MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『累-かさね-』

2018-09-22 00:41:23 | goo映画レビュー

原題:『累-かさね-』
監督:佐藤祐市
脚本:黒岩勉
撮影:谷川創平
出演:土屋太鳳/芳根京子/横山裕/筒井真理子/生田智子/村井国夫/檀れい/浅野忠信
2018年/日本

演技巧者に頼り過ぎる作品について

 口紅を使って自分の顔を変えるというこの「SF映画」は、さすがに土屋太鳳と芳根京子の2人の演技巧者によって描かれるだけあって最後まで緊張感がみなぎった素晴らしいものではあるが、長編の原作漫画をだいぶ端折ったためにただの「顔」の取り合いになってしまっている。例えば、舞台と私生活とまるで別人のように感じる淵累に関して疑問を抱いた、丹沢ニナが女優を志すきっかけとなった若手演出家の烏合零太が「彼女」の正体を探るという展開があってもよかっただろうし、その流れでラストにサロメが殺されるというもうひと展開があってもよかったように思う。そのような恋愛の要素を奪ってしまうと、『累ヶ淵』から『サロメ』へと流れるストーリーに組み込まれている悲恋の要素が活きてこないように思うのである。
 印象的なシーンをひとつ挙げるなら、淵累の顔に変わっている丹沢ニナがその傷ついた顔を隠すことなく外出している場面で、自分の顔ではないと吹っ切れていれば顔の傷は気にならない可能性が示されている。もちろん吹っ切ることが大変なのではあるのだが。


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