽色の強い雰囲気。有名なお寺や神社の門前によくある風景と言うか。個人的には地元の相州大山阿夫利神社の「こま参道」を思い出すねえ。神奈中のバス乗り場から大山ケーブルに向かうあの道の雰囲気。あそこは大山ゴマと豆腐だけど、こちらは讃岐うどんとしょうゆ豆。信仰が集まる場所というのは、そこに集まる人々のための道が出来て、街が出来て、文化が出来上がって行く訳ですが、「宗教・鉱山・温泉」は地方私鉄の三要素だと勝手に思っています(笑)。

休みも取らず階段を登って、ふと振り返ると琴平の街と讃岐山脈の前山に連なる山並みが見えた。結構登ったかなあと思いきや、これでまだ全体の1/3くらいだっつう事で先は長い。普段の運動不足の身にはツライ。明日は確実に筋肉痛になりそうだ。

ここでだいたい真ん中あたりらしい。「笑顔でしあわせ、こんぴらさん!!」という横断幕の前で、既に疲労困憊でへたり込みそうになっている自分がいる。山の下からケーブルカーとかリフトとか付けた方がみんな幸せになれていいんじゃないですかね、高尾山みたいに(笑)。

参道に並ぶ、こんぴらさんに勧進をなさった方々のご芳名。立ち止まって柱に刻まれた名前を眺めると、瀬戸内や大阪神戸の水産会社系を中心に北は釧路や南は枕崎まで、全国の漁業関係者の名前が並んでいます。あそこは出した、こちらはケチったなんて毛頭言うつもりもござんせんが、そこは神の道も仏の道も浄財の多寡というものによってのヒエラルキーというものは厳然としてある訳で、柱の大きさ小ささにその辺りがよく表れていますよね。船関係だと、岡山のナカシマプロペラがでっかいプロペラのモニュメントを納入してます。ナカシマと言えばヤマト発動機と並んで競艇用プロペラの二大供給メーカーでしたが、ナカシマって競艇のペラ作るの止めちゃってるんだってね。初めて知りました。

♪こんぴらふねふね おいてにほかけて しゅらしゅしゅしゅ 
♪まわればしこくは さんしゅうなかのごおりぞうずさん こんぴらだいごんげん いちどまわれば・・・

まるがめ競艇の締め切り音楽(笑)こと讃岐民謡「こんぴらふねふね」なんぞを口ずさみながら、リズムを付けて最後の石段を登る。ちなみに丸亀は締め切り1分前になるとBPMが上がって異常に焦らされるんだよな。民謡の「こんぴらふねふね」って、子供の頃は特に「さんしゅうなかのごおりぞうずざん」がさっぱり意味分からんで歌ってましたけど、今回金刀比羅宮にお参りする際に色々と文献を読んでいるうちに「まわればしこくは(四国を訪れたら)さんしゅう(讃州=香川県)なかのごおり(那珂郡)ぞうずさん(象頭山の)こんぴらだいごんげん(金刀比羅宮に)いちどまわれば(一回お参りしなさい)・・・」という歌詞の意味を人生折り返しを過ぎて知るのであった。こんぴらさんの所在地のことなのね。「ごおりぞうずさん」という人と金毘羅大権現に向かった、くらいにぼんやりと思っていたが。誰だよゴオリゾウズさんって。ロシア人か。

という訳で735段の石段を登り切り、金刀比羅宮の本殿前へ。マル金マークの提灯が出迎えてくれました。そこそこ速足で下から40分だったけど、心臓バックバクだわ。時刻は午後4時。まだ社務所は閉まっておりませんで、しっかりとお参りを済ませたあとに、こんぴらさんの黄色いお守りを頂戴する事が出来ました。

金刀比羅宮本殿前の展望台からは、讃岐平野の景色を一望のもとにする事が出来ます。その爽快な景色と麓から吹き上がってくる風に、ここまでの登りの艱難辛苦が洗われるような思い。山の麓に広がる琴平の街と土器川の流れ、左手には讃岐の甘食山シリーズ最高峰とも言える飯野山(讃岐富士)が聳え、その向こうには瀬戸大橋が見えます。展望台にいたガイド役のおばちゃんが「この時間になると霞んじゃって瀬戸大橋は見えないことが多いんですけど、今日は空気もきれいでよく見えますねえ!」なんて言ってた。

それだけ見晴らしがいいということは、必然的に「絶好の俯瞰場所である」という理解も可能な訳でして。琴平の市街をよーく目を凝らしてみると・・・おおお、ありました。ことでんの線路。腕時計を見るともうすぐ琴平から築港行きの電車が発車する時間です。自分以外の殆どの観光客がそんな事を気にしていないものと思われますが、やや時間があってほどなく築港行きの4連が土讃本線のガードを潜って日差しが残る線路に出て来ました。ちょうどタイミング良くJRも高松行きの2連の電車が築堤を上がって来て、きれいに立体交差付近で構図の中に収まりました。なんたる偶然!

JR琴平駅、琴電琴平駅をそれぞれ16:13に発車した高松(高松築港)行き。かたや多度津・丸亀・坂出回り、こなた一宮・仏生山・瓦町回り。こんぴらさんの神様が見下ろすJRとことでんの勝負は、JR(1246M)が高松17:19着、ことでん(50列車)が高松築港17:13着で僅かにことでんの勝ち。JRが多度津、坂出で計11分の特急の通過待ちをする分の差がなければ、と言ったところか。

もとより、金刀比羅宮の参拝客を巡っては、昔っから国鉄と琴電はライバル関係。速達性を高めるため、琴電が「こんぴら号」という名前の急行電車の運転なんかを行っていた時もあったそうです。現在は普通列車の運転のみと地域輸送にシフトした感じもありますが、それはJRも同じこと。キハ28・58の気動車急行とDD51が旧型客車を牽引する時代は過ぎて、高松~琴平間は高松都市圏として電化され、近郊電車が頻繁に走っていますからね。

ちなみにこの時期は、サンライズ瀬戸も琴平まで延長運転をしていたり。
こんぴらさんの大権現が見つめるJRとことでんのバトルは、今も続いています。


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