映画と本の『たんぽぽ館』

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女神の見えざる手

2018年11月04日 | 映画(ま行)

なぜそこまでしても頑張るのか

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本作は公開時にもかなりの話題作だったと思うのですが、
政治経済ネタに弱い私はつい、敬遠していました。
そもそも、ジェシカ・チャステイン演じる主人公の“ロビイスト”というのがわからない。
まあ、わからないなりに、思い切って映画の世界に飛び込んでみましたよ。
つまりは、ロビイストというのは特定の団体の利益を図るため、
議員に働きかけて議会の立法活動に影響を与えたり、マスコミや世論を動かしたりする。
そういう作戦を練って、実行する仕事。
法的知識やコネクション、先を読む力、行動力・・・様々な力が要求されますね。



さて、そんな大手ロビー会社に所属し、トップの成績を誇るエリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)。
会社の方針で、銃の所持を支持する団体の仕事をすることになったのですが、
彼女個人の信条に反するということで、銃規制派の小さな会社に移籍します。
彼女の卓越したアイデアと大胆な決断力で難局を乗り越え、
勝利は目前かと思われた時、予想外の事件が起きるのです・・・。


というふうに書くと、スローンはカッコいいヒーロー(ヒロイン?)のように思えてしまうかもしれません。
でもそうではなくて、常に自分のギリギリのところで必死なのが見えてきます。
不眠症。
孤独。
エスコートサービスを利用しているなどと、衝撃的な場面もあります。
ごくほんのひととき、仕事を忘れられる時間・・・。
今どき男性が主役ならこんなシーンはありえないですよね。
それだけで好感度破綻してしまいます。
なぜこんなにしてまで、神経を張り詰めながら頑張らなければならないのか・・・。
彼女が歩んでいる道は、つまり男性が成功する方法の模倣です。
女性なら女性なりの、もっと生きやすい道があるのではないかと思うのですが・・・。
それは結婚や出産とは限らずとも。



ずっとそんな疑問をもちながら見ていくと、ラストに驚かされてしまうのです。
実は彼女がはじめから持っていた意図。
そうだった、彼女はいつも「最後の切り札」が大事だと言っていたのでした。
その切り札を、彼女は当初から隠し持っていて、
ちゃんとストーリーにも伏線として描かれていたわけですね。
その切り札は、彼女自身の身を切るものではあったのだけれど・・・。
なんだろう、こういうやり方はやはり男のものではない、と最後に納得してしまった私です。
すごいストーリーでした・・・。

それにしてもアメリカで銃規制が進まない理由というのが、よ~くわかりました。
女性や若い人に銃は規制すべきだという意見は多いのだけれど、
そういう層は投票率が良くない。
どんなに世論が高まっても、議会で法案が通らなければ何もならない、と。
だからこそロビイストは大事な仕事ではあるのだけれど、
殆どは大企業が大金をはたいて雇うのでしょうし・・・。
どうにも見通しは暗いですね。




<WOWOW視聴にて>
「女神の見えざる手」
2016年/フランス・アメリカ/132分
監督:ジョン・マッデン
出演:ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ググ・バサ=ロー、アリソン・ビル、マイケル・スタールバーグ

ヒリヒリ感★★★★☆
満足度★★★★★



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