映画と本の『たんぽぽ館』

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「真田太平記(四)甲賀問答」 池波正太郎

2010年10月12日 | 真田太平記
真田家と忍者、そして秀吉の朝鮮出兵

真田太平記(四)甲賀問答 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社


          * * * * * * * *

「甲賀問答」というだけあって、この巻では忍者の話が中心になりますね。
そうです。第一巻からお馴染みの、真田の「草の者」壷谷又五郎やお江さん。
元々彼らは甲賀の忍者だったんですね。
それが武田家に派遣されていたのだけれど、武田家の命運が怪しくなってきたところで、退却。
しかし中には、そのまま残った者たちがいた。
彼らは武田家に引き続き真田家に仕えるようになっていったんだね。
普通忍者というのは、低い身分とされたそうなんです。
ああ、「カムイ伝」とか見るとまさにそうだよね。
けれども武田家や真田家では、役向きが表か裏の違いだけ、ということで他の侍と同じ扱いを受けたというのです。
それで彼らは甲賀には戻らず、真田についているんだね。
この本を読むと、こうした忍者の裏の情報活動がいかに重要であるか、よくわかりますね。


甲賀側も、自分たちが生き延びるために誰につくのが一番いいのか、研究しているわけです。
今、天下は秀吉が手中にしているけれども・・・、どうもこのまま収まりそうもない。
甲賀ではそのように読むのですね。
そんなこともあり、この巻では甲賀忍びの頭領山中俊房が
秀吉の御伽衆である山中長俊に接近。
その様子を探っていたお江が、大変なことになってしまいます。
敵中深く進入していたのが見つかり、追われ、傷ついて・・・。
もうダメかと思われたのですが・・・。
そこがドラマですよねえ。
ある人物の助けを得て、一命を取り留め、やがては決死の脱出をはかる。
そしてそれもまたあわやと思うときに起きた奇跡!!
おお~、まさに奇跡ですね。思わず興奮しちゃいます。

後々、壺谷又五郎が真田衆にこの話をした時の、幸村や向井佐平次の反応が見物でした。

それから、佐平次ともよの間に生まれた子が佐助といいまして、
これが幼い頃から忍者の修行を始め、まるで猿のようにすばしっこい。
そうです、この子こそ猿飛佐助!!
おお!! そうなんですか。出てくるんですね。ほんとに。猿飛佐助が。



さて、忍者サイドのストーリーはここまでとしまして、
この歴史の本筋では、いよいよ秀吉が朝鮮を攻めます。
秀吉の命により日本全国各地から、武将と軍隊が九州の名護屋にかき集められます。
真田家の三人も当然同行。
秀吉以外はこの朝鮮侵攻は無謀と考えている。
しかし・・・、誰もそのことを言えないんですね。
独裁者の狂気を誰も止められない。誰もが自分の身がかわいい。
どこの国にもそうした歴史はあるようですが・・・、
かつての人を惹きつける秀吉の面影が薄れていく・・・。
戦況は初めのうちだけは威勢が良かったのだけれど、
次第に苦しいものになっていくんだね。
朝鮮は水軍に長けていて、日本勢はかなわなかったそうな・・・。
軍隊が朝鮮に上陸して、瞬く間に当たりを占領したまでは良かったけど、
その後物資の補給がうまくいかなくて、孤立してしまうんだね・・・。
国内の戦なら、これまで秀吉はそういうところの作戦にも長けていただろうと思うけれど・・・。
やっぱり勝手が違ったのかなあ。
でも結局秀吉本人も、真田衆も、朝鮮までは出陣しなかったんだね。
名護屋で無為に過ごすだけ・・・。
そうそう、幸村はこの名護屋に来る直前に結婚しています。
秀吉の家臣、大谷吉継の娘、於利世。
信幸には子供が生まれたのだけれど、女の子でした・・・。
まあ、当時で言えば、残念ということか。

このほか、名胡桃城主の子、鈴木右近のこととか、
甲賀と確執を深めてしまったお江のこととか・・・まだまだこの先興味深いところがたっぷりですね。