運命のボタン
2009年/アメリカ
‘出口なし’の復讐劇
総合 90点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
この作品にかんして「つまり人間は生きているだけで毎日何らかの‘運命のボタン’を押しているのだ」という陳腐なフレーズが跋扈している理由は‘The Box’というシンプルな原題を‘運命のボタン’などと仰仰しくしたためで、高尚なSF作品をただの‘道徳作品’にしてしまっている。
時代設定を1976年にした理由は前年にNASAが打ち上げたバイキング2号が火星に無事到着して火星を調査した年だからである。物語はこの地球人の無礼な調査に激怒した火星人がアーリントン・スチュワードに乗り移って、逆に地球人を‘箱’を使って‘調査’するところから始まる。‘調査’とはいっても実は火星に土足で踏み込んできたNASAの関係者に対する復讐である。アーリントン・スチュワードは事前に多くの地球人を‘乗っ取って’いるのだが、前頭葉まで支配できていないために、地球人に味方した者たちは鼻血を出してしまう。
彼らの地球人に対する復讐の仕方は地球人が誰もが持っているコンプレックスを利用して、フランスの作家サルトルの戯曲『出口なし』のプロットそのままで地球人が自ら生みだした実存主義を駆使することで少しずつ逃げ場を奪っていきながら苦しめていく。だから必然的にボタンを押すことになってしまい、地球人は自業自得で同じ醜態を繰り返すことになる。
確かにデヴィッド・リンチの作品のように分かりにくい物語であるが、この作品は火星人の地球人(=NASAの関係者たち)に対する復讐劇であり、人間のモラルを問う作品と観てしまうと全く面白くなくなってしまうことは間違いない。
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