MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『泣いてたまるか ああ無名戦士!』

2015-08-18 00:20:08 | goo映画レビュー

原題:『泣いてたまるか ああ無名戦士!』
監督:高橋繁男
脚本:早坂暁
撮影:森隆吉
出演:渥美清/津坂匡章/桜井啓子/田中邦衛/戸浦六宏/名古屋章/加藤武/若宮忠三郎/橋本功
1967年/日本

 祭られない「戦死者」について

 例えば、兵士として亡くなった者ならば戦没者の墓に祭られるであろうし、傷痍軍人はそれなりの恩給がもらえるであろうが、主人公の国崎五一は子供の頃に空襲で右足を負傷しても恩給がもらえる当てがなく、電車内でアコーディオンを弾きながら立花義幸の名を騙り傷痍軍人を装い「海行かば」のような軍歌を歌い施しを得ていた。
 ある日、電車内で若い女性のひろみに痴漢行為をしたことで五一はそばにいた浪人中の平和(ひらかず)に取り押さえられ警察に引き渡される。なんとか許してもらった五一は何故か警察署の前で待っていた平和とひろみと行動を共にすることになる。
 平和とひろみは五一の貯金通帳を勝手に持ち出して85万円の大金を引き出し、早速高級車を購入すると平和が通っていた予備校の構内を乗り回してしたのであるが、校舎に激突して平和は死んでしまい、ひろみは流産してしまうのである。
 昭和42年11月、ラストにおいて五一とひろみは「無名戦士の墓」の前で亡くなった平和と流産した子供を弔う。祭られる軍人たちの陰に隠れて日の目さえ見ない、民間人の戦災の負傷者や「受験戦争」や「交通戦争(最後に廃車が曳かれていくシーンがわざわざ挿入されている)」の犠牲者、さらにはこの世に生れ出ることもできないまま亡くなる子供に焦点を当てる早坂暁の脚本が冴える。


(東京都戦没者霊苑?)

 『泣いてたまるか ああ軍歌』(今井正監督 1967年)において反体制と「弱者」の矜恃がストレートに描かれる山田太一の脚本と比較しながら観るのも良いと思うのだが、一つ不思議に感じたことは、タイトルバックを見ても分かるように本作が「特集三部作の一」として制作されており、『ああ軍歌』は「特集三部作の3」として制作されている。本作の放映日は1967年11月26日であり、『ああ軍歌』は12月10日に放送されている。そうなると「特集三部作の2」はどうなったのかと思って調べたら、「特集三部作の2」は12月3日に放映された中村賀津雄主演の『泣いてたまるか あゝお父さん』(降旗康男監督)らしい。


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