出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

出版社の器だけ残る

2005年03月06日 | 出版取次口座の取得
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

書店向けにFAXは送ったが、聞いたこともない資格の対策本なんで、どうも積極的に売り込む気持ちが湧かない。しばらくは、他の仕事の合間に納品や返本消しゴム作戦をのんびり片付けていた。

が!
出版の話を持ってきた例の知人が、普段と違う顔つきでうちの事務所までやって来た。なんと、倒産するはずだった出版社が息を吹き返したのでやっぱりそっちで本を出すと言う。

「それは困るよ、あの出版計画どうしてくれるんだ」と言っても、もう決ったとか何とか。

「うちも困るから、たくさんセミナーやってるんだったら資格2つくらい、うちから出してよ」と言っても、それはできないとか何とか。

どうやら、ただ息を吹き返したんじゃなくて、裏で知人と何らかの駆け引きがあったらしい。

知人は売り込みの押しが強い人間とは知っていたが、逃げるときの押し、いや退きとでもいうんでしょうか、そいつも強かった。

後には、器だけバッチリの出版社が残された。勢いで取れてしまった取次口座。しかし、出す本がない・・・

取次口座付きの会社は高く売れると聞いたことがある。ちなみに契約では、社名や役員の変更、営業権の譲渡は速やかに報告しろとある。報告しろってことは、売っちゃいかんという意味ではないのか。

でも会社を売るのは問題外としても、営業権だって非現実的だ。売ったと報告したとたん、取次が口座閉鎖を言い出さないとも限らない。なにしろ1冊出しただけで、取次がうちを「取引先」と認識してるかは怪しい。

一瞬、お先まっ暗と思ったが、持ち前のノー天気が出てくる。いろんな本を出してみたいと、私自身つい2ヶ月前に思ってたじゃないか。金を出して本を作るのはうちなんだから、誰かに迷惑かけるわけじゃないし。

よし! やってやろうじゃん、出版社!

あの仕入部で断られてた若者や1億の某県人にはちょっと申し訳ない気もするが、これも運だよ。

そう考えたら、ちょっとワクワクしてきた。実はこれが私の長所でもあり短所でもあるのだが、もちろんそのときは、そんなこと気にしない。明日じっくり本の企画でも考えてみよう♪ これがホントの苦労の始まりでした。


書店向けFAX営業

2005年03月06日 | 宣伝
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

新聞広告は高くて、まあ雑誌など紙媒体なら大体一緒だろうから、広告はやめようと思った。

それに、突然聞いたこともない出版社のただの資格本、そんな広告を出しても、もともとニーズがある人にしかアピールできないだろうと考えた。

おバカなもんで、なんとなく「迷っている人にアピールして行動を起こしてもらう」のが、広告だと思ってた。

本当は、潜在読者にきちっと本の存在を伝えることがとても重要だ。知らなければ買えないから。けれども、当時は「新刊本の多さの影響」をまじめに理解してなかった。

ただその頃の勉強で、知ってたことがひとつある。自分が本屋に行く場合、目当ての1冊を探しに行くとき以外、ほしいジャンルの棚にある本の中からよさそうなのを選ぶ。けれど、初回配本数(委託)が1000冊とすると、とても全国の書店(約2万店?)には行き渡らない。書店にないものは、だから買ってもらえない。

しょうがない、書店に置いてもらうように営業をしよう。手っ取り早いのはFAXだ。ちなみにうちはIT関連の事業もしてて、コンピュータやネットに疎くはないんだが、書店員が仕事中に見てるのはパソコンじゃなくてPOSだろうと思って、メールはやめた。

出版の話を持ってきた例の知人に「書店データ持ってるか」ときくと、やっぱりあるという。このおっさんは、なにしろ営業関係は強い。おまけにバイトを使って、すでに同報FAXできるように番号打ち込みしてあるという。ホントは「あんたが作れって言った本だろ」と思ったが通信費はこっちで負担して、一斉に送ってもらうことにした。

で、本屋向けの「新刊案内」なるチラシを作る。ごちゃごちゃ書いてあるより「タイトル、出版社、著者名、値段」をスパッと明確にした方がいいとどこかで読んだので、そうする。

が、これは有名な出版社、有名な著者に限った話だと知るのは、これまた後の話だ。

なんかこう書いてると、私ってバカですね。出版というと、どうも「知らない世界」が先行してまったく頭が働いてない気もします。

FAXを頼む関係で例の知人の事務所でチラシを作っていたら、横から覗いて、ごちゃごちゃ言ってくる。イラストを描いてアーティストの気分を満喫した後なので、レイアウトについての彼のコメントはちょっとむかつくが、言ってることは正しいので従う。

曰く、
「注文を書き込むところは、短冊(本の注文書)と同じスタイルにしろ」
「取次はどこを使ってるか、ちゃんと書いとけ」

取次を書いておかないと、ただでさえ「どこの馬の骨」なのにどこかの個人の自費出版と間違えられてしまう。別に自費出版がダメってことではない。まとめて返本できないとか支払とか契約とか面倒くさくなくて、普通の版元ですと、言いたいだけ。自費出版については、また後日。