女性の「隠れ差別」禁止 改正均等法 来月施行
性別とは無関係に見えながら、女性が満たしにくい要件を課すことで実質的に女性を排除する「間接差別」を禁じた改正男女雇用機会均等法が4月1日施行される。
この件に関して、ずいぶん前に労働政策審議会の最終報告書が出され、昨年の国会で改正雇用機会均等法が成立(それまでは、総合職や営業職の募集を男性に限るなどのあからさまな性差別だけとなっている)。
ちなみに、障害者権利条約の審議では、「直接差別」「間接差別」の規定があったが、日本代表は、「すべての差別」という表現にすることを要請し、「間接差別」の用語が削除されたという経緯がある。
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京都新聞 2005年12月29日 社説 雇用均等法-間接差別の全面禁止を
男女雇用均等法の改正が日程にのぼってきた。労働政策審議会の最終報告書を受け、来年の通常国会に改正案が提出される運びだ。
報告書は間接差別の禁止を初めて盛り込んだほか、妊娠、出産時の不利益な扱いの禁止、セクハラ対策など、差別禁止の一段の強化を目指している。
ただ、報告書が示した間接差別の扱い方には懸念も残る。十分に煮詰め、よりよい法案にしてほしい。
法制定から20年、前回改正からも10年近いが、女性の就労実態や処遇の改善はあまり進んでいない。
厚労省の調査では、民間企業での女性管理職の登用(課長相当)は1990年の2・0%が、2004年5・0%になったにすぎない。
その一方、企業のリストラや人件費削減のあおりで女性の非正社員化が進み、04年には女性労働者の51・6%がパートや派遣などの非正社員になった。給与水準をみれば女性パートは男性一般労働者の45・2%にとどまる。不当な解雇や不利益扱い、セクハラも後を絶たない。
報告書はこうした現実を踏まえ、性差別をなくし、母性を尊重しつつ持てる力を十分に発揮できる雇用環境の整備が重要課題と位置づけた。少子高齢、人口減少時代を迎え、女性が安心して子供を産み、育てながら働き続けられる環境づくりが急務であるのは、言うまでもない。
最大のポイントは間接差別の禁止だ。間接差別とは外見上、性別による差がないようでも、実際には一方の性だけが合理的な理由がないのに不利益を受けるような基準や規定、慣行を設けているケースを指す。
欧州連合(EU)や米国などは禁じているが、日本ではこれまで使用者側の反発で規制を見送ってきた。今回、取り上げた背景には、前回改正時の国会付帯決議や、03年に政府が国連の女性差別撤廃委員会から勧告を受けた事情もある。
ただし、報告書が示した内容は決して十分ではない。使用者側の激しい抵抗を受けた末、禁止すべき間接差別を(1)採用で身長、体重、体力を要件とすること(2)総合職の採用で全国転勤を要件とすること(3)昇進の際に転勤経験を要件とすること-の3ケースに限定したからだ。
確かに3ケースは女性を排除する典型的な間接差別ではある。だが限定すれば、これ以外は「間接差別ではない」との勝手な解釈を招き、悪質・巧妙な間接差別に免罪符を与えることになりかねない。
ここは間接差別の全面禁止を基本原則に明文化し、3ケースは例示にとどめるべきではないか。
すばらしい能力を発揮する女性が各界で目立つのは喜ばしいが、一方でキャリア以外の女性を「安くて使い勝手がよい労働力」視する企業や経営者もいまだに少なくない。そんな経営者の意識改革を促すためには罰則も検討されてよかろう。