出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

「返本の中に献本が…」の事後報告

2005年11月16日 | 出版の雑談
(初めて読まれる方、ひとつ前の記事を先に読まれるとわかりやすいかと思います)

1週間たって、また日販の返本おじさんがやってきた。

受品口ではトーハンのお兄さんのほうが優しげだが、返本おじさんは日販のほうがニコニコしている。(たまたまうちのルートのおじさんがそうなのかもしれないので、あまり意味はない)

とにかくそのニコニコ返本おじさんは、「途中でチェックしたんですけど、(ハンコ本)ないですよ~」と、にこやかに束をひとつ置いていった。

うちへの買掛金残高を減らす努力は、やめたらしい。こういう言い方はイヤラシイが、うんともすんとも言ってこないので、「謝る意思もない」と判断させていただく。

実は、「今までの献本も返してきてたんだろう! それぞれの既刊本につき4冊分の金額をただちに払え!」と脅そうと思っていた(いや、きっと事実だから脅すってのは変ですが、殴りこむとか)が、ニコニコおじさんの笑顔に免じて、許す。

許すが、今後の何かの交渉のときのために、うちのカードとして取っておく。

ところで、このブログのアクセス数がたまに妙に多いときがあって、今回なんか「さすがの出版界も反応してるのか」と思ってしまった。が、ブープルでリンクを貼ってくれているのだと気づいた。

ブープルはどこかのアフィリエイトになっていて、自社の本のリンクに利用しようかと思ったがリンクの作り方が面倒なのでやめていた。でもブープログというのは、知らなかった。

で、となると、別に

「なんか日販が変なことしてるそうだよ」
「え、何々?」
「なにやら献本を返品するとか」
「そんなこと、どこで知った?」
「出版屋の仕事ってブログ」

ってな会話があったわけじゃないということもわかる。

「読んで頭に来ました」というコメントもいただけないので、もしかすると「こいつ、青いな」なんて思われてるのかもしれない。

青いのは青いんだろうが、さすがに私も「出版を始めたばかりで…」と言い訳することを躊躇するようになってきた。本の作り方も、すこ~しずつわかってきた。(わかってきたとはいえ、日々学ぶことは多いんですが)

何が言いたいかっていうと、「継続は力なり」ってことだ。

今回は例の自費出版みたいな本を除けば、前回の新刊からずいぶん日にちが経っている。今の時点で半年で、今度の新刊はあと数ヶ月先の予定。

これまでだと新刊出てから半年後なんて、トーハンの短冊棚が空っぽとか、日販からおみくじ封筒が2週間も来ないなんて状態だった。今回は、例の自費出版みたいな本を除いても、まだボチボチ来る。

刊行数が多いと食ってけるんだなぁ、楽だなぁと思う。ド素人なりに作った初期の頃の本だって注文が来るんだから、普通の出版社なんか左団扇じゃなかろうか。

もちろん倉庫代がかかってくるだろうけど、出庫とか返本受けとか改装とかなんかを頼まないで預けっぱなしにしておけば、そんなに高いものでもなかろうし。

要は、そのバランスを探し出して忠実に守っていけば、いいんじゃないか。「まるっきり売れない本」を出さない限り、今後ますます楽にはなっても、ピンチに陥るってことはなさそうな気がする。油断大敵ですか、そうですか。

いや、まあとにかく「生き残ってやる! 見てろよ、日販!」ってな気分だってことです。

13 コメント

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Unknown (Unknown)
2005-11-20 01:32:00
これは見逃せない問題発言ですね。
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Unknown (タミオ)
2005-11-20 14:08:18
そうですか?

私としてはあくまでも「あちらさんの問題行為」と思いますが。
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とても勉強になります。 (山田真哉)
2005-11-21 11:13:09
今回の件、とても勉強になりました。



『出版屋の仕事』はこういう裏事情がわかるので、とても重宝しております。

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裏情報 (タミオ)
2005-11-21 18:22:34
山田さん、恐縮です。書いてて「裏情報」だって認識はないので、それでまた「業界のジョーシキ」を学ぶって感じでしょうか。
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Unknown (あまろ~ね)
2005-11-22 09:08:27
そういえばむかし、まだ自分が営業部員だったころの話ですが、神保町のある取次さんに見本交渉時に提出した献本は、そのほとんどが普通に神保町のある大型書店さんに配本されてました。通常の取次搬入日より1日くらい早く(笑)。いろいろな意味で(良くも悪くも)おおらかな業界でしたねぇ。
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大型書店に配本 (タミオ)
2005-11-22 10:34:34
実質、売上を奪い取ってるわけですが、なにしろ「献本」だから勝手ということですかね?



(良くも悪くも)がついているとはいえ、「おおらか」ということには疑問を感じなくもないですが。



ーーーーー



そもそも取次って「一緒に売ってこうね」って存在で、私も喧嘩売ってるわけじゃないんです。ただ、ルール違反とか人道に外れることは許せないです。そういうことに対しては「おおらか」にはなれません。
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Unknown (あまろ~ね)
2005-11-22 18:05:38
「おおらか」は、たんなる皮肉ですよ。



「献本」の定義って、実はよくわからないです。出版社と問屋でどういう扱いをするのが「ルール」になってるのかも。権限のないただの社員の自分は、そういうのに関する契約書とかも読んだことありませんし。



ちなみに書店でも、一括採用のまとめ注文の際に「献本もつけてください」という発注の仕方をされるお店があります(いまはどうか知りませんが、10年少し前まで営業部にいたあいだはありました)。この場合の「献本」って、明らかに「値引きのかわりにおまけつけてよ」みたいな意味合いだと思うわけで。だって、その「献本」分を書店はお客に売っちゃってるわけで、お客からは献本分の代金ももらってるんだろうな。



スリップの報奨金制度とか、なんだかいろいろな「小金を稼ぐ手口」みたいなのがあって、書店や問屋は一生懸命、実質的に出版社からの卸値を削ろうと懸命だったよなぁ、むかしは... などと思いながら読んだのですが、いまもそんなこと、続いてるんでしょうねぇ。



一般的に妥当だと思われるルールがこの業界でもルールとして本当に成立しているかどうかをまず確認しなければならない、というケースはいっぱいありますね。



お疲れさまです。
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あまろ~ねさん (タミオ)
2005-11-22 19:29:17
>「おおらか」は、たんなる皮肉ですよ。



あはは、すみません(^^;



ちなみに採用品に献本をつけないで出したことあります。知らなかったもんで。そうですか、割引代わりですか。再販との絡みというか逃げ道ってことでしょうか。



書店や取次や、版元でさえ薄利って商売である以上、「小金を稼ぐ手段」はある程度しょうがない気もします。



でもやっぱり、献本を「返本にもぐりこませて買掛残高をごまかす」のは、ルール違反と思います。「業界」ルールとしても。。。
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Unknown (Unknown)
2006-01-14 14:05:11
たまたまこのページを見かけたので一言



見本の献本が返品になるのは当たり前のことです。

なぜなら、献本とは、取次ぎや書店に

バックマージンを提供するという

意味だからです。採用品の献本と同じ意味です。



取次ぎの肩を持つわけではないですが、

だいたい小さな出版社の本は返品が多く、

取次ぎは実売がない限り儲からないのです。

だから返品マージンを課すことで補っているのです。



献本の返品がルール違反なのではなく、

もともとそういう意味なのです。

それが嫌だとか、おかしいというのであれば、

献本にせず、見本時に請求書を提出すればいいのです。その場で受領印を押してくれますよ。

そうすれれば、返品になってもプラマイゼロです。



だからブログで騒ぎ立てる話ではないのではと。











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Unknown (。。。)
2006-01-26 22:00:43
まあ、出版業界がどうのこうのではなく、どんな問題にして、色々な角度や視野でものすごく見解というのは違ってくるでしょう。

 ただ、取り次ぎ会社は、書店と出版社の間に入り物流、集金を行う商社です。=完全なる民間企業です。要するに民間(書店)対民間(取次ぎ)対民間(版元)の経済原則として言えることは、多かれ少なかれ力関係があるということですよ。版元だって実績が出れば現実に取次ぎに対して、賞味交渉だって可能です。弱いものが問題提起をするなとか、発言するなってことではありませんよ^^誤解されないでくださいね。やっぱり、実売をあげて、返品をさげて、気持ちよく取り次ぎと色々な交渉をしたいですね。
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