映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「残穢」小野不由美

2015年08月12日 | 本(ホラー)
オススメしません!!

残穢 (新潮文庫)
小野 不由美
新潮社


* * * * * * * * * *

この家は、どこか可怪しい。
転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が…。
だから、人が居着かないのか。
何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、
ある因縁が浮かび上がる。
かつて、ここでむかえた最期とは。
怨みを伴う死は「穢れ」となり、感染は拡大するというのだが
―山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!


* * * * * * * * * *

小野不由美さんは好きなので、迷わず手にとったのですが・・・
怖すぎです。
このじわじわと来る不気味さ・・・、
おススメはしません。
やめておいたほうがいいですよ・・・。

小説家である「私」のもとに、
一般の方から怪異的現象の体験談が集まってくる。
そんな中で、ある一人の体験談が紹介されます。
住んでいるマンションの和室で、何かが畳を擦るような音がする・・・と。
気になってその体験談を寄せた女性と共に、近辺のことを調べてみるのですが、
同じマンションで何故か居住者が次々と入れ替わる部屋がいくつかある。
また隣接する一戸建ての団地の中にも、同じようなことが・・・。
この曰く有りげな土地の由来を時をさかのぼって調べていくと、
ある不気味な事件に行き当たるのですが・・・。


この話の不気味なところはそうした「穢れ」は、
どんどん感染し拡大していく・・・ということで、
結局この本を読んでいる自分にまで累が及んでくるような、
いや~な感じに囚われてしまうところなのです。
本作の語り手の名前は書かれておらず「私」とだけあって、
ドキュメンタリーのような体裁になっています。
必然的に小野不由美さん本人の体験談のように読めてしまいます。
そのため、妙なリアリティがあるのが余計始末におえない。
どこまでが実際にあった話なのやら、
いやそれとも始めからフィクション? 
それについてはなんの説明もありません。
怪異を語ると余計に怪異を呼ぶ・・・そんな記述もあり、
じゃ、こんな物語を書くのもなしでしょう!!
と言いたくなってしまいます。
全くのフィクションであったとしても、
書き手の体調が変になりそうな感じ・・・。


確かに借家などでは、「何か」があった部屋は警戒されたりしますが、
その土地自体の歴史まで調べることってあまりないですよね。
でもそれだって一体いつまで遡ればよいのやら・・・。
霊感など何もなく、怖い目にあったこともない私。
特別このような話を信じる方ではありませんが、
やはり不気味。
避けられるものなら避けたい。


そして本作、なんと映画化されるそうですが(橋本愛+竹内結子)、
私は絶対見ません!!


実はこの文庫とほとんど時を同じくして
同じく小野不由美さんの「鬼談百景」の文庫が出ています。
私はそちらも買ってあるのですが、
本作と合わせるとちょうど百話になってしまうそうで・・・。
危険です。
そちらはしばらく読まないことにします・・・。

「残穢」小野不由美 新潮文庫
満足度★★★★☆
インパクトは★★★★★ですが怖すぎるのでマイナス1!

あなたを抱きしめる日まで

2015年08月10日 | 映画(あ行)
真実は小説よりも・・・



* * * * * * * * * *

実話を元にした物語。
1952年アイルランド。
18歳で未婚の母となったフィロミナは、
親から強制的に修道院に入れられ、
3歳になった息子のアンソニーは養子に出され、離れ離れになってしまいます。



100年も昔の話ではないのですが、カトリックでは私生児を生むことが罪。
まるで罪人のように修道院に閉じ込められて、監視され、強制労働。
今では考えられませんが・・・。
そのためフェロミナはその後修道院を出て別の人生を歩むのですが、
そのことはずっと胸の奥に秘めていたのです。

さて50年後。
フィロミナ(ジュディ・デンチ)は老境に入り、
幼いころに別れたきりの息子のことが気になって仕方ありません。
あれからどうなったのだろう。
元気で暮らしているのだろうか。
少しは生みの母のことを覚えていてくれるだろうか・・・。
彼女は初めてこのことを自分の娘に打ち明けます。
そして、ジャーナリスト、マーティン・シックススミス(スティーブ・クーガン)が
息子探しの手助けをすることになるのです。



フィロミナとマーティンはまず、あの忌まわしい記憶のある修道院を訪ねるのですが、
昔の記録は火事で消失した、と素っ気ない。
しかし、移民の記録から、なんと修道院の子供たちはアメリカへ養子として
お金で売られていたことが判明。
二人は、今度ははるばるアメリカへ渡ることに。
そうしてたどり着いた真実とは・・・!
成長したアンソニーの人物像というのが実に意外で、
また、その運命が劇的でもあります。
そして、またラストで更なる驚きに包まれることになる・・・。



いやはや、“事実”というのはなんと不思議で重いのか・・と思います。
宗教があるがゆえにフィロミナは苦しみを受けたのですが、
でもなおかつ信仰を持ち続けている。
こうして強く深い信仰心は、今の日本人にはちょっと理解し難い部分もありますね。
しかし最後の最後に辿り着いた真相には
やはりどこか神の配財を思わせるところもあり・・・。
素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
一見の価値ありです。



あなたを抱きしめる日まで [DVD]
ジュディ・デンチ,スティーヴ・クーガン
Happinet(SB)(D)


「あなたを抱きしめる日まで」
2013年/イギリス・アメリカ・フランス/98分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチ、スティーブ・クーガン、ソフィ・ケネディ・クラーク、アンナ・マックスウェル・マーティン、ミシェル・フェアリー

隠された歴史度★★★★☆
満足度★★★★☆

「カレイドスコープの箱庭」海堂尊

2015年08月09日 | 本(その他)
え?シリーズ最終章?

カレイドスコープの箱庭 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社


* * * * * * * * * *

閉鎖を免れた東城大学医学部付属病院。
相変わらず病院長の手足となって働く“愚痴”外来・田口医師への今回の依頼は、誤診疑惑の調査。
検体取り違えか診断ミスか―。
国際会議開催の準備に向け米国出張も控えるなか、
田口は厚労省の役人・白鳥とともに再び調査に乗り出す。
「バチスタ」シリーズ真の最終章!
豪華特典として書き下ろしエッセイ「放言日記」と桜宮市年表&作品相関図も収録。


* * * * * * * * * *


「田口&白鳥、最後の事件!」という触れ込みになってますね。
私は、何といっても海堂尊作品ではこのシリーズが一番好きなので、
残念な気がしてなりませんが、でもまあ、全て繋がっている海堂作品のこと、
きっと今後の作品でもこの二人はどこかで登場してくるに違いありません。


さて本作、田口医師が病院内で起きた
誤診疑惑(検体取り違えか? 診断ミスか?)に取り組むのと合わせて
「Ai標準化国際会議」開催のための慌ただしい日々を追っています。
検体のスライド取り違えは、実はありえない、
ということを理詰めで追っていく白鳥の手腕。
やっぱり本作はミステリだったんですねー。
ここの部分はしっかり「本格」モノでした。
白鳥が「嘘発見器」だなどといって、
万華鏡を関係者に握らせた意図だけは私にも読めましたが。


「Ai標準化国際会議」は、つまり
これまで著者がこのシリーズで言い続けたAiについての集大成なんですね。
田口医師が準備のためにボストンまで行って講演を成し遂げる
なんていう得難いシーンもあります。
そして私が好きだったのは日本でのその会議の開催前日。
愚痴外来の診察室に豪華メンバーが集まって、飲み会を開くシーン。
桐生医師、速水医師(私の中では速水医師=西島秀俊なんで大歓迎!!)、
彦根医師、そして、田口&白鳥、
おまけに藤原看護師。
気を使わない仲間同士が大いにAiを論じ、飲む。
キャバクラでないところなんとも慎ましく、いいじゃないですか。
なんだか夢のようです。


また、本巻には2010年~2015年の著者の「放言日記」も収録されています。
著者はAiのことだけではなくいろいろなところで物議を醸しているようで・・・。
でも、叩かれてもおもねることなく、思ったことを言う。
だからこそ信頼できるというところはありますね。
『本屋大賞』の「書店員が一番売りたい本」というキャッチコピーが下品で嫌いとのこと。
考えたことなかったですが、
まあ言われてみれば確かに、「売りたい」という部分には拝金主義を感じなくもないか。
「感動を分かち合いたい」というのが原点のはずですね。

「カレイドスコープの箱庭」海堂尊 宝島社文庫
満足度★★★★☆

インサイド・ヘッド

2015年08月08日 | 映画(あ行)
大人になるための脳内再構築



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頭のなかで、喜びや悲しみ、いろいろな感情が会議を繰り広げている・・・
先日見た「脳内ポイズンベリー」と同じ発想なのですが、
それぞれに見どころはあり、
今回こちらのライリーの脳内も、泣きたいくらいに身近に感じながら拝見しました。



ミネソタの田舎町で暮らしていたライリー11歳。
親友がいて、アイスホッケーも楽しく、両親とも仲良し。
充実した毎日です。
ところが、父親の仕事の都合で、
サンフランシスコへ引っ越さなければならなくなってしまいました。
知る人が誰もいない都会の町。
勇気を振り絞って何とかやっていこうと思うのですが・・・。
そんな不安なライリーの心のなかで、
ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの5人が忙しく議論をしています。
しかしヨロコビとカナシミが、司令塔から放り出されてしまい、
戻るための必死の冒険を始めます。
また、ヨロコビとカナシミを失った司令部はライリーを制御しきれなくなってしまうのです・・・。



「脳内ポイズンベリー」の記憶は記録帳に書き綴っていくのみですが、
こちらでは一つ一つの記憶がボールに封じ込められます。
楽しい記憶は黄色。
悲しい記憶は青・・・。
無数のボールがびっしりと迷路状の収納棚に並べられ、
必要なくなった記憶は谷底へ「処分」されていきます。
こういうイマジネーションがやっぱりアニメだと自在なのでいいですね。



ヨロコビは自分のこの感情こそがライリーを幸せにすると思い、
カナシミをちょっぴり疎ましく思っているのです。
人生にカナシミなんか必要ないでしょう・・・と。
だからカナシミにはできるだけウロチョロしないで、奥のほうでじっとしていて欲しい。
ところが、悪戦苦闘の冒険の中で、
生きていくためにはカナシミもまた必要なのだということがだんだんわかってくるのです。
この辺りは本作を見たチビッコ達には少し難しいだろうな。
でも今はそれでいい。
きっと大きくなってもう一度見たらその意味がわかると思うのです。
そういう可能性を秘めて、いい作品だと思います。


それからライリー自身ももう忘れていた、
幼いころに自分で作り出していたキャラクター「ビンボン」が登場しますね。
なんだかちょっと虚を突かれた感じ。
もしかしたら、かつて私にもそういう存在があったりはしなかったか? 
なんだか忘れていた何かが胸の奥でうずくような気がしましたよ・・・。



ライリーの性格を作り出す島は崩壊し「特別な思い出」も変質していくけれど
それはライリーが大人に近づくための脳内の再構築なのかもしれない
などと思ったりして。
この事件は「引っ越し」がなくてもいずれ起こることだったのかもしれません。


私はお子様向けアニメであっても本当は字幕で見たかったのですが、
字幕上映のところはなく、吹き替え版を見ました。
でもヨロコビの竹内結子さんとカナシミの大竹しのぶさんがすごく良かった。


そうそう、ライリーだけではなくてほかの人たちの脳内会議の様子も少し出てきました。
特にライリーのお父さんとお母さんのやりとりの様子がめちゃくちゃ面白い。
これ、ずっと見ていたかったですね。

「インサイド・ヘッド」
2015年/アメリカ/94分
監督・脚本:ピート・ドクター
吹き替え版 出演(声):竹内結子、大竹しのぶ、佐藤二朗
脳内のイマジネーション★★★★★
満足度★★★★☆

ターミネーター3

2015年08月06日 | 映画(た行)
面白いんだけど、驚きがない



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ついでなので3も見てみました。
これは劇場で見たはずなのですが、2003年作、まだブログを始める前でした。
前2作とは監督が交代していますが、しっかり続きのストーリーです。
1997年にあるはずだった「審判の日」は、前作の出来事により食い止められた。
人類が破滅せず、社会がそのまま継続された10年後。


人類軍の指導者になるべく教育されたジョン・コナーは、
平和な社会ではなすすべもなく、目標を見失い放浪の生活を続けている。
母であるサラ・コナーはあっけなくも病でなくなっています。
しかしジョンの中には、教えこまれた悲惨な人類の未来の悪夢だけはしっかり残っている。
本当にこの平安な日々がこのまま続くのだろうか・・・。
そんな時にまた、未来から2体のターミネーターが送り込まれてくるのです。
1体は例によってアーノルド・シュワルツェネッガーのT-850。
そしてもう1体がなんと女性形の進化系ターミネーターT-X。
彼女(?)こそが、ジョン・コナーと彼の指揮下で活躍しているメンバーを
若き日のうちに抹殺するべく送り込まれたターミネーターなのです。



公開時に劇場で見た記憶では、
はじめの方のカーチェイスのアクションがものすごかったことと、
ラスト、避けきれなかった「審判の日」の衝撃・・・このことだけが残っていました。
なるほど、今見てもツボはそこのようです。
結局、どのように修復しても審判の日は起こる・・・。
このことは意外と説得力があります。
歴史には修復力があるのかもしれません。
枝葉が変わることがあっても、本筋は変わらない、みたいな。
第一、そうでなければ未来からロボットが送り込まれてくるはずもなし・・・。
ま、そこが時間物SFの矛盾でもあり、不思議でもあり、
面白いところなんですけどね。


ということで、アクションシーンもすごいし、
ストーリーも理にかなってはいるのですが、
前作に比べるとなんだか驚きが少なくてワクワクしない。
3作目ともなるとこれは宿命なのかもしれませんが・・・。
本作の主役、ニック・スタールもその後あまりぱっとしませんでした。
(「388」という作品の主役をしていて、それは見た!)
T-X役の、クリスタナ・ローケンも。

やっぱりbackしてくるのはシュワちゃんだけ

ついでに
ターミネーター4 はこちら  →「ターミネーター4」
絶賛公開中
ターミネーター 新世紀 はこちら  →「ターミネーター 新世紀」


ターミネーター 3 プレミアム・エディション [DVD]
アーノルド・シュワルツェネッガー
ジェネオン エンタテインメント


2003年/アメリカ/110分
監督:ジョナサン・モストウ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デーンズ、クリスタナ・ローケン、デビッド・アンドリュース
アクション度★★★★☆
満足度★★★☆☆

ターミネーター2

2015年08月05日 | 映画(た行)
帰ってきたシュワちゃんはもっとすごい



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引き続き見ました。
ターミネーター2。
この際、3連載ということにしちゃいましょうか。


本作は第一作の7年後に作られています。
続編としては少し時間を経ていますが、
ストーリー上は前作から10年後の設定なので、
サラ(リンダ・ハミルトン)の年齢の重ね方が絶妙にマッチしていて、ステキなのです。
この2作は必ずセットで観るべきです。


前作のラストで、「戦士の母」としての自覚を強めたサラ(リンダ・ハミルトン)は、
南米で体を鍛え、戦闘や組織論を学び、武器を蓄えていきました。
また、息子ジョンに戦士としての教育もしました。
そして、あるコンピュータ開発企業の爆破を目論んだのですが、失敗。
ターミネーターのこと、審判の日の人類の破滅のこと、
それを説明するサラは、強度の統合失調症とみなされ、
警察の精神病院に監禁されてしまっているです。
養父母に預けられたジョン・コナー(エドワード・ファーロング)は10歳。
そんな彼の前に未来からまた二人の男がやってきます。
彼を抹殺しようとする新型ターミネーターT-1000(ロバート・パトリック)、
彼を助けようとする旧型T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)。
始めのうちどちらが敵か味方か、わからないところがミソです。
一作目を見た人はやっぱりシュワちゃんの方を敵と思いますよね。
T-1000のほうが一見紳士風でもあるし。
だからサラが、息子とともに精神病院に乗り込んできたT-800を見て
逃げ惑うシーンがあるのです。
けれど、味方についたシュワちゃんほど頼もしいものはない!! 
やってくれます。
またこの時期、近い将来の「審判の日」を呼び起こす
マイクロチップの開発が今にも完成しようとするところ。
結局その元になるのは、前作で未来からやってきたターミネーターに組み込まれていたものだった
というのがまた、皮肉ですよね。
倒しても壊してもまた起き上がってくる不死身のT-1000をどのように倒すのか、
スカイネットの興隆を阻止できるのか。
これもまた見どころ満載。
そして、ラストシーンは意外にも泣かされますよ・・・。
文句なしのすごい作品です!!



ミーハー的なお話を少し。
ジェームズ・キャメロン監督は何人もの女性と結婚したり別れたりしていますが
リンダ・ハミルトンもその一人。
少年ジョン役のエドワード・ファーロング、まあ、なんて美少年なんでしょ!
でも今はその名前を目にしないけれど・・・、
と思って映画サイトで調べたところ、現在も俳優を続けていますが、
まあ、すっかりいいオジサンに。
・・・当たり前ですけどね。
知らないほうが良かった。

ターミネーター2 特別編(日本語吹替完全版) [DVD]
アーノルド・シュワルツェネッガー,リンダ・ハミルトン,エドワード・ファーロング,ロバート・パトリック
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


「ターミネーター2」
1991年/アメリカ/137分
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング、ロバート・パトリック、アール・ボーエン
シュワちゃんの魅力度★★★★☆
満足度★★★★★

ターミネーター

2015年08月04日 | 映画(た行)
痺れます!!



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先日「ターミネーター新起動」を見たところで、
また見たくなってしまい、見ました。
元祖ターミネーター。
1984年作品です。
今年はターミネーター公開30周年ということで・・・、
まあ、何にしても歴史に残る作品であります。


今さらストーリーの説明というのもなんですが・・・
1984年のLA。
2029年の未来から殺人機械ターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)が送りこまれてきます。
ここのシーンが、「新起動」でもそのまま使われていたというのを実際に確認しました。
全裸のターミネーター。
これがなかなか衝撃的だったわけですが、シュワルツェネッガーの筋肉もすごいですね!! 
つまりはこれを見せるための全裸シーンだったのでしょうね。
で、やっぱり若い!!
 本作では完全に悪役ですが、カッコイイです!! 



そしてもう一人未来から送り込まれてくるのが、カイル・リース(マイケル・ビーン)。
彼らは「サラ・コナー」という女性を探し始めます。
実はこのサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)こそが、
機械の支配する荒廃した未来の英雄的指導者ジョン・コナーの母親なのでありました。
ターミネーターは彼女を抹殺するために、
カイルは彼女を守るために
未来からやってきたのです。
一方そんなことを知るわけもないサラ・コナーは、
ドジで恋人もいないちょっぴり情けないオンナノコ。
しかし、否応なく彼女は生死をかけた戦いに巻き込まれていく。


カイルがこの時代に送りこまれてきたシーンも、
「新起動」では本作をできるだけ忠実に再現していることが分かりました。
ホームレス風の男からズボンを奪い、通りかかりの警官に呼び止められて逃走。
洋品店に侵入して上着を失敬します。
素足に当ててスニーカーのサイズを確かめ、これも失敬。
ただ違うのは「新起動」では
ここで意外にも年齢を重ねたT800とサラ・コナーに出会うわけですが・・・。


本作は低予算で作られながらも大ヒットしたジェームズ・キャメロン監督の出世作。
サラのヘアスタイルとか、確かに時代を感じさせますが、
ターミネーターのアクションはもちろん、
タイムパラドックスとともにあるラブストーリー、
後の人類の指導者でありサラの息子であるジョンの出世の秘密など、見どころ満載。


そして私の大好きなラストシーン。
一人南米にやってきたサラ。
広大な荒野を行こうとするそんな彼女は、意外にもマタニティスタイル。
後にカイルが「少し寂しそうだ」と表現する写真が、そこで写されることになる。
嵐の予感。
あのオンナノコが見事に戦士の顔をしています。
守られるだけの女性からの脱却。
映画界の変遷の萌芽でもあります。
痺れます!! 

ターミネーター [DVD]
アーノルド・シュワルツェネッガー,マイケル・ビーン,リンダ・ハミルトン,ポール・ウィンフィールド,ランス・ヘンリクセン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「ターミネーター」
1984年/アメリカ/108分
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、マイケル・ビーン、リンダ・ハミルトン、ポール・ウィンフィールド、ランス・ヘンリクセン
ストーリー性★★★★★
満足度★★★★☆

「鍵のない夢を見る」辻村深月

2015年08月02日 | 本(その他)
孤独な女達の安息はあるのか

鍵のない夢を見る (文春文庫)
辻村深月
文藝春秋


* * * * * * * * * *

直木賞受賞!
私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、
婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親
……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。


* * * * * * * * * *

第147回直木賞受賞作。
私、辻村深月さんの作品はほとんど読んでいませんでしたので、
まあ、入門編に、と思いまして。
本作は5人の女性それぞれの夢と転落を描く5つの短編からなっています。


「石蕗南地区の放火」
笙子が以前いっとき付き合っていた男が、放火の疑いで逮捕される。
もしかすると彼は私とまた会いたいために放火をしたのかもしれない・・・。
笙子はそのように想像するのですが・・・。
しかし実はそんな男にすらも振り返ってもらえないような自分。
女のくすぶる虚栄心に、思わず目を背けたくなります。


「芹葉大学の夢と殺人」
こちらも状況は似ているかもしれません。
未玖は同じ大学の研究室の羽根木と付き合っていますが、
この男、今の大学をやめて医学部に入り直す、
おまけに本当にやりたいのはサッカーだなどと、
小学生のような「夢」を語る。
未玖にはそれが現状に適応できない男のただの逃げだということがわかっていながら、
別れることができない。
ついに羽根木は研究室の教授を殺害に及んでしまうが・・・。
結局こんなダメな男にすらも恋い焦がれてもらえない自分を見出すのみ・・・。


こういうストーリーは男性には描けないでしょうね。
全然魅力的でもないし、好きにもなれない主人公たちですが・・・。
私達の中にはどこか同じものが潜んでいるような気がする。
ちょっぴり心がひんやりします。


ラスト「君本家の誘拐」これがまた強烈。
ようやくの妊娠で初めて生まれた我が娘。
しかし、生まれてからのその世話があまりにも大変で、
ほとんどノイローゼ状態の良枝。
ある日買い物に出かけ、ベビーカーが見当たらないことに気がつく!! 
自分で描く結婚、そして出産・子育てという段階。
人並みのその道から外れることの恐怖が彼女にはあったようなのです。
しかし幸せの象徴のようなその我が子が、
実は自分の平安をぶち壊すモノのように感じられ・・・。
このような心理も実は誰の中にもないとはいえない・・・。
辻村深月さん、怖い作家ですね。
でも本作はそういうところをえぐりすぎていて
私にはちょっと辛く思えました。

「鍵のない夢を見る」辻村深月 文春文庫
満足度★★★☆☆

トワイライトささらさや

2015年08月01日 | 映画(た行)
気になって、気になって、気になって、気になって・・・



* * * * * * * * * *

突然の事故で夫ユウタロウ(大泉洋)を亡くした、サヤ(新垣結衣)。
生まれたばかりの息子を抱え、身寄りもない。
そんな二人を残して逝ってしまったユウタロウは、
二人のことが「気になって、気になって、気になって、気になって・・・」
成仏することができず、
様々な人に乗り移って現れてはサヤを助けていきます。
そんな時、死んだと聞かされていたユウタロウの父(石橋凌)が現れ、
子どもを引き取りたいという・・・。



まるでミニチュアのように映しだされるこの町、「ささら」がステキです。
サヤが叔母から残された古い家。
今どきあまり見かけない大きな乳母車。
ちょっとファンタジックなこのストーリーにいい味が加わっています。



はじめ、夫に先立たれた若き母は、いかにも心もとなく見えます。
この人が見知らぬ街にたった一人でやってきて、
赤子を抱えて生きていこうとするのは心細すぎる。
時々見知らぬ人に乗り移ったユウタロウが現れますが、いつもではない。
そんな彼女を見守り支えるように、少しずつ知人が増え、生活が彩られていく。
それとともに、サヤもまた成長していきますね。
人がしっかりと前に動き出そうとするときには、
やはり人の手助けや支えが必要なのだな。



母親役にはまだ若いと思わせる新垣結衣さんが、
この場合そういう成長ぶりを感じさせるのにぴったりでした。
でも本作の主役は何と言ってもこの、赤ちゃんなのではないかな?
純真無垢な赤ちゃんの笑みは、それだけで私達を和ませる。
かわいい~!!



大泉洋さん? 
そりゃもう、言うまでもなく。
妻子を残して逝ってしまうなどという最大の悲劇を
コメディに変えることができるなどというキャラは、大泉洋さんくらいです。
そして、ユウタロウが乗り移った演技をする俳優の皆様方も見事。
色々と楽しめる作品でした。


加納朋子さんの原作「ささらさや」は読んだと思うのですがあまりよく覚えてはおらず・・・、
でも本作とはかなり異なっていたような気がします。
まあ、それぞれに別のものとして愉しむのもアリです。

トワイライト ささらさや 2枚組(本編+特典ディスクDVD) [Blu-ray]
新垣結衣,大泉 洋
バップ


「トワイライトささらさや」
2014年/日本/114分
監督:深川栄洋
原作:加納朋子
出演:新垣結衣、大泉洋、中村蒼、福島リラ、富司純子、石橋凌

ファンタジック度★★★☆☆
満足度★★★★☆