健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

紫壇

2013年03月18日 | 健康
○紫壇(したん)

 インドから東南アジア、マレー半島など熱帯から亜熱帯にかけて分布するマメ科の常緑高木シタン(Pterocarpus indicus)の心材を用いる。

 シタンの心材は黄褐色で美しく、家具や床柱、工芸品として利用されている。ただし日本で一般に紫壇と呼ばれている木材はこのシタンではなく、ビルマやインドシナに分布するツルサイカチ属Dalbergiaの心材であり、暗紫褐色から紫黒色である。このためシタンの心材は花櫚と呼ばれている。

 シタンにはプテロテカルビン、アンゴレンシンが含まれる。また同属植物のサンダルシタン(P.santalinus)には紅色色素やサンタリンなどが含まれ、紅色染料はヒンドゥー教徒の額を染めるのに用いられている。

 漢方では消腫・止血の効能があり、腫れ物や外傷による出血などに用いる。煎じて服用することもあるが、一般に紫壇の粉末を腫れ物や傷口に塗布する。口内炎や歯痛に乳香・細辛などと配合する(乳香散)。日本漢方では婦人の生理を延期させる経口薬、延経期方に続断・蒲黄などと配合されている。

紫蘇子

2013年03月15日 | 健康
○紫蘇子(しそし)

 中国原産のシソ科の一年草シソ(Perilla frutescens var.acuta)やチリメンジソの種子を用いる。シソの葉は蘇葉、茎は紫蘇梗という。日本にも古くから伝わり、各地で野生化している。

 かつて紫蘇子の油は灯火油として用いられていた同じシソ科のエゴマの代用にされていた。ちなみにエゴマは白蘇といい、現在、シソ油として市販されているものはしばしばエゴマが利用されている。

 シソの種子の主成分としてアピゲニン、ルテオリンなどのフラボノイド、ロスマリン酸などのポリフェノール、またシソ油の脂肪酸としてα-リノレン酸が多く含まれ、ヒスタミンの遊離を抑制し、花粉症などのアレルギー症状を緩和することが報告されている。

 漢方では降気・去痰・止咳・潤腸の効能があり、咳嗽や喘息、便秘などに用いる。とくに痰が多いときの咳嗽や呼吸困難、胸苦しさに効果がある。また油脂成分が多く、便秘に麻子仁・杏仁などと配合する。逆に、下痢や軟便の時には用いない。使用方法は軽く炒って砕いて用いる。

紫蘇梗

2013年03月14日 | 健康
○紫蘇梗(しそこう)

 中国原産のシソ科の一年草シソやチリメンジソの茎を用いる。シソの果実は紫蘇子、葉は蘇葉という。シソはアントシアニン系の赤い色素の有無によって赤ジソと青ジソに分けられ、薬用にはおもに赤ジソ、とくにチリメンジソが用いられる。

 シソは全草に精油を多く含むが、青ジソはおもにペリラアルデヒドを主成分とする精油を含む。かつてペリラアルデヒドから紫蘇糖(ペリラルチン)と呼ばれるショ糖の2000倍の甘さといわれる甘味料が作られた。しかし熱や唾液などで分解されやすいため、今日ではおもにタバコの味付けとして利用されている。日本では一般に茎は用いないが、中国では茎と葉を区別して用いている。

 紫蘇梗は漢方では理気・安胎の効能があり、気分の鬱した症状、胸の痞え、食物の滞り、胃腸の疼痛、胎動の不安などに用いる。とくに妊娠中の悪阻や胃腸障害、胎動の激しいときに用いる。

 蘇葉・紫蘇梗のいずれにも解表・理気・安胎の効能があるが、蘇葉が発散・解表の作用が強いのに対して、紫蘇梗は理気・安胎の作用に優れている。日本の民間では葉を採取した株を刻んで乾燥し、体を温める浴湯料として用いている。

柿霜

2013年03月13日 | 健康
○柿霜(しそう)

 干し柿の表面に生じる白粉を柿霜という。成熟したカキ(Diospyros kaki)の果実の外皮をむき、1ヶ月間、日や夜露に当てて乾燥し、さらに1ヶ月は室内でムシロの中に放置すると柿餅、つまり中国式の干し柿ができる。このとき表面に生じる白い粉を柿霜という。

 この白粉の成分はマンニトール、ブドウ糖、果糖、ショ糖などである。これを加熱して飴状にしたものを柿霜餅という。口に含むと甘くて清涼感がある。漢方では潤肺・止咳の効能があり、咽頭痛や咳嗽、口内炎の治療に用いる。トローチ剤のようにも服用できるので小児の咳嗽・去痰薬として適している。

蓍草

2013年03月12日 | 健康
○蓍草(しそう)

 日本の中部以北、北海道を始め東アジアから北米に分布するキク科のノコギリソウ(Achillea alpina)の全草を用いる。葉が深く切れ込みノコギリ状になっているためノコギリソウの名がある。

 ノコギリソウの属名、アキレア(Achillea)という名はギリシャ神話の英雄アキレスが、これで切り傷のときの止血に用いたという故事に由来している。近年、日本ではノコギリソウとして観賞用に栽培されているのはおもにセイヨウノコギリソウ(A.millefolium)で、最近ではこのセイヨウノコギリソウが野生化している。

 ノコギリソウにはイソ吉草酸、サリチル酸、タンニン、フラボノイド、ステロールが含まれ、また精油成分としてカマズレン、アキリン、シネオールなどが含まれる。漢方では活血・止痛・解毒の効能があり、打撲傷、リウマチ、腹部の腫塊などに用いる。

 ヨーロッパでは古くからセイヨウノコギリソウは解熱薬として風邪や熱病に用いられている。また生の葉を揉んで、汁を傷口につけると止血作用があり、ノーズブリード(鼻血)という別名もある。そのほか痔や無月経、リウマチの治療に、また健胃薬や止咳薬としても利用されている。

紫石英

2013年03月11日 | 健康
○紫石英(しせきえい)

 紫石英は紫水晶(アメジスト:Amethyst)のことであったが、現在ではおもに紫色の蛍石(フルオライト:Fluorite)の鉱石が用いられている。また中国南部では方解石の紫色のものを紫石英として用いている。

 蛍石はおもに熱鉱脈中に産し、加熱すると蛍光現象を示す。蛍石はハロゲン化鉱物のひとつで、主成分はフッ化カルシウム(Caf2)である。

 漢方では重鎮安神薬のひとつで、安神・定驚の効能があり、動悸、不眠、頻脈、精神不安などに用いる。また止咳・強壮の効能もあり、老人の咳嗽や不妊症、性器出血などにも用いる。熱性痙攣や癲癇、脳卒中、麻痺の治療に竜骨・牡蠣などと配合する(風引湯)。神経衰弱や精神障害に人参・茯苓などと配合する(茯苓補心湯)。

紫珠

2013年03月09日 | 健康
○紫珠(ししゅ)

 日本各地に分布しているクマツヅラ科の落葉低木ムラサキシキブ(Callicarpa japonica)やコムラサキ(C.dichotoma)の葉及び根を用いる。中国ではホウライムラサキ(C.formosana)の葉や若枝を紫珠という。

 ムラサキシキブの名は鈴なりになった紫色の小さな美しい実を紫式部に例えたもので、日本ではおもに観賞用に植えられている。中国では紫珠草ともいうが、高さ2~3mの木である。ムラサキシキブの材は硬いため、げんのうやの材料として利用されている。また南洋諸島では枝葉の汁を流して魚を捕っている。

 葉の成分にはトリメトキシテトラメトキシのフラボンやオレアノール酸が含まれ、フラボノイドには解毒作用や抗菌作用がある。漢方では止血・解毒の効能があり、外傷や手術時の出血、鼻血、血尿、血便、痔などさまざまな出血に用いる。

 近年、中国では紫珠の注射液の臨床研究が行われ、血小板増加、出血時間や凝固時間の短縮、血管収縮などの作用を報告している。また外用として粉末や煎液を創面や火傷の治療に応用している。日本の民間療法では葉の汁を寄生性皮膚病などの患部に直接塗布する。

磁石

2013年03月08日 | 健康
○磁石(じしゃく)

 世界各地に産する天然の磁鉄鉱(マグネタイト:Magnetite)である。通常、火成岩や変成岩の中に入っており、鉄の原料としても用いられる。おもに成分は四酸化三鉄(Fe3O4)であり、酸化マグネシウムや酸化アルミニウムを含むこともある。

 鉄を吸引する磁性という特徴があるが、採取後放置しておくと磁性が減退する。磁性のあるものを活磁石、磁性の失ったものを死磁石という。表面が黒色で光沢があり、磁性の強いものほど良品とされる。

 漢方では肝腎を補い、精神を安定させ、咳を止める効能があり、高血圧、不安、不眠、煩躁、咳嗽などに用いる。高血圧(肝陽上亢)に伴う眩暈、頭重感、のぼせ、動悸などには竜骨・牡蠣などと配合する。熱病による高熱、煩躁、意識混濁、痙攣などには犀角・羚羊角などと配合する(紫雪丹)。腎虚による喘息には熟地黄・五味子などと配合する。腎虚による視力の低下、不安感、動悸、不眠などには朱砂・神麹と配合する(磁朱丸)。腎虚による耳鳴には六味丸に配合する(耳鳴丸)。

柿漆

2013年03月05日 | 健康
○柿漆(ししつ)

 カキノキ科のカキ(Diospyros kaki)の渋を用いる。カキの未熟な果実(青柿)を容器に入れて搗き砕き、水を加えてときどき攪拌しながら3週間ほど放置して発酵させ、滓を除くとニカワ状の液が得られる。これを柿漆あるいは柿渋という。

 かつては傘や渋紙、渋ウチワなどの紙や絹糸、皮革などに塗布して防水、防腐などの強化に用いていた。現在ではおもに日本酒製造における清澄剤として知られている。

 柿渋にはシブオールを主成分とする多量のタンニンが含まれる。このタンニンのため柿の果肉には渋味があるが、熟していくにつれタンニン細胞が凝固、収縮して褐色斑に変化し、タンニンが不溶性となって渋味がなくなる。

 柿漆には血圧効果作用が認められ、高血圧や脳卒中の後遺症などに少量ずつ服用する。夜尿症にも有効である。そのほか扁桃炎や含嗽薬として、火傷や湿疹などでは冷湿布として用いる。また凍傷の塗布薬としても用いる。

紫根

2013年03月04日 | 健康
紫根(しこん)

 日本の各地や中国、朝鮮半島に分布しているムラサキ科の多年草ムラサキ(Lithospermum erythrorhizom)の根を用いる。中国では紫根を硬紫根と軟紫根とに区別し、ムラサキの根を硬紫根というのに対し、同じムラサキ科の新疆紫草(Arnebia euchroma)の根を軟紫根という。いずれの根も紫色で、ナフトキン誘導体のシコニン、アセチルシコニンなどの紫色色素が含まれる。

 日本でもムラサキの根は天平の頃から紫色の染色に用いられ、江戸時代には江戸紫として有名であった。今日、軟紫根は日本薬局方の適用外であるが、かなりの量が流通している。

 薬理的にはシコニン、アセチルシコニンには抗炎症、肉芽促進作用などの創傷治癒促進作用があり、紫根の抽出液には抗菌、抗浮腫作用などがある。また近年、抗腫瘍作用が注目され、絨毛上皮腫や白血病、乳癌などへの臨床応用が研究されている。

 漢方では清熱涼血・解毒・透疹の効能があり、水痘や麻疹の初期の発疹ができらないとき、紫斑、黄疸、吐血、鼻血、血尿、腫れ物などに用いる。近年では麻疹の予防や肝炎の治療に用いている。また湿疹や外陰部の炎症に外用する。

 紫根を主薬とした紫雲膏は火傷や凍瘡、痔などの外用薬として有名である。また乳腺炎や乳癌の治療には牡蠣・忍冬などと配合する(紫根牡蠣湯)。ちなみに北米インデイアンはセイヨウムラサキ(L.officinale)の全草を避妊の目的で煎じて服用している。