出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

本の値段の話

2005年04月13日 | 出版の雑談
私の別のブログから適当にたどっていったら、あちこちで本の値段の話で盛り上がっていた。読者の好み、原価のこと、ネットや携帯との絡み…などなど、いろんな考えがある。

ちなみに私の場合、「最悪のケース=あの遠い日販に1冊だけ注文納品しに行くこと」なので、自分の時給(東京都の最低賃金の目安として)が出る定価1600円がひとつの目安になっている。

こんなことを言うと、読者からは総スカンを食らいそうだが、しょうがない。でも、私みたいな調子でひとりでやってると、製造原価どころか人件費も知れたもんだから、いろんなことに金をかけてる大手版元の本より「上乗せ」は少ないと自負している。

ところで「読者から総スカンを食らいそう」なのは、内容云々の話を優先するほうがウケがいいからだ。

ネットや携帯は、紙の話をすれば同列から外れるけど、書籍どうしの読み応え比べだけはどうにもならない。

個人的には、高かろうが安かろうが、まったく構わない。これはひとり出版社としても、一読者としても、意見は変わらない。ついでに暴言を吐かせてもらうと、出版界の衰退なんてのも、マクロ経済レベルでは興味がない(自分が読みたい本が本屋にあればそれでいい)し、向こうだって私のことなんざ気にしちゃいない。

ある編集者さんのブログに「その値段を高いと感じさせない本を作るか」とあった。基本的には、私も常に心に留めてることだし、「値段を下げる」ことよりも個人としての出版人間には取り組みやすい。

でも例えば私はアストンマーチンが好きだが、車なんて何千万もするのは絶対おかしい。でも好きだ。おねえさんたちが好きなブランドも、同じことが言える。

その値段を高いと感じるかどうか自体、個人で違っちゃうんだから、ゴールの見えない話ではあります。値段なんかと関係なしに、とにかく頑張ればいいんじゃないでしょうか。

で、本日は部決の前の「お伺い」に行くつもり。

自分のミスによる無駄な印刷代を避けるためという情けない目的のためだが、相手(取次)はそんなこと知らないので、例によって「値段がどうのこうの」とか言ってくるに違いない。

実際、「100円違ったら買うか買わないか悩む人」というのは、読者人口のうちどのくらいいるんだろう? 仮に2割として、3千部刷る(3千人の購読者を想定する)と、つけた値段で売れるかどうか左右されるのは600冊だ。直販だと流通コストがかからないから、5%の150冊を直に売れば、問題は解決する。

仮の話ばっかりで、意味のない試算ですが。

要は、あまり値段で悩みたくない。

仕入部のお兄さんが難しいことを言っても、適当に聞き流そう。装丁に関するコメントだったら、喜んで(カバーのDTPは趣味みたいなもんだから)やるし、自分で作った本の内容についてのコメントだったら、聞かせてくれるだけで嬉しい。

まあ、印刷見積りをとるための配本数の確認はできるだろう。

4 コメント

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Unknown (あまろ~ね)
2005-04-13 11:57:49
なんか、盛り上がってますね、この話題(笑)。「ある編集者」さんとこのBlogで振られちゃってるので、自分もなにか書かなくちゃとは思ってるのですが、いまは忙しくて困ったな。



というわけで、とりあえず簡単なコメントだけ。



問題は、本単体の「絶対値」としての高さでも、他の商品等と比較しての「相対値」としての高さでもなく、セールス系のコンサルタントさんとかがいうところの「値ごろ感」「安さ感」といったものが本には足りないように思われる、というところにあるんじゃないかなぁと。



すみません。いまはこのくらいで。それでは。
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値ごろ感 (タミオ)
2005-04-14 09:54:46
私個人の好みで言えば、ずっしりと分量的にも内容的にも読み応えのある本に、「値ごろ感」を感じます。ページが少なかったり、図ばっかりだったり、行がえが多くてスカスカだと、ちょっと。



でも不思議ですけど、通常の読者の好みはまったく逆だと、どこかで読んだ。手軽にさらっと読める本がウケる…と。



一般的な読者の場合、値ごろ感というのは全然別の基準で決められるんでしょうか?
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Unknown (あまろ~ね)
2005-04-14 13:53:24
昨日の自分のとこの記事でも書こうと思ってて忘れたんですが、たぶん、「読者」っていう言い方があまりに曖昧なんだと思います。「読者」にもいろいろな人がいるわけで、そのなかのどういった読者をその議論における「読者」とするかという定義づけをしないままにいろいろ考察しても、あんまり意味がないかなと。たとえば「通常の読者」っていうのは、どういうジャンルの本を、どのくらいの頻度で読む人のことをいっているのか、年齢層や性別やふだんの生活環境はどういう人を想定しての「通常の読者」か、という定義づけをしないと、ね。



あぁ、仕事に戻らなければ。
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私も仕事しないと・・・ (タミオ)
2005-04-15 15:33:33
通常の読者っていうのは、テキトーな言葉でしたね。実際うちなんか、配本数も少ないし直販が多いので、書店にはどういう購読者(あるいは見るだけ)がいるのか以前の問題だという気がします。
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