千葉県四街道市・荒木紀子(主婦・67歳)
今年は何度もお花見ができた。快晴が続く日、家族の昼食を作り置き、私は一人で花見に出掛けた。住宅街を歩き、田んぼを通り、歩いて1時間を要した。広い園内には桜がいっぱい。すぐ近くの桜並木となっている大通りも通勤時間帯を過ぎ、一瞬の静けさを感じる。「いいなあ」。私は声に出して言った。10時前の公園に一人で散歩に来たのは初めてだ。
5台あるブランコの真ん中に座って、あたりを眺めた。犬の散歩の人、花見提灯(ちょうちん)の下でお兄さんが朝食(?)を食べている。朝陽(あさひ)の中にゲートボールをする人が集まっている。私は両足をそろえ、青空と桜に向かい、ブランコをこいでみた。何十年ぶりだろう。
子供のころ、友と競い空に向かってこいだ。母となり、子供の背をゆっくり押した。こんなに優しい気持ちになれるブランコ。20、21……60、61……67。私は乗っている間に数を数えだし、自分の年齢でブランコを降りた。その間、ずっと桜と青空を見ていた。
屋台のお兄さんが開店の準備を始める。保育園の子供たちも手をつなぎ通って行く。11時を過ぎ、街にも公園にも活気があふれ出す。本屋へ立ち寄り、また桜、水仙、パンジーと春の花を見ながら、別の道でわが家へと帰る。家へ着くと、夫は朝と同じ状態で読書。「ハイ、お土産!」。私は土手で取った菜の花と水仙を手渡した。
毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊
追伸
「夫は朝と同じ状態で読書。」私の場合だったら、「夫は朝と同じ状態でパソコン」だろう。なんか寂しい気がする。もっと妻との対話を心がけよう。そういえば妻が語りかけているのに、いつも生返事ばかりしていたことに気づいた私であった。

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