人骨

オートバイと自転車とか洋楽ロックとか

70年代ロックファンのためのMP3プレーヤー導入ガイド(前)

2009年01月09日 | 70年代ロック雑談
音楽をどうやって聴きますか?私はもっぱら外出中や電車移動中に携帯プレーヤーで聴きます。
自宅で腰を据えてゆっくり聴くのが理想ではありますが、結婚して以来なかなかできないっす。音楽を聴くって、BGMならどうでもよいんですが、しっかり聴きたいときは、誰の邪魔もされずに1対1で音楽と対峙するに限る!もともとがミュージシャンくずれ(自称)なんで、結構細かいところまで聴かないと気が済まないクチなんです。ましてやチビどもが五月蠅い劣悪環境にある現在、自宅ステレオは可哀想なことにほぼ単なるAMラジオと化しています。
よって、ケチで貧乏でセッカチで通勤時間や待ち時間は時間の無駄以外の何者とも思えない私は、その間もっぱらジックリ音楽を聴くことで時間の有効活用をしているわけです。
私の妻はそんな私を指して「時間貧乏」と呼びます。意味はよく分かりませんが、とにかくのんびりできないヤツということなんでしょう。

ということで今日は携帯音楽プレーヤーの話でもしようか!すなわちDAP(デジタルオーディオプレーヤー)、俗にMP3プレーヤーというヤツについてである。なおかつ、私のウェブログは偉そうに人様へ教えを垂れることを是としているので、「ロック・ファンが初めて使うMP3プレーヤー」とでも銘打とうかと思う(便宜上正確にはMP3形式でないものも全部まとめてそう呼びます)。
いまどきの若者ならばそんなもん全て常識的に知っていることだろう。物心ついた時にはソレが当然のように存在していたんだから。だが我々の世代以上だと、興味はあってもわけワカメな方も多いことであろう。そんな方にとってデビューの一助になれば幸いである。
1点だけ最初にお断りしたいのは、私は映像に全く興味がないため、最近のMP3プレーヤーの多くが搭載している動画再生機能とかは一切無視しています。その点はご了承ください。

※ ※ ※

サテ私が初めてMP3プレーヤーと出会ったのは、遅ればせながら2006年のことである。
それまで私にとって携帯音楽プレーヤーといえばCDプレーヤーとMDプレーヤーであった。2006年当時の私はアル中状態で日常的に泥酔していたため、それらをいずれもカバンごと盗まれてしまった。CDプレーヤーを失って何か新しいものをと思っていた矢先、たまたま購入したウィルコムのケータイがミュージックプレーヤーとしての機能を備えていたことが、MP3プレーヤーとの出会いだった。しかしこのケータイの音楽再生は所詮はオマケ機能のクソであった。とにかく音量が小さくて外じゃ全然聴けやしなかったし、リッピング(CDの読み込み)ソフトも不便だし、音質・使い勝手ともに最悪だった。

一方で、PCからCDを取り込みプレーヤーへ転送するだけという「メディア準備と持ち歩きの手間が無いこと」には多いなる感銘を受けた。

そう、私の世代なら誰だってウォークマン用にカセットテープを何本も用意していたはずだ。ハイポジとかメタルテープとか、超懐かしいよね。私も、カセットプレーヤーはAIWAのお気に入りのモデルを持っていたっけ。私が酒に溺れる前に既に現役を引退して静態保存されていた関係上、今でも大切に持っているよ。
ちなみに現在のMP3プレーヤーが普及する1世代前に「MP3対応CDプレーヤー」とか「MDLP」の時代があったはずなのだが、これらは私は体験していない。おそらく普及する間もなくあっという間に過ぎ去ってしまったムーヴメントであったのではなかろうか…。

実際のところMP3プレーヤーはメディアフリーなわけではない。プレーヤーそのものが大容量のメディアなわけだ。それでも物理的に嵩張るせいで大量のメディアを持ち歩くことはできなかった頃と比べればえらい進歩だ。

のっけから余談だらけで恐縮であったが、かくして2006年頃には「私も満を持して専用のMP3プレーヤーに乗り換えるかッ」という機運が盛り上がってきたのだ。

※ ※ ※

さて、ケータイ電話プレーヤーへ不満があったのは上述の通りだが、もうひとつ書き忘れてはならない重要な不満ポイントがあった。
それが曲間に生じる無音部分である。これは、エンコード(音楽CDから音楽データへ変換すること。同時に容量を圧縮するケースが多い)の形式にもよるそうだが、MP3形式では避けられない問題である。解決するにはプレーヤー側でこれを処理して繋がって聞こえるようにするそうだ。これをギャップレス再生という。よく覚えておいてほしい。

声を大にして言いたい。私と同じく60~70年代の洋楽ロックを愛する紳士淑女ならびに外道の皆さん!
あなたたちのCD棚の楽曲は、必ずどっかメドレーになってるでしょう?
アビーロード、太陽と戦慄、オペラ座の夜、何でも良いっす。当時コンセプトアルバムというのが流行していたこともあり、アルバムはA面B面合わせて一つの「アルバム」という作品だった場合が多い。私の好きなプログレ作品なんてよく頭からケツまで全部1曲に繋がってたりしますよ。
で。こいつらをMP3プレーヤーへぶち込むと、何と1曲1曲いちいち途切れるのが原則的な仕様なのだよぉぉ!これでソフト・マシーンのVol2を聴かされた日には、ウサギでもマジ切れするだろう。イエスソングスを聴けば、曲間で聴衆が一瞬完全に黙る寒いライヴに早変わりだ。もっと具体的に言うなら、私自身は「幻惑のブロードウェイ」をこのケータイへ転送してしまい、ケータイを真っ二つに叩き割った(実際には、「割る妄想をした」が正しい)。
だから、上で紹介した「ギャップレス再生」は、必須中の必須。もうこれが無ければMP3プレーヤーなんて要らないとまで私は断言したい。

ところが、繰り返しになるけどMP3は仕様上どうしてもギャップが生じる。だから、いま現在でもギャップレス再生に対応しているプレーヤーはむしろ少数派なのだ。パフュームしか聴かないなら何ら問題ないのだろうが、我々のようなロックファンやいかにせん?

実は繋がっている複数の曲をまとめて1曲としてエンコードしちゃうことも可能で、こうすればトラックの分断そのものがなくなるから、繋がって聴こえる。しかし当然ながら複数の曲はまとめて1曲になってしまうので、頭出しが全く出来ないのは言うまでもない。いくらオタクな私でも、初めて聴くCDをいちいち曲間のメドレー箇所を確認してからリッピングする気にはなれない。手間を惜しむならA面、B面で各1曲エンコ、あるいはアルバム1枚をまるまる1曲としてエンコという手もあるが、なおさら聴きにくいだろう。よってこのやり方は却下。
私の持論であるが、人間が道具に合わせるのはナンセンスであると思う。道具が人間に合わせてあるべきなのだ。

ということで、MP3プレーヤー入門とか言っておいて何だけど、もうこの時点でかなり選択肢は限られているんです。そろそろ市場は成熟期を迎えそうな感触であるが、現在も海外製含む数多のMP3プレーヤーメーカーが乱立している。しかしチョイスは以下の4点。これらオンリーで良いです。それ以外の機種は論外、知らん。敢えて言おうカスであると。



ギャップレス再生が可能なMP3プレーヤー
メーカー名称主要な対応コーデック
 1.ソニー ウォークマンATRAC・MP3・WMA・AAC
 2.パナソニックSDオーディオ(D-snap)AAC・MP3・WMA
 3.アップルコンピュータipodAAC・MP3・WAV
 4.ビクターアルネオMP3・WMA・AAC




上記のうち、1と2についてまず話そう。
これらはいずれも専用ソフトとして「sonic stage」「SD jukebox」とかいうのがそれぞれ用意されている。ソフトの役割は音楽ファイルの管理である。具体的には、CDから音楽を取り込んだり、ネットで買ったり、それをプレーヤーへ転送したりするわけだ。
しかしこの専用ソフトがどちらもクセモノなのだ。

MP3プレーヤーを持って町に出る前には準備が要る。私にとって「一番手間のかかる作業」は大量のCDをPCへリッピングすること。そして「一番気を使う作業」は楽曲を購入すること。ひとたび専用ソフトを使ってこれらの作業を行うと、それ以降はかなりそのソフトウェアに縛られることになる。というのも、原則これらのソフトは他メーカーの機種を排除しようとしてくるからだ。

パナソニックのSD-jukeboxは、他のプレーヤーには全く使えず、著作権保護だか何だかで完全に暗号化したデータSAACなる形式でリッピングしてしまうので、取り込んだCDのデータは終生パナソニックでしか使えず汎用性ゼロとなる。
ソニーはATRAC形式を推進して独自の路線を歩んでいる。なお私が最初に使った携帯電話のプレーヤーもATRACだったっけ。つぶしが効かないのはパナソニックとまったく同様。
ただし、どちらもミュージックプレイヤー機能を持つ携帯電話向けの音楽管理ソフトとしての役割を持っているため、それなりに基盤を持っている。

一方これらのソフトは、他のコーデックでのリッピングも出来るし、別のソフト等でリッピング→変換済の他コーデックの読み取りやインポートも可能である。だからソフトウェアによる縛りは一見何も無いように見える。「単なる転送専用ソフトと割り切れば良いじゃない?」と思うだろう。

しかしここで大きな問題がある。というのも、上記ソニーとパナソニックでは、私たちが一番大事にしたい「ギャップレス再生」は、原則として付属の専用ソフトを使って、メーカーイチオシのコーデックへ直接CDからリッピングした時以外は、対応不可なのだ。
むろん全て試したワケではないし機種にもよるかも分からないが、私の使ってるパナソニックのD-snapは専用ソフトで直接CDからリッピングしたものしかギャップレスさせない。WMAとかでリッピングしたアルバムを後からSD-jukeboxを使って変換・転送すると、見事に曲間が途切れるのだ。何を隠そう現在私が使ってるモデルがパナソニックだ。
ソニーでもこの点は同様と聞いている。

ただし、MP3形式の場合、エンコードの形式次第によっては、パナソニックもソニーでもMP3のギャップレス再生が可能という未確認情報もある。lameという著名なMP3エンコーダーを使い特定の方法でエンコするのが条件となるらしいが、ギャップレス再生機能自体は機種依存のはずだし、現時点では未確認の情報なので何とも言えない。
唯一言えるのは、私が使用しているパナソニックD-snapのSD-370Vというモデルでは、何をどうあがいてもSD-jukeboxなるクソソフトを用いて直接CDをリッピングしなければギャップレスの恩恵は受けられないということだ。
しかし私が発見した情報によれば、違う機種では出来るとも書かれていた。
少なくとも自分の機種では出来ないことを確認するため、延べ50時間は費やしたであろう。

要するにこれらのソフトどもは、自社のシェア獲得のことしか考えていない。これは特定のエンコード形式によって独占的囲い込みを行おうという企業側の方針であって、ユーザーが何をほざいても止むを得ないことだ。企業側は極力自前のフォーマットで音楽を管理するようユーザーに圧力をかけることとなる。
しかし両社ともその戦いに疲弊しきっており、遠からずMP3プレーヤー市場から撤退あるいは自社推進規格の放棄を行うのではないか、というのが私の想像だ。

実はパナソニックはすでにSDオーディオという方式から事実上撤退すると囁かれている。現行のカタログモデルはいずれも品薄マークが付記されており、ニューモデルの発表も今のところない。またSAACコーデックによる音楽配信についても、去年突然廃止された。ソニーは上で書いた通り海外向け製品でATRACコーデックを放棄している。詳しく知らないけどオリコンが1年くらいでATRAC配信を止めたと聞いていることもあって、ソニーも似たような未来ではないだろうか。今後の国内におけるATRAC普及は難しいだろう。それでもウォークマンのシェアは国内で市場2位ということ、携帯キャリアへの普及もあって、今後も当面ATRAC時代による「暗黒支配」は続くかと思われる。

ということで、1と2は辞めた方が無難というのが私の見解だ。確かにギャップレス再生できるよ。しかし怨霊のようなクソソフトに縛られることになるのだ。VHS対βといい、ブルーレイとナンタラといい、メーカーとはそういうことをするものなのです。

(続く)