原題:『Peterloo』
監督:マイク・リー
脚本:マイク・リー
撮影:ディック・ポープ
出演:ロリー・キニア/マキシン・ピーク/ピアース・クイグリー/フィリップ・ジャクソン/レオ・ビル
2018年/イギリス
ピータールーの虐殺の本当の「悲劇」について
作品冒頭はワーテルローの戦いで従軍していたジョン・リーズが辛うじて生き残れていたシーンで、ラストはピータールーの虐殺で犠牲になったジョンの埋葬シーンで、ジョン・リーズが狂言回しとして、異国での戦争で生き残れたにも関わらず、地元で内戦でさえないのに同国人に殺されるという皮肉が本作の全てを物語っている。
1819年8月16日にイングランドのマンチェスターのセント・ピーターズ・フィールドでは選挙法改正を求めて演説家であるヘンリー・ハントを中心に集会が開かれることになる。一方、政府側は隣接する住宅から様子を伺っていた治安判事会の議長のウィリアム・フルトンがハントたちの逮捕状を発令し、これを受けてマンチェスター派遣軍司令官のガイ・レストレンジ中佐とマンチェスター・サルフォード義勇騎兵団司令官のトーマス・トラフォード少佐が動き出すのであるが、本来、北部イングランドのイギリス軍はサー・ジョン・ビング将軍の支配下にあったものの、ビングは持ち馬の二頭が出場するヨークの競馬レースを観戦するために留守で、義勇騎兵団は兵役の経験が浅い兵士たちで構成されていたため武力で抑えることしか考えておらず、実質指導者不在の状態だった。
さらに当時のイギリスの摂政王太子ジョージ(のちのジョージ4世)は妻のキャロラインと共に「愚王」と「愚王妃」と呼ばれるコンビで、結局、まともな人格者が一人もいない加害者側が誰も罰せられることがなかったという結末に驚きを禁じ得ないのである。