(小町湯@大津市逢坂二丁目)
古い建物が残る大津の街並みと申しましたが、逢坂山の道すがら、上栄町駅近くの旧東海道にこれまたレトロな銭湯が。入口が軽く破風造りになったこの銭湯、雰囲気だけでレトロ建造物好きの血が騒ぎ、「入ってみてえええええ!」という抑えがたい衝動に駆られるも、当然午前中から銭湯が営業しているはずもなく営業開始は午後3時からだった。
併用軌道区間を抜け、上栄町駅付近を引き続きブラブラ。ここから次の大谷駅へは駅間距離が開くのでさっさと電車移動しようと思ったんだけど、なんかこの駅にも魅力があるね。急な坂道のカーブの途中にあって、上下のホームは2つの踏切を挟んで互い違いに設置されております。お寺さんの伽藍の上に、大銀杏が青々と葉を付けている路地裏の駅。
駅の裏に続く路地には、軒先に季節の花が並び、野良猫がのっそりと通る。踏切脇のお堂は裏山にある長安寺と言うお寺の入口に立ち、買い物カートを押したばあちゃんや、近所の子供たちが深々と手を合わせては通り過ぎて行く。湖都の暮らしの風景に溶け込むように走る京津線が、逢坂山へ向けて登って行きます。
その長安寺踏切から大谷方向へカメラを向けてみましょう。京津線のレールには、逢坂山越えの急勾配・急カーブ対策のため、要所要所に線路への散水設備が設置されております。レールと車輪の摩耗抑制と、住宅街を走る電車のフランジ音の防止ためでしょうが、電車が近づいて来ると線路脇のノズルからパーッと霧状にした水が撒かれます。あたかもミストシャワーを浴びながら走っているような、この光景も京津線名物。
この区間、線路脇の勾配標は27.0‰を示しておりまして、急勾配といい連続カーブといい確かに厳しい線路条件だなあ。車輪に水を浴びながら、Sカーブをよじ登るように電車は山へ向かって行くのでありますが、聞けば季節と気候によって水圧は強かったり弱かったりするらしい。もうちょっと豪快に噴いてる時期にまた撮ってみたいと思ったり…
踏切の真ん中にて散水設備をまじまじと観察していたら、路地で遊んでいる子供たちに不審な顔をされたのでそそくさと脚を進める(笑)。一つお隣の踏切はこれまたお寺さんに続く踏切で、妙光寺踏切と言うらしい。その名の通り妙光寺というお寺の境内に入るためだけの踏切と言うのがいかにも…な感じですが、特にガイドブックに載っている訳でもなさそうですが、境内に入ると庭木は整えられていて、慎とした雰囲気が感じられます。さすが歴史のある街のお寺さんだね。
そんな妙光寺の境内から、お寺の山門抜きのワンカット。パステルカラーの電車が山門の向こうを流れて行きます。電車は止めようかブラそうか迷ったんだけど、お寺の静けさと対比させるようにスローシャッターでブラしてみましたがいかがなもんでしょ。ソフトフィルターは後加工ね。
表題の小町湯。結局夕方にこの銭湯を再訪する事になったんだけど、番台に座る100歳近そうな大ばあちゃんが全く耳が聞こえないと言う素人にはおススメ出来ない物件ではあった(笑)。中も実にレトロで、壁の富士山絵とタイル壁の金魚のモザイクがとても文化財的な雰囲気の味のある銭湯で、ちょっと熱めのいいお風呂でありました。特筆すべきは、温泉ではないと思うのだが入った後に妙にお肌がスベスベする事か。そして帰ってから知ったのだが、ここはモノの噂によると幕末の頃から営業している知る人ぞ知る銭湯だとか…幕末って(驚)。
さすがに京に続く道の周りには、色々と歴史の濃いものが潜んでいるようです。