出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

出版企画をひねり出す

2005年03月07日 | 発売前
<メルマガのバックナンバーです。昔の話です。>

その知人の本を出せないことになって、一瞬めげたが、好きな本を出していいとも言えるので、あっという間に立ち直った。立ち直ったが、考えたらやっぱりそんなに簡単じゃない。

ちなみに取引申込で年間10冊くらい出すと言ったが、実際の契約では「6冊は出しなさいね、じゃないと代金払わんよ」と書いてある。

後になってわかったけど、この契約はいいかげん。実際は冊数ではなくて、売掛金だけがモノをう。売掛残高があるうちは、出さなくても大丈夫。出さなくても…というのは、ずいぶん後ろ向きな姿勢だが出すには金がいるので、うちは無理しない。

よく「売掛金の回収のために新刊を出して、自転車操業に陥る出版社」と言われる。けど、そういう業界知識を慌てて詰め込んだ私としては、現実の経営状況を把握する前に「次々出したらいかん!」というのが頭にこびりついている(笑)

とりあえず自分ひとりでじっくり作ってみて、何ヶ月かかるかやってみようと思った。3、4ヶ月くらいだろうと踏んだ。勝手に。たぶん年に3冊出せば文句言わんだろう。

皆さんは、「編集とか雇えばいいだろ」と思われるでしょうけど、ひとつ問題があった。取引開始の条件として1500万円の資金を作れとトーハンに言われてたが、本当は作ってなかったのだ。帳簿操作だけ。後は様子見と思ってた。何にも知らない業界に、大金つぎ込むか、普通?

1冊目の資格本くらいの予算なら、あと何回かいけそうだ。しかし、ということは、何回か出して生き残るためには印刷代以外に予算はかけられない。ということは、やっぱり私がひとりでやらないとダメだ。

けれども、本当の問題は予算じゃなかった。(この頃は)

例の知人が「いち抜けた」した後、出版企画というものを考えてはみました、本当は。

けれど!

芸能系にコネがあったが、アホタレントの本なんて嫌だ。文芸は、手を出さない方がいいらしい。個人的に「幸せになる」系の本は、好かん。経済系はいいんだけど、範囲が広すぎて悩む。ダイエット本は売れるらしいが、軽薄な気がする。

自分の会社の金だから、やりたいことができるのだが、あまりにもチョイスが多すぎて、これ!というのが思い浮かばない。お腹いっぱいのときに、「何でも好きなもの食べて」とずら~っと食べ物を並べられたような感じ。

後になって気がついたのだが、企画、企画といってもまっさらな状況から生まれるわけではない。前に出した本とか、誰かが会いに来るとか何かきっかけがあって「あ、これ面白いかな?」と思い、いろいろ調べてみて「イケルかも」となる。

私は「応用は得意だけど、ゼロから作れない」タイプではない。自分で言うのは恥ずかしいが、クリエイティブなほう。なのにというべきか、だからというべきか、企画で行き詰ってしまったのだ。

これまでの本との関わりは、あくまでも「読者」。突然作れと言われて(言われてないけど)困ってしまった。

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