出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

自分が被災したら

2011年08月16日 | 出版の雑談
こちらは、「日本でいちばん小さな出版社」のもとになったブログです。このブログの更新がほとんどない理由は、こちらのエントリをご覧下さい。

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前の記事で震災特需について書いたが、私はその「非常本」の著者の山村武彦所長からいろんなことを学んでいる。もともとこういう本を企画するくらいだから、有事にどうすべきかということにはすごく興味があって、実に多くのことを教わった。所長の守備範囲にBCPがあって、前から著書を読んで勉強したりしていた。

今回の震災の後、個人的な災害対策だけでBCPという観点では何も準備していないことに気づき、いろいろ考えた。まずは興味ありそうな人とメールしたりしたが、実際の対策まで話が進まなかった。

震災の後、業界から聞こえてきたのは、ほとんどが本を被災地に送るとか関連本を無料で提供するとか、そういうことであった。まずは今回の被災地を優先!というのはわかる。でも、いつまで経っても、自分たちが被災したらどうするかという話が出てこない。最近の「被災した本を返品入帳するか」という話題から発展していくかと思ったんだが、それもなかった。

本当は、取次に行って「東京で大地震があったらどうなるか、どうするか」聞いてみようと思ったんだが、「どうなるんですかね~」とか言われそうで、やめた。日頃の防災意識を活かして音頭をとろうかとも思ったが、いかんせん、うちという存在がみそっかす過ぎてアホみたいなので、そちらもやめて、てめえのことだけ考えることにした。

結論から言うと、東京が被災したら、BCPのことは忘れて、東京が復興するまで商売抜きで生き残れるよう、別のところで準備しておくのがいちばんよかろうということになった。現金を貯めておくとか、つまんないからと言って整理ばっかりしないで別の商売も続けておくとか。。。どこか気候のいいところが受け入れてくれるなら、とっとと移住しちゃうという線もある。いくら本好き、本作り好きとはいえ、私は被災してまで本を売りたい熱血出版人ではない。

それはともかく、出版業で、東京で、BCPってのは思っていたより難しい問題だ。

最初は、震災特需のときのように出荷できるように在庫を…みたいなことを考えたんだが、こないだの東北でアレだから、取次は壊滅であろう。うちの在庫がOKでも、同様に被災している都内の書店に納品したって意味がないであろう…っちゅうか、納品できないであろう。

地方の不安がってくれる人に本を届け、帰りは支援物資を運んだらええんちゃうか?とか考えたが、それは火事場泥棒とまで行かなくとも有事好きの想像であって、今回のように「みんなボランティアでいいことする」となってしまうと、戦後のゴタゴタを利用して大儲け!みたいなことは望めない。そもそも戦後に本が売れたのは、長い間の「食うにも苦労する我慢の生活」があったためで、いま地震が起きたら、普段売れるもんも売れなくなるだけだ。

今回の「被災本の入帳」で身に沁みたんだが、うちレベルだと、本は東京で売れている。関西大震災があっても、今回に毛が生えた程度ではなかろうか。他社よりは多いと思っている直販が問題だが、東京で大地震が起こったら、おそらく遠慮して注文も来ないであろう。

在庫はともかく入稿データは…と思ったが、もともと海外のサーバーを使っていて、こちらは何の問題もないのであった。

もしかすると大手は、うちなんかが想像できないようなBCPを策定したのかもしれないが、小出版社であれこれ検討すると、こういう結論になる。

BCPから離れた「社員の安全確認」とか「社内の備蓄」とかいうことであれば、いろいろ準備しておくべきことはある。うちはもともとOKなんだが、みなさん準備したほうがいいですよ。こないだの震災では帰宅難民が溢れたが、東京の地震で道路も壊滅!ってなことになったら、やわな出版人なんかホントに困っちゃうんでねえの?

出版社の9割は東京にあると、どこかで読んだ記憶がある。関東で大規模な震災が起きたら、もう出版業界は諦めるしかないであろう。総売上2兆がどうのこうの…と言ってて、その年だけドーン!と落ち込んで、でもいつかは復興するであろう。でも、所詮2兆円業界なんだから、誰も気にしないであろう。

でも、生き残らなあかんのですよ。

(おそらく私がどっかへ移住した後、志の高い出版社が東京大震災に関するいい本をいっぱい出すのであろう)

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