出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

出版は水物…でいいと思ってるでしょ。

2005年04月05日 | 出版の雑談
出版業界では「人脈がモノをいう」とか「顔を売っとくのが大切」とか言われている。言われているって、私はどうせ蚊帳の外だが、いろんな本にそう書いてある。大きな仕事をしたいのならそうなんだろうな、と思っていた。人脈があればチャンスも広がるだろう。

実際のところ、うち規模だとちょっと話が違う。チャンスというより、マイナス部分を補うために必要と感じることが多い。ちょっと前に書いた「書店営業」とか「出版の経理」とか、あんな当たり前の業務。知ってる人間がいたら、どんなに楽だったか。

で、自分の売込みとかがめちゃくちゃ苦手な私だったが、それでも会ってくれる人がちょろちょろ出てきた。だんだん「ギョーカイの人々」の名刺も増えてきた。ありがたいことだ。

私の自己分析では、出版界について「本」で勉強したのが、ちょいといかんかったと思ってる。

本は情報を得るにはいいけど、他人行儀だ。不特定多数の人に向けて書かれてる(当たり前)。大きな教室で講義を受けてて、ひとりでノートをとっているような気分だ。「ああ、人脈ね。フンフン。んなこと言ったって誰も知らないし~」とか考えてしまう。

他にも、業界人のインタビューとか対話とかの本で、お互い知ってる人について盛り上がってたりすると、「ケッ、マスターベーションかい」と、ひねくれてしまう。

実は愉快な人が多いということが、最近ようやくわかってきた。本を経由しないで、個人的に知り合えると、全然イメージが違う。そういえば、仕事をお願いすることになったライターもそうだった。私が考えていたような「ギョーカイ人丸出しの軽いヤツ」ではなかった。

で、昨日、業界人3人と飲んだのだ。(ホラ、文章にすると自分が書いたものでさえ、ギョーカイっぽくて排他的じゃないか。実際は、ある人が誰それと一緒に飲むときに呼んでもらったと書くのが正しい)

私が「知らないと知ってて無視している」取次と書店の関係とか、大手書店の事情とか、それぞれの担当者の話とかが、身近な話題としてボンボン出てきて圧倒されてしまった。同じ内容の情報を本で得ると、これまでみたいに「知らんわ、そんなもん」と思ってしまうのだが、知り合いになれた人の口から直接聞くと、「ほお~うっ、へえ~っ」て感じで素直に聞くことができる。皆さんいい人だ。これからいろいろお世話になる。

が、(ここからが本題)

少々「違う人種」と思わなくもない。私が特に圧倒されてしまったのは、「出版の会計は税務署でもわかんないから、やりたい放題」とか、「新刊を入れたことにしてどうのこうの(書いていいのかわからんからご想像に任せます)」とかの話。

始めの頃は、そんなこと知らずに細々とやってる自分を極小出版社の甲斐性なしと思っていたが、昨日話を聞いてて気がついた。

出版業界の人、倒産慣れしてませんか?

悪いが、うちは当座預金口座さえ、ない。取次からの支払いも目いっぱい保留にされてるから、忘れた頃に入ってくる。いや、忘れてはいないんだけど、当てにするには先の話すぎるので、自転車操業にもならない。そうじゃなくても、払えないものは注文しない。印刷は金ができてから発注する。

どなたかのブログかコメントに「当座の資金を作るために新刊を出す」と書いてあったが、そんなの完璧におかしい。いや、業界の人が自虐的に「おかしいよね~、出版業界はどうなんのかね~」と言ってるのとは、ちとニュアンスが違う。

実際、計画通りに資金の回転ができていれば問題ない。でなくて、事業計画なんて言葉は聞いたことがないんじゃないかと思うような山師になるのは、いかがなもんか、企業のトップが!

ちなみに私はギャンブル好きだし、小豆だろうがポンドだろうが相場を張るのも好きだ。別に、カタイ人間じゃない。

けど、違うよ~。言葉の商売だから、数字に弱いんだろうか? いったい、この「違う人種」感は、なんなんだ?

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