映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あいあい傘

2018年11月11日 | 映画(あ行)

家族とは・・・、結婚とは・・・

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宅間孝行さんによる同名舞台劇の映画化。



25年前失踪した父・六郎(立川談春)の行方をようやく探し当てた、高島さつき(倉科カナ)。
父の様子を探るために、恋園神社のある小さな田舎町にやってきました。
さつきはそこで清太郎(市原隼人)というテキ屋の青年が父のことをよく知っているようなので、
自分が娘であることを隠して彼に近づきます。
そこでわかったことは、父が今では苗字も変えて知らない家族と新しい生活を築きあげているということ。
自分と母のことを忘れ、平和そうに暮らしている父に、
さつきは怒りがこみ上げますが・・・。

25年前、六郎がこの町に自殺のためにふらりとやってきたその事情を知れば、もう何も言えません。
誰も悪くないのに、もつれていく感情・・・。



さつきは25年前は5歳。
父の誕生日に肩たたき券をプレゼントするくらいにお父さんが大好きでした。
しかしいきなり姿を消し、その後母と二人きりで生きてきた、その心情は察するに余りあります。
一方、この町で六郎は松岡玉枝という女性と暮らしていて、
麻衣子という娘もいます。
ところが、六郎と玉枝が知り合ったときにはすでに玉枝は妊娠しており、つまり娘とは血の繋がりがないのです。
そのため、麻衣子はどうしても、父に心から打ち解けられません。
この二人の女性が、「父でありながら父ではない」という存在をどう受け止めていくのか、
そこが問題なのですね。
でも私は思う。
生まれたときから25年間娘として見守り、育ててくれたのだから、
それはもう立派な父親でしょう!! 
ただし、いつまでもきちんとした結婚をししない両親について、
割り切れない思いが残るのは仕方ないか・・・。

このなんとも複雑な親子関係を周りの人々はただただ見守るしかない。



いかにも軽くて調子のいいテキ屋のあんちゃん清太郎や、
なかなか結婚に踏み切れないガラの悪いテキ屋カップル。
始めのうち、この人達のテンションがあまりにも高いので不安を覚えたのですが、
次第に、まともな判断のできるしっかりした大人であることがわかってきて、
なんだか心がほんのりしてきました。
偉そうな助言なんかしない。
そっと寄り添って背中を押す、そんな感じがとても良いですね。

結婚はあいあい傘のようなもの。
どこか別々の方へ行きたくても、同じ方に進まなければならないし、
雨が強い時はなお一層寄り添わなければならない・・・と。
なるほど、ですね。


<ディノスシネマズにて>
「あいあい傘」
2018年/日本/116分
監督・脚本:宅間孝行
出演:倉科カナ、立川談春、市原隼人、原田知世、入山杏奈
父と娘の情愛度★★★★☆
満足度★★★★☆