原題:『Call Me By Your Name』
監督:ルカ・グァダニーノ
脚本:ジェームズ・アイヴォリー
撮影:サヨムプー・ムックディープロム
出演:ティモシー・シャラメ/アーミー・ハマー/マイケル・スタールバーグ/アミラ・カサール
2017年/イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ
先進的な親を持つ子供の不幸について
夏季休暇でイタリアに滞在しているサミュエル・パールマン教授のインターンとしてアメリカ人の大学院生のオリヴァーが訪れてくる。ある日、教授が「アプリコット」という言葉の由来を説明するのであるが、オリヴァーは教授の解説を否定して正解を語る。しかしこれは教授がオリヴァーを試したのであり、オリヴァーの優秀さが証明されるのである。
やがてオリヴァーと教授の一人息子である17歳のエリオがお互いを意識し始めるのだが、エリオは自分の内から沸き起こって来る初めての感情を上手く理解できず、友人だったフランス人のマルシアと寝たりするのであるが、やはりオリヴァーのことが忘れられず、オリヴァーもエリオのことが好きだったことを知り、深い仲に陥るのである。
ところが夏季休暇が終わり、オリヴァーはアメリカに戻ってしまい、暫くしてから電話をかけてきたのであるが、それは恋人と婚約したという知らせだった。エリオはひどく落ち込むのであるが、既に2人の関係を知っていた父親に慰められていた。エリオの父親は同性愛に関して理解があったのであるが、1983年という時代背景ももちろんあるが、厳格な父親を持つオリヴァーは女性と結婚せざるを得なかったのである。逆にエリオの父親の先進性がエリオを苦しめたように見える。
確かに好みの曲などから判断すると、オリヴァーもエリオもバッハのようなクラシック音楽を愛聴してはいたが、オリヴァーはそれ以外にも例えば、ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)や、リチャード・バトラー (Richard Butler)がヴォーカルを務めるザ・サイケデリック・ファーズ(The Psychedelic Furs)のようなポップソングも好んで聴いており、曲がかかれば女性と踊ったりする。一方でエリオが聴くポップソングといえばバッハのカノンが使われているF・R・Davidの「ワーズ(Words)」くらいである。そんなエリオの「真面目さ」が彼自身を追い詰めたようも感じる。
エリオがマルシアに渡した詩集はイタリアの女性詩人のアントニア・ポッツィ(Antonia Pozzi)のものである。エリオはマルシアといつまでも友達だと約束するのであるが、ポッツィが26歳の若さで亡くなっているところが意味深である。以下、「ワーズ」の和訳。
「Words」 F.R. David 日本語訳
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
僕が君のことを愛していると君に分かってもらうために
どんな方法があるというのだろう
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
言葉とは僕にとって厄介なものだ
君を愛していると言うために
僕にはこれしかないのだから
言葉は簡単に出てこない
僕はただの音楽好きだし
メロディーは今のところ親友だと言ってもいいけれど
僕は間違った言葉を発してしまう
僕は君に僕の心をさらけ出す
それが真実だと君が信じてくれればいいけれど
だって言葉とは僕にとっては厄介なものなのだから
僕が君のことを愛していると君に分かってもらうために
どんな方法があるというのだろう
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
これは君のために僕が作ったシンプルな歌で
隠れた意味などなく
ただ僕が君を愛していると言っているだけなんだ
本当に愛していることを信じて欲しい
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
僕が君のことを愛していると君に分かってもらうために
どんな方法があるというのだろう
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
本当に難しい
言葉がなかなか出てこない
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
僕が君のことを愛していると君に分かってもらうために
どんな方法があるというのだろう
言葉とは僕にとっては厄介なものだ
言葉とは僕にとって厄介なものだ
君を愛していると言うために
僕にはこれしかないのだから
言葉は簡単に出てこない
言葉がなかなか出てこない
F.R. David - Words don't come easy - High Quality Official Music Video