健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

天名精

2014年01月18日 | 健康
○天名精(てんめいせい)

 日本の全土、朝鮮半島、中国などに分布するキク科の越年草ヤブタバコ(Carpesium abrotanodes)の根や茎を用いる。根から出た葉の形が卵形でタバコの葉に似ているためヤブタバコという。ちなみにヤブタバコの果実は鶴虱といい、駆虫薬として知られている。

 全草には精油、イヌリンが含まれ、果実にはカルペシアラクトンなどが含まれる。漢方では清熱解毒・去痰の効能があり、扁桃炎や咽頭炎、気管支炎などに用いる。また歯痛のある部位に生の天名精を詰めたり、外傷や腫れ物などを煎じた液で洗う。また全草の粉末をゴマ油で練って作った軟膏を火傷の患部につける。

天麻

2014年01月17日 | 健康
○天麻(てんま)

 日本、中国、台湾などに分布するラン科の多年草オニノヤガラ(Gastrodia elata)の根茎を用いる。雑木林の中の陰湿地に生える腐生ランの一種で、塊茎でナラタケの菌糸と共生して栄養分を作るため、オニノヤガラには葉緑素はなく、茎も黄赤色で背丈1mくらいに直立している。枝や葉もなく、赤っぽい棒状の様子を鬼の用いる矢に例えて「鬼の矢柄」と呼んでいるが、同じように神農本草経にも赤箭と記載されている。

 地価には直径が10cmくらいの偏平で楕円形の塊茎ができるが、これを薬用にする。アイヌはこの塊茎を煮て食用にしたともいわれる。一般に冬と春に採集し、春の方が多く採れるが、冬に採取したもの(冬麻)の品質が優れているとされる。

 天麻は高価な生薬のためジャガイモを乾燥させた「洋天麻(貴天麻)」と称する偽品も出回っている。しかし、1980年頃からオニノヤガラの栽培品が輸入されるようになり、価格はかなり下落した。

 天麻の有効成分の詳細は不明であるが、多量の粘液質やバニリルアルコール、バニリンなどが含まれ、バニリルアルコールには胆汁分泌作用や癲癇発作抑制作用が、また天麻のエキスには鎮痛作用が報告されている。漢方では平肝・定驚・止痙・止痛の効能があり、眩暈や意識障害、痙攣、頭痛、ヒステリー、関節痛などに用いる。

天南星

2014年01月16日 | 健康
○天南星(てんなんしょう)

 サトイモ科の多年草マムシグサ(Arisaema serratum)やウラシマソウ(A.thunbergii ssp.urashima)などの同属植物の塊茎を用いる。中国産の基原植物には天南星(A.consamguineum)、ヒロハテンナンショウ(A.amurense)、マイヅルテンナンショウ(A.heterophyllum)などが挙げられている。

 これらはいずれもマムシグサに似た花が咲くが、葉の形はそれぞれ異なっている。花序は仏焰苞といわれる独特の筒状にあり、同科のカラスビシャクなどと共通している。マムシグサは日本各地、朝鮮半島、中国に分布し、偽茎の模様がマムシの文様に似ていることからその名がある。

 ウラシマソウも日本各地に分布し、その名は花序の付属体が細長く延びて垂れ下がるのを浦島太郎の釣り糸に見立てたものである。神農本草経には虎掌という名で記載しているが、これは葉の形に由来する。

 生の球茎にはコニインに類似した有毒成分が含まれ、食べると強烈な刺激がある。そのほかの成分としてトリテルペンサポニンや安息香酸なども含まれ、鎮静作用、去痰作用、抗腫瘍作用が報告されている。一般に加工していない天南星を湯液に用いるときには生姜を配合して十分に煎じることが必要である。

 修治したものには、晒した天南星に新鮮な生姜を加えて苞製した製南星、晒した天南星の粉に牛の胆汁を混ぜて製した胆南星(別名:胆星)などがある。漢方では燥湿化痰・止痙の効能があり、眩暈、麻痺、痙攣、ひきつけなどに用いる。

 天南星は半夏と同様に乾湿化痰の代表薬であるが、半夏が胃腸の湿痰を除くのに対し、天南星は経絡の風痰を治療するといわれている。この風痰とは脳卒中や癲癇の病態と考えられている。民間では生の塊茎をすりおろして酢に混ぜ、腫れ物や肩こり、乳房の腫れなどに外用する。

天竺黄

2014年01月15日 | 健康
○天竺黄(てんじくおう)

 イネ科マダケ(Phyllostachys bambusoides)や青皮竹(Bambusa texilis)、大竹節(Indosasa crassiflora)などのタケに寄生する竹黄蜂によって穴が開き、竹の節の間に溜まった塊状のものを天竺黄という。しかし、自然に産するものは少ないので、竹を人工的に過熱して出てきた液体、つまり竹瀝を凝固させ、乾燥させてできたものを用いる。軽くサクサクとした白っぽい塊で、砕けやすく断面にはつやがある。なめると舌に粘り、甘くて涼感がある。

 成分には水酸化カリウムやケイ酸などが含まれる。漢方では清熱・化痰・定驚の効能があり、熱病で意識が混濁したり、脳卒中で痰が胸に詰まって苦しいとき、癲癇や小児のひきつけなどに用いる。小児での痰熱驚風の要薬といわれ、とくに小児の熱病にみられる呼吸困難やひきつけ、夜泣きなどに用いる。

 小児のひきつけや発熱時の呼吸困難などに白僵蚕・牛黄などと配合する(小児回春丹)。日本でも脳卒中や小児のひきつけなどに用いる伝統的な練り薬、烏犀圓の中に天竺黄が配合されている。また竹瀝の代用として用いることがある。

天葵子

2014年01月14日 | 健康
○天葵子(てんきし)

 中部地方以西、朝鮮半島、中国などに分布するキンポウゲ科の多年草ヒメウズ(Semiaquilegia adoxoides)り全草を天葵といい、塊根を天葵子という。塊根が烏頭に似て小型なためヒメウズといい、その形がネズミの糞に似ているため千年老鼠屎という異名がある。田端のあぜや石垣の隙間などに生える雑草で、4~5月頃に小さな花を下向きにつける。

 根にはアルカロイド、ラクトンなどが含まれ、抗菌作用が知られている。漢方では清熱・解毒・利尿の効能があり、皮膚の化膿や腫れ物、乳腺炎、蛇による咬傷や打撲傷、膀胱炎などに内服あるいは外用として用いる。

 外用としては新鮮な天葵子の根をすりつぶした汁を用いる。近年、中国では注射液による上気道炎の治療や乳癌や肝癌、リンパ肉腫などに対する臨床研究が行われている。

テリアカ

2014年01月10日 | 健康
○テリアカ

 古代ローマ帝国で創製されたといわれる万能解毒剤のことをいう。紀元前1世紀に国会の南にあるポントス王国の国王ミトリダテス作ったとされる解毒剤ミトリダトをローマ皇帝ネロの侍医であるダモクラテスが改良し、これに、やはりネロの侍医であるアンドロマコスが毒蛇の肉を加えて完成させたと伝えられている。

 テリアカはアラビア人によって盛んに用いられ、ヨーロッパでも有名で、19世紀の終わりごろまで西洋諸国の薬局方にも収載されていた。テリアカは中国にも伝えられ、唐代に著された本草書「新修本草」(659年)の中に底野迦と記されている。この新修本草を通じて奈良時代に日本にも紹介され、医心方にも底野迦は収載されていた。ただし、実際のテリアカは16世紀の戦国時代にポルトガル人によって伝えられたと推定されている。

 テリアカの中味は毒蛇の肉以外ははっきりせず、60種以上の薬草や土、動物の糞などが混ぜられているといわれ、後世のテリアカには阿片が主薬として配合されていたと推定されている。テリアカの有効性は不明だが、毒蛇や動物による咬傷に用いられた。

 このほうヨーロッパで知られていた解毒剤として牛黄(東洋解毒石)馬糞石(西洋解毒石)があり、中世には一角(ウニコルン)なども解毒剤として用いられた。

2014年01月09日 | 健康
○鉄(てつ)

 紀元前1500年ごろからインドや黒海北岸で木炭を燃料として製鉄が始まったとされている。中国では紀元前6世紀ごろから鉄器の製造が始まった。

 製鉄の原料はおもに赤鉄鉱(Hematite)、褐鉄鉱(Limonite)、磁鉄鉱(Magnetite)であるが、天然の鉄鉱石で薬用になるものには赤鉄鉱の代赭石、褐鉄鉱の禹余粮、磁鉄鉱の磁石などがある。また緑礬や自然銅、蛇岩石なども鉄を含む鉱石である。

 精錬されたは含まれる炭素量の多いものから生鉄、鋼鉄、塾鉄に区別される。薬用にされる鉄としては、生鉄をはじめ、生鉄を赤くなるまで熱した外側が酸化したとき叩き落された鉄屑の鉄落、鋼鉄を精錬するときにできる粉末の鉄粉、鋼針の製造のときにできる屑の鍼砂、空気中に放置してできる赤褐色の錆の鉄錆、水に浸して錆が出た後にできる溶液の鉄漿などがある。

 鉄が人間の健康に役立つことは古代ギリシャ時代から知られていたが、貧血の治療に有効であるとわかったのは17世紀のことである。金属鉄は一般に吸収されないが、一部は胃酸の作用でイオン化されて吸収される。還元鉄は吸収されるが、吐き気や下痢などの胃腸障害が強い。このため増血剤として除放製鉄剤や有機酸鉄が利用されている。また、肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来するヘム鉄は、野菜や穀類に含まれる非ヘム鉄よりも数倍も吸収率が高いため、健康食品にはしばしばヘム鉄が用いられている。鉄は吸収されると造血が促進され、中枢神経の機能が改善される。

 漢方ではこれらの鉄に平肝・安神・定驚・消腫・解毒の効能があるとし、癲癇やひきつけ、興奮、発狂、不安、動悸などに用いるほか、丹毒や疔瘡などにも用いる。丹毒や疔瘡などの皮膚化膿症には内服だけでなく、外用薬としても用いる。日本では江戸時代に鉄粉を黄胖といわれる貧血の治療に応用している。

 痔の出血が続き、貧血による浮腫や動悸のみられるときには鉄粉に茵蔯蒿・荊芥・蒲黄などを配合する(茵荊湯)。貧血症による浮腫、動悸、息切れ、眩暈には当帰・茯苓などを配合する(当帰散)。一方、慢性肝炎から肝硬変、肝癌へと移行する過程に、鉄が存在すると悪化が促進されるため、体内から鉄を減らす瀉血などが薦められている。

ていれきし

2014年01月08日 | 健康
○葶藶子(ていれきし)

 日本では各地に広く分布しているアブラナ科の越年草イヌナズナ(Draba nemorosa)の種子を葶藶子という。中国産は日本にも帰化植物として普通にみられるアブラナ科のマメグンバイナズナ(Lepidium virginicum)やヒメグンバイナズナ(L.apetalum)、クジラグサ(Descurainia sophia)の種子である。

 マメグンバイナズナやヒメグンバイナズナの種子は北葶藶子(苦葶藶子)、クジラグサの種子は南葶藶子(甜葶藶子)ともいわれる。現在、日本で流通しているものは、おねもに甜葶藶子である。葶藶子の成分として強心配糖体のヘルベチコシドなどが知られている。

 漢方では逐水・止咳・消腫の効能があり、喘息や浮腫などに用いる。とくに葶藶子は「気を下し、水を行らす」作用があるといわれ、肺に滞った水分を除き、胸水や肺水腫、多量の痰などの状態を改善する。また通便作用もあるが、他の逐水薬とは異なり、激しい下痢にはならない。ただし胃に対する刺激性があるため、一般に大棗の煎液で服用する。

 心臓喘息や百日咳で咳や痰が多く、呼吸困難や浮腫のみられるときには大棗と配合する(葶藶大棗瀉肺湯)。胸水や腹水があり、呼吸困難、顔面や四肢の浮腫などのみられるときには防已・椒目・大黄と配合する(已椒藶黄丸)。

通草

2014年01月07日 | 健康
○通草(つうそう)

 中国南部の各地方に自生するウコギ科の常緑低木カミヤツデ(Terapanax papyriferum)の幹の白い髄を用いる。日本でも温暖地で観賞用に栽培されている。和名のカミヤツデは「紙八手」と書き、ヤツデによく似た茎や掌状の葉を有している。

 茎の幹を30cmほどに切り出し、幹の髄を新鮮なうちに取り出し、特殊な刃物で紙のように薄く四角くのばして日干しにする。これはチャイニーズライスペーパー(通草紙)といわれ、かつて造花の材料にも利用された。薬用にも方通草といって、このような薄片を用いることもある。

 ところで神農本草経にある通草とは木通のことで、傷寒論の当帰四逆湯に配合されている通草も一般には木通が使用されている。カミヤツデの髄にはリグニン、ペントサン、ガラクタンなどが含まれているが、薬理作用に関しては不明である。漢方では利水・通淋・通乳の効能があり、膀胱炎などの排尿異常や浮腫、母乳不足などに用いる。

陳皮

2014年01月04日 | 健康
○陳皮(ちんぴ)

 日本ではミカン科のウンシュウミカン(Citrus unshiu)の果皮を用いる。本来は新鮮なものを橘皮、その古くなったものを陳皮といっていたが、日本では区別しない。中国ではオオベニミカン(C.tangerina)やコベニミカン(C.eryhrosa)など多種の果皮が用いられる。やや未成熟なウンシュウミカンの果皮は青皮という。

 ウンシュウミカンは日本原産で、江戸時代に偶然にみつけられたものである。すなわち、この品種は南中国から九州に渡来したミカンの変種で、鹿児島県の長島が原生起源地とされている。ウンシュウとはミカンの栽培で有名な中国の浙江省温州のことであるが、この品種と温州とは直接の関係はない。

 江戸時代には紀州ミカンが全盛であったが、明治以降、九州から日本各地にウンシュウミカンの栽培が広まった。現在、愛媛・和歌山・静岡・佐賀・熊本の各県などでおもに生産されている。以前、陳皮は日本で自給可能であったが、工場で皮を向く工程が自動化されるようになって、国内で生産されなくなった。

 陳皮の陳は陳旧の意味であり、古いほうが良品とされる六陳(枳実・呉・呉茱萸・半夏・陳皮・麻黄・狼毒)のひとつである。果皮にはリモネンやテルピネンを成分とする精油、フラボノイド配糖体のヘスペリジン、ナリンギンなどが含まれ、健胃・蠕動促進作用、中枢抑制・鎮静作用、抗炎症作用などが知られている。近年、ウンシュウミカンの果皮や果肉に含まれるカロテノイドの一種、βクリプトキサンチンに抗腫瘍作用のあることが注目されている。

 漢方では理気・健脾・化痰の効能があり、消化不良による腹満感や嘔気、痰が多くて胸が苦しいときなどに用いる。ちなみに日本の七味唐辛子や中国料理の五香粉などにも配合されている。