原題:『The Old Man & the Gun』
監督:デヴィッド・ロウリー
脚本:デヴィッド・ロウリー
撮影:ジョー・アンダーソン
出演:ロバート・レッドフォード/ケイシー・アフレック/トム・ウェイツ/シシー・スペイセク
2018年/アメリカ
ベテラン強盗犯が求める「幸福」について
家庭に恵まれなかった主人公のフォレスト・タッカーは16歳の頃から窃盗と脱獄を繰り返しながら生きてきて、舞台となる1981年頃には74歳になっているのだが、相変わらず仲間たちと銀行強盗に励んでいる。もはや手慣れたもので、行員に笑顔と拳銃を見せるだけで、手持ちのカバンに現金を入れてもらえるくらいに熟練したこの強盗犯は「強盗」とも言えないくらいである。
ところで金銭面で困っているように見えないタッカーは何を求めているのだろうか? お金の問題ではなく、窃盗癖なのかもしれないが、実の娘のドロシーから絶縁されていたタッカーは恵まれなかった幼少期を取り戻すかのようにごく普通の人間関係を渇望していたのかもしれない。車のエンジントラブルで偶然知り合った61歳のジュエルと身元をはぐらかしながら付き合うようになるのは、そんな自分でも愛してくれる女性を欲していたのだろうし、自分を追いかけているジョン・ハント刑事をレストランでたまたま見かけて洗面所でわざわざ声をかける。ハントに名前を言われた時、タッカーは仕事仲間のテディやウォラーには感じない「友情」をハントに感じたのではなかっただろうか?
再びタッカーは逮捕されるのであるが、ジュエルの助言でタッカーは刑期満了で出所する。もはや盗みだけでなく服役も「慣れた」ものなのである。出所後はジュエルに世話になり、家の一室を与えてもらう。そしてある朝、眠っているジュエルをそのままにして、まるで仕事にでも行くようにタッカーは凝りもせず銀行に赴くのであるが、これこそタッカーが求めていた究極の「幸せ」だったはずなのである。
奇しくも高齢者の犯罪者を扱った映画としてクリント・イーストウッドの『運び屋』が公開されたばかりなのだが、クオリティーとしては本作の方が上のように思う。