健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

草烏頭

2013年09月11日 | 健康
○草烏頭(そううず)

 キンポウゲ科の多年草トリカブト類の母根を烏頭といい、とくにカラトリカブト(Aconitum carmichaeli)やエゾトリカブト(A.kusnezoffii)などさまざまな野生種のトリカブト類の根を総称して草烏頭という。つまり四川省などで産する栽培品種の川烏頭と区別された呼称である。

 日本では佐渡島などに産する野生種のトリカブトを草烏頭と称して扱っている。また韓国産の草烏頭はミツバトリカブトである。川烏頭と草烏頭は明代以前には烏頭と総称されており、本草綱目ではじめて区別されたといわれる。またトリカブト類が栽培されるようになったのは、宋代以降と考えられている。

 一方、中国で一般に附子といえば減毒処理されたものをいうが、これに対して烏頭はほとんど減毒処理を受けていない。このため附子より烏頭のほうが毒性が強い。しかも川烏頭と草烏頭とを比較すれば、草烏頭のほうが毒性が強い。そのほか性味や効能は川烏頭とほぼ同じである。

 1804年、華岡青洲が乳癌の手術に用いた全身麻酔薬、通仙散の中には曼荼羅華・天南星などとともに草烏頭が配合されていた。

川楝子

2013年09月10日 | 健康
○川楝子(せんれんし)

 中国の四川・河北・湖南・河南省などに分布するセンダン科の落葉高木トウセンダン(Melia toosendon)の果実を川楝子という。センダンは日本だけでなく世界各地で公園樹や街路樹として利用されているが、変種が多くて分類が困難である。

 一般に中国ではセンダンを楝樹といいい、タイワンセンダンを苦楝、トウセンダンはその主産地の四川省の名を冠して特に川楝という。しかし市場では習慣的にトウセンダン(川楝)の樹皮は苦楝皮として、一方、タイワンセンダン(苦楝)の果実は川楝子として扱われている。日本ではおもにタイワンセンダンの果実が流通している。タイワンセンダンの果実はやや小型で、毒性が強いといわれている。

 トウセンダンの果実にはトウセンダニン(メルソシン)、タンニン、リンゴ酸などが含まれ、トウセンダニンには回虫に対する殺虫効果がある。漢方では理気・止痛・駆虫の効能があり、さまざまな腹痛、例えばストレスや情緒と関係した腹痛や脇通で、張ったような重苦しい間欠的な痛みや、陰囊などの下腹部痛(仙痛)、寄生虫による腹痛に用いる。

 腰や股間に響くときには当帰・附子・茴香などと配合する(当帰四逆湯)。回虫による腹痛には烏梅・花椒などと配合する(椒梅湯)。このほか川楝子をあぶって粉にしたものを急性乳腺炎のときに服用したり、シラクモ(頭部白癬)などに外用する。

仙ぽう

2013年09月09日 | 健康
○仙芧(せんぽう)

 本州の中国地方以南、東アジア、オーストラリアなどに広く分布するキンバイザサ科の多年草キンバイザサ(Curculigo orchioides)の根茎を用いる。葉は笹に似て、花が黄色くて金梅を思わせるため金梅笹という名がある。

 一方、仙芧といのは葉がカヤ(茅)に似て、長く服用すれば体が軽くなるということより名づけられたという。バラモンの僧が唐の皇帝玄宗に仙茅を献上したことから娑羅門参という名もある。

 漢方では腎陽を温め、筋骨を壮んにする効能があり、腰痛、下肢萎弱、インポテンツ、尿失禁、耳鳴りなどに用いる。更年期障害や眩暈、高血圧、自律神経失調症に威霊仙・巴戟天などと配合する(二仙湯)。日本では一般薬のナンパオなどに配合されている。ただし毒性があり、過量に服用するのはよくないとされている。

センブリ

2013年09月07日 | 健康
○センブリ

 日本の各地や朝鮮半島などにも分布するリンドウ科の1~2年草センブリ(Swertia japonica)の全草を用いる。一般には開花期に採取する。

 センブリは日本以外にも分布するが、日本独自の民間薬である。中薬大辞典では同属植物の当薬(S.diluta)を淡味当薬の生薬名で収載しているが、中国ではほとんど用いられていない。ちなみにカシミールからブータンにかけて分布する同属植物のチレッタ草(S.chirata)をインドやチベットでは古くから健胃薬、解熱薬として用いている。日本では室町時代末期から薬草として知られ、千回振り出しても苦味があることからセンブリといわれる。

 苦味成分としてスウェルチアマリン、スエロサイド、ゲンチオピクロサイトなどの配糖体が含まれ、スウェルチアマリンには胆汁、膵液、唾液などの分泌を促進する作用がある。古くは殺虫剤として肌着の染料にして蚤や虱の虫よけや、屏風やを張る糊に混ぜて虫よけに用いられた。その後、苦味の強い胡黄連の代用として利用されていたらしい。ただし代用品になるかどうかの定説はない。

 蘭方のゲンチアナと同じ苦味健胃薬として使われ始めたのは江戸時代末で、西洋医学の影響があったとも考えられる。明治25年には竜胆の代用品として日本薬局方にも収載され、苦味健胃薬として今日でも家庭薬に配合され、胃痛、消化不良、食欲不振の治療に応用されている。

 近年ではセンブリのエタノール抽出エキス(スエルチオール)が育毛剤として注目されている(薬用紫電改)。民間療法ではセンブリの煎液を頭虱を除去するための洗髪料や結膜炎の洗浄液としても利用している。

旋覆花

2013年09月06日 | 健康
○旋覆花(せんぷくか)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草オグルマ(Inula japonica)および同属植物の頭花の部分だけを用いる。またオグルマの全草は金沸草として薬用にする。

 オグルマは野原や田畑などの湿ったところに生え、夏から秋にかけて黄色い花が咲く。花は中央の管状花の周りを整然と一列の舌状花が取り囲み、これを小さな車に見立ててオグルマという名がある。旋覆花という名も、周囲の舌状花が花序を覆うことを意味する。

 花の成分にはブリタニン、イヌリシン、クロロゲン酸などが含まれるが、詳細は不明である。漢方では去痰・止咳・止の効能があり、胸の痞塞感や咳嗽、喀痰、オクビ、嘔吐、しゃっくりなどに用いる。

 このように旋覆花には痰を除き、気を降ろす作用があり、嘔気や咆逆などの消化器症状、咳嗽、喀痰などの呼吸器症状に応用される。ただし、そのまま使用するとかえって嘔気や嘔吐を催すこともあるので蜜炙して用いたほうがよい。

 胸が痞えてオクビがでたり、嘔気や嘔吐のある場合には代赭石などと配合する(旋覆花代赭石湯)。粘稠な痰が胸に凝結して食べ物が下がらないときに附子・細辛などと配合する(旋覆花湯)。

川貝母

2013年09月05日 | 健康
○川貝母(せんばいも)

 中国では貝母を浙貝母と川貝母に区別する。浙貝母は、ユリ科のアミガサユリ(Fririllaria veticillata)の鱗茎であるが、川貝母にはアミガサユリと同属植物の巻葉貝母(F.cirrhosa、烏花貝母F.cirrosa var.ecirrhora、稜砂貝母F.delavayi)の鱗茎を用いる。

 川貝母の基原植物は一般に四川省をはじめ、雲南省、チベット自治区の高山地帯に分布している。これらの鱗茎(川貝母)はアミガサユリの鱗茎(浙貝母)よりも小さい。

 川貝母にはペイミン、ペイミニン、フリチミンといったアルカロイドが含まれ、鎮咳、去痰、排膿作用が知られている。漢方では止咳・化瘀・潤躁・散結の効能があり、咳嗽、喀痰、喀血、胸の塞がり、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、扁桃炎、乳腺炎などに用いる。

 適応は浙貝母とほぼ同じであるが、浙貝母が急性の咳嗽に適しているのに対し、やや慢性化した呼吸器感染症に用いる。一般に川貝母は虚証に、浙貝母は実証に用いる。また川貝母には潤肺作用があるので、痰が少ないとか痰に血が混じっているような肺陰虚の症状に適している。さらに去痰すると同時に痰の分泌を抑制する作用もあり、痰の多いときにも使用できる。気分が落ち込み、胸が塞がり、食欲がないときにも川貝母が適する。ただし、日本では一般に貝母といえば、浙貝母のことをいう。

センナ

2013年09月04日 | 健康
○センナ

 アフリカを原産とする常緑低木、マメ科のセンナ(Cassia acutifolia)やホソバセンナ(C.angustifolia)の小葉を用いる。中国では異国の瀉下薬という意味で番瀉葉と呼ばれている。

 センナはアレキサンドリアセンナとも呼ばれ、ナイル川流域で栽培されるもので、アレキサンドリアとはエジプトの集散地の名前である。ホソバセンナはチンネベリセンナとも呼ばれ、アフリカ東岸やアラビア、インドなどに産するもので、チンネベリはインド南部の栽培地の名前である。現在、中国の海南島や雲南省でもアレキサンドリアセンナが栽培されている。現在、日本に輸入されているのはおもにチンネベリセンナである。

 センナは最古の医学書である「エーベルス・パピルス」にアロエなどとともに収載されている下剤であり、古くからアラビア医学で使用されていた生薬である。今日でも欧米諸国で繁用され、日本には明治以降に西洋医学の薬物として導入されたものである。

 成分にはアントラキノンのレイン、アロエエモジン、ジアンスロン配糖体のセンノサイドA~Dなどが含まれる。センノサイド類は経口では強い瀉下作用があるが、静脈内投与では効果がみられない。センノサイドA・Bは腸内細菌によりレインアンスロンが生じ、これにより瀉下作用が発現する。

 センナは少量で苦味健胃薬となり、消化を促進する。適量を用いれば緩下作用を起こす。センナの成分を製剤化したものがプルゼニドである。漢方処方に配合されることは余りないが、家庭用の下剤には単独で、あるいは配合されて用いられている。センナには子宮収縮作用もあり、妊婦には用いない。ちなみにセンナ、大黄、アロエなどの生薬などのアントラキノン系下剤を連用すると大腸に色素沈着(大腸メラノーシス)が発現する。

蝉退

2013年09月03日 | 健康
○蝉退(せんたい)

 中国ではセミ科のクマゼミによく似た黒蚱(Cryptotympana atrata)の羽化後の抜け殻、日本ではアブラゼミやクマゼミの抜け殻を用いる。ただし市場品の種類は多く、黄金色で透明なものを金蝉衣、灰褐色で光沢のないものを土蝉衣という。

 成分は明らかではないが、抗痙攣鎮静作用、神経節遮断作用が報告されている。漢方では散風熱・透疹・止痒・退翳・解痙の効能があり、熱性疾患、咽頭腫脹、嗄声、発疹、掻痒症、目の翳障、ひきつけ、腫れ物などに用いる。とくに小児科領域で用いることが多い。

 麻疹の透疹を促進するために葛根・牛蒡子・薄荷などと併用する。炎症性の目の充血や角膜混濁などには菊花などと配合する。湿疹や皮膚掻痒症には荊芥・防風などと配合する(消風散)。破傷風の痙攣には天麻・全蝎・白僵蚕などと配合する(五虎追風散)。夜泣きや小児のひきつけには釣藤・薄荷などと併用する。化膿症や中耳炎には粉末にして塗布する治療方法もある。近年、中国では破傷風、慢性秦麻疹、化膿性中耳炎などに対する臨床研究が報告されている。

茜草根

2013年09月02日 | 健康
○茜草根(せんそうこん)

 日本をはじめ中国・東南アジアからヒマラヤにかけた広く分布するアカネ科の多年草アカネ(Rubia cordifolia)の根および根茎を用いる。

 根が赤いことからアカネという名があるが、アカネは古くから茜染めの染料として有名である。茜染めはあらかじめ灰汁につけて乾かした布を、根を煎じた液で数十回も浸して染めるもので、灰汁の濃さで赤から黄色になる。色素成分のアリザリンが合成されるようになってから染料としての栽培はすたれてしまった。現在、工芸染料としては専らセイヨウアカネ(R.tinctorum)が用いられ、日本のアカネは用いられていない。

 アカネの根にはオキシアントラキノン誘導体のプルプリン、ムンジスチンなどが含まれ、止血、抗菌、去痰作用などが認められている。漢方では止血・活血の効能があり、子宮出血や鼻出血、吐血、あるいは無月経や産後の悪露に用いる。生で用いると活血作用が強く、炭にしたものは止血作用が強い。

 喀血や吐血、鼻血、歯肉出血などには大薊・小薊などとともに炭にして用いる。(十灰散)。ヨーロッパでは古くから赤色染料の原料として栽培されているセイヨウアカネも黄疸、浮腫、無月経、尿路結石などの治療に用いられていた。2004年、厚生労働省はセイヨウアカネから抽出されたアカネ色素の発癌性が報告されたため、食品添加物としての使用を禁止した。