原題:『社長行状記』
監督:松林宗恵
脚本:笠原良三
撮影:鈴木斌
出演:森繁久彌/加東大介/小林桂樹/三木のり平/フランキー堺/久慈あさみ/司葉子/池内淳子
1966年/日本
ギャグなのか正確な描写なのかあやふやな風俗の古さについて
昔の作品を観る意義の一つに、当時の風俗を垣間見ることができるということはあるが、コメディー作品となるとその描写をどこまで信用していいのか分からなくなる時がある。例えば、「睡眠薬なら『トンコロリ』。私でも眠れます」という太平製薬のテレビCMが流れるのだが、当時は睡眠薬のCMがあったのか、それともギャグなのかよく分からない。あるいは「未成年者でもОK。ハトヤ独特のインスタント結婚式場」というテレビCMも真面目に捉えればいいのかどうか分からない。
主人公の既製服の大手企業「栗原サンライズ」の社長の栗原弥一郎と、フランスのブランド「チオール」の仲介をした日本支配人の安中類次を演じたフランキー堺のフランス語は意外と正確なもので(因みに『社長忍法帖』では道産子を演じていたフランキー堺は『社長千一夜』では日系ブラジル人のコーヒー王を演じているのだが、ポルトガル語はそれほど上手くはなく、しかし逆に言うならば堺はフランス語が話せたのかもしれない。)、だからラストで栗原や秘書課長の小島啓吾たちが見る三重県伊勢市二見町の二見浦の日の出が、クロード・モネが描いた『印象・日の出』を意識したように感じたのだが、こうして並べて見比べてみるとそれほど似ていなかった。