では本当に色々なことが参考になったのだが、何がどのように参考になったかを全てを書き出せばそれだけで投稿が埋まってしまうので、その多くを割愛した。本当は書きたかったので、ここで改めてその内容を別投稿として備忘録がわりに残しておきたい。
1.自転車のペダルの軽さ重さの表現の仕方
記事中でギアの軽さ重さを示すのに用いられているのが「ひと漕ぎ距離」、つまりクランク1回転あたりの駆動輪の移動距離である。
私はどちらかと言うと自転車よりもバイク・クルマ界隈寄りの人間と思うが、これは聞きなれない単語だ。自転車界隈では一般的なのだろうか。
そもそもギア比とは何なのかというとフロントとリアの歯数の割合なわけだが、自転車を動かすのにあたって歯車の比率もさることながら駆動輪の大きさも無視できないから、ギア比だけではどれだけペダルが重いのか軽いのか見当が付けにくい。そこでバイク・クルマでいう最終減速比のような値に代えて「ひと漕ぎ距離」を用いているのではないかと推測している。確かに「比」で示されるよりも「距離」で示してくれた方が、原動機の代わりに脚力を用いる肉体運動の要素が強い自転車ではイメージがしやすいのではないか。結論はいまだ不明だが、暫定そのように解釈して納得している。
2.内装3速ギア比の表し方
記事中に「ひと漕ぎ移動距離から3速モデル内装のギア比を逆算して0.75:1.00:1.33」とある。
「1.33」が「1+1/3の四捨五入」のことであれば、このギア比を全て割り切れる整数で言えば「9:12:16」のことではなかろうか?1段UPごとに4/3倍、1段DOWNごとに3/4倍という「等倍」の関係にある。ならば、なぜそう書かないのであろうか?
ここに国内のあらゆる3速ママチャリに用いられているとされる、シマノの「インター3」という内装ギアがある。ブロンプトンマニアの方なら、その発展版「インター8」への換装という話題をご存知かもしれない。たまたまインター3に関するwikipediaの記事にたどり着いて、ギア比の書き方の理由が分かった。曰く、真ん中の2速はリアスプロケの歯数をなんら変速しない「直結ギア」なので、2速を1.00と書くのが、歯数換算上収まりが良いというわけだ。そしてわれらがブロンプトンに用いられているスターメー・アーチャーも同じということ、なるほど!
ちなみにシマノインター3の内装ギアの比率は0.73:1.00:1.36とのことだが、これを割り切れる整数で書けば121:165:225と3ケタになってしまいイメージが湧きにくいため、2速を1.00に換算する意義はより大きい。変速の割合も、スターメー・アーチャーと同様に1段ことに「等倍」比率の関係にある(1段UPごとに15/11倍、1段DOWNごとに11/15倍。なお後述するが、スターメー・アーチャーのギア比は実際にはもっと細かい数字で再計算することとなった)。
ところで、外装変速機の場合においてギア比を導き出す具体的な計算方法は、単に歯数と歯数の割り算で済む。カセットスプロケットの姿を思い出していただければ判るだろうが、外装ではさまざまな歯数の複数のリアスプロケを自在に選択できるから、「いま選択したリアスプロケの歯数」と、「チェーンリング側の歯数」の比が、そのままギア比である。
一方の内装ギアでは、チェーンリング(固定歯数)とスプロケ(固定歯数)間の「固定ギア比」に対して「さらに内装ギア比を乗算する」ことで変化を与え、「仮想スプロケ歯数」を創出するものと考えられる。M3ノーマルF50T×R13Tの場合を例に乗算すれば、2速(直結1.00)はそのままR13T、 1速(0.75)でR17.3T相当、3速(1.33)でR9.75T相当のスプロケを用いた場合と等しいギア比が得られることになる。
なお、6速モデルは内装と外装のかけ合わせのせいか、1-6各段の間隔があまり均等ではない。これはロードバイクやMTBでいうところのFチェーンリング変速とRスプロケ変速をかけ合わせるような使い方に倣い、あくまで「3速が、2セットある」と考えるべきなのだろうか?あるいは器用に内装と外装をこまめに切り替えて「1-2-3-4-5-6」と順序良く変速しているだろうか?実際の使い方は知らないので、今度オーナーのH君に聞いてみようと思っている(例の内装5速の精度が低く完成車に採用できなかったため、結果としてこのような「変則的変速」になってしまったのであろうか?)。
やや脱線したが、ともあれ内装3速はスターメー・アーチャーもシマノも2速直結ギアを1.00として、UP側もDOWN側も等倍に変速ということである。
3.ひと漕ぎ距離の算出方法
チェーンリングのT数、リアスプロケのT数、内装ギア比に加えて、「タイヤ外周長」の値を加味すれば、計算式を用いて「ひと漕ぎ距離」が導き出せるということを知った。
「ひと漕ぎ距離」を求める場合の計算式は次の通りだ。
「ひと漕ぎ距離」(m)=タイヤ外周長(mm)×(F丁数÷R丁数)÷1000
外周長に関してはこのような便利な一覧表を見つけてきた。
エクセルで計算式を作って検証してみたため、理屈さえ間違っていなければ計算ミスはなく、私が投稿中で換算37.14Tとか5.04mとか言っているのはおそらく間違いではないと思う。また、自動計算してくれるサイトがあったのでこれも紹介しておこう。
https://jitetan.com/pedal-dis.html
ただしこちらは「タイヤ外径」を入力しなければならないので、「タイヤ外周長÷π」で導き出したタイヤ外径を予め手元に用意しなければならない。
4.ミズタニ自転車が想定しているブロンプトン純正タイヤの外周長は1324mm(だと思う)
記事中に「ミズタニサイクルがショップに配布しているカタログに掲載されている公式情報」として、以下の情報が書かれているので、引用すると、
ギア | 6速モデル | 3速モデル | 2速モデル |
1 | 2.64 | 3.82 | 4.47 |
2 | 3.25 | 5.09 | 5.96 |
3 | 4.14 | 6.78 | - |
4 | 5.09 | - | - |
5 | 6.49 | - | - |
6 | 7.98 | - | - |
とのことであるが、3の計算式に当てはめた場合、この値を全て満たす式を作るのが非常に難しかった。どうしても小数点第2位(つまりセンチメートル単位)で誤差が生じてしまうのだ。何が原因かというと、内装ギアの変則割合だ。すなわち引用元記事では、内装3速のギア比率は、3速モデルについては「0.75:1.00:1.33」、6速モデルについては「0.64:1.00:1.56」とさらりと書いているが、これをそのまま用いて計算するとカタログ値とズレが生じてしまうため、桁数の細かい小数もしくは分数を用いて詳細な値を用い、精度を高める必要があった。
さらに、自分は、インター3のWikipedia記事にあった通り、スターメー・アーチャー内装もギア比は1-2速、2-3速で等倍関係と仮定しており、等倍比率かつカタログのひと漕ぎ距離値を同時に満たすためには、さらに詳細な比率を用いざるを得なかった。数学が苦手なので地道で導き出した値だから自信はない…と言うよりもはや半ばどうでも良いと思っているが、せっかく計算したから以下に開陳する。
6速用BWR=「1369:2166:3364」(1段UPごとに58/37倍、1段DOWNごとに37/58倍)
3速用BSR=「27556:36686:48841」(1段UPごとに221/166倍、1段DOWNごとに166/221倍)
内装ハブの分解をすれば真実が判るであろうが、ミズタニ表を重視して暫定で上の通り取り扱うことにします。
ともあれ、「2速5.09m」を上記の内装ギア比を用いて3.の計算式に当てはめ逆算すると、ミズタニ自転車はブロンプトンのタイヤ外周長を1324mmと想定していることになる。何故なら、そこから1mmでもずれるとカタログに示した「ひと漕ぎ距離」が変わるからである(例えば1323mmにすると、3速換算でひと漕ぎ距離の四捨五入値は6.77となり、ズレる)。
実際に当てはめてみると、次の計算式だ。
ひと漕ぎ距離(m) 強調箇所はミズタニ自転車の公開情報と一致 | |||||||||||
モデル | F歯数 | R歯数 | タイヤ周長 | タイヤ外径 | 内装歯車1 | 内装歯車2 | 1-2速比 | 2-3速比 | 1速 | 2速(1.0倍) | 3速 |
3速50T | 50 | 13 | 1324.00 | 421.44 | 221 | 166 | 0.75113 | 1.33133 | 3.82 | 5.09 | 6.78 |
3速44T | 44 | 13 | 1324.00 | 421.44 | 221 | 166 | 0.75113 | 1.33133 | 3.37 | 4.48 | 5.97 |
3速40T | 40 | 13 | 1324.00 | 421.44 | 221 | 166 | 0.75113 | 1.33133 | 3.06 | 4.07 | 5.42 |
3速37.14T | 40 | 14 | 1324.00 | 421.44 | 221 | 166 | 0.75113 | 1.33133 | 2.84 | 3.78 | 5.04 |
6速50T | 50 | 13 | 1324.00 | 421.44 | 58 | 37 | 0.63793 | 1.56757 | 3.25 | 5.09 | 7.98 |
50 | 16 | 1324.00 | 421.44 | 58 | 37 | 0.63793 | 1.56757 | 2.64 | 4.14 | 6.49 | |
6速40T | 40 | 13 | 1324.00 | 421.44 | 58 | 37 | 0.63793 | 1.56757 | 2.60 | 4.07 | 6.39 |
40 | 16 | 1324.00 | 421.44 | 58 | 37 | 0.63793 | 1.56757 | 2.11 | 3.31 | 5.19 | |
2速54T | 54 | 12 | 1324.00 | 421.44 | - | - | - | - | - | 5.96 | - |
54 | 16 | 1324.00 | 421.44 | - | - | - | - | - | 4.47 | - |
ところが上述cateyeタイヤ周長ガイドでは、ブロンプトン純正サイズである16×1-3/8の外周は「1300mm」とされており、ミズタニ社の採用値と24mmの差異がある。この値はタイヤメーカーの差異や空気圧ひとつで変わるとのことなので、未検証だが、誤差の範囲と扱って構わないと考えている。
されど念のため試みにブロンプトンタイヤ外周長に「1300mm」を当てはめて「ひと漕ぎ距離」再計算をするとどうなるだろう。結果、1300mm×50T÷13T÷1000=5m(2速)となり、ひと漕ぎ距離が5mという整数で割り切れる値になった。R13Tゆえに、外周長1300mmを用いると割り切りやすいせいだ。
これは完全に憶測なのだが、英国のブロンプトン開発者はこれを知っていて、漕ぎやすさよりもオカルト的、キリスト教的な数字の美しさを優先してギア比を導き出したりしていないであろうか?「だったら嫌だなあ」という根拠のない憶測ではあるが…
5.3速モデルのブロンプトンとママチャリ
先の投稿中、M3のギア比をママチャリのそれと比較した場合の感覚値について触れたが、実際の3速ママチャリのひと漕ぎ距離はどうなっているのだろう?スペックさえ押さえれば、上に示した材料と計算式を基にそれを導き出せることになる。早速日本を代表するママチャリメーカーのブリヂストンサイクル社の公式ホームページを訪ねて買い物向け車のスペックを見てみた。するとスペックの一番最後にしっかり「ペダル1回転で進む距離」という見出しがあるものの、なぜか中身が空欄である。チェーンリングとスプロケの歯数も不明。分かることはシフト段数が3段であり、タイヤが「26×1-3/8」であることだけであった。
そこでチェーンリングとスプロケについて野良サイトで情報収集したところ、一般に軽快車と呼ばれるママチャリにおいては「F32T/R14T」ほぼ一択らしいことが判明した(もちろん、この瞬間までそんなことは知りもしなかった)。タイヤ外周長はcateyeサイトから「2068mm」という値を頂き、3段シフトはシマノのインター3と看做し「0.73:1.00:1.36」にて各ギアの「ひと漕ぎ距離」を算出すれば、次の通りである。
3.47 4.73 6.45
改めてブロンプトンM3のひと漕ぎ距離と見比べてみよう。
50.00 3.82 5.09 6.78
44.00 3.37 4.48 5.97
37.14 2.84 3.78 5.04
この結果から、私が先の投稿で触れたノーマルのブロンプトン50T仕様のギア比に抱いていたママチャリとの対比感がお分かりいただけるであろう。まずもって50Tは全3速いずれもママチャリより重い。
そして注目すべきは、あの、多くの人が幸せという44Tとの比較である。どうかご覧あれ、44Tはさながら「全体的に踏みやすくしたママチャリ」ではないか。この結果に私はとても納得がいった。多くの人が乗り慣れたママチャリに極めて似ているのが、幸せを呼ぶ44T化3速ブロンプトンなのだ。多くの人が慣れ親しんでいるからこそ、安心感を感じ、それが幸せなのだろう。
以上です、もう全部、どうでもいい
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